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04 美しき従魔


 美しき謎の魔獣。その魔力波形が最も近いのは___


ジュリオ「ドラゴンかな。」

ルド「ドラゴンか…。言われてみれば、イーグルよりもドラゴンの魔力波形に近いな。」


 イーグルとの関係性を完全否定するには時期尚早であると判断したものの、イーグルよりもドラゴンとの魔力波形に近いことは事実だった。


ルド「しかし、人間の魔力波形とはあまり似ていないな。」

ジュリオ「そこが問題なんだよね。」


 ジュリオと意図せぬ形ではあったが、従魔契約をしたということは、少なくとも(ジュリオ)の魔力波形との親和が見られるはず。そして、"自然同調"ともなれば、魔力親和率が50%を下回ることは考えられないのだ。

 であるのに、魔力親和率は29%に留まっているのが現状である。


ルド「なんにしろ、ゆっくり考えるしかなかろう。その前にお主、大切なことを忘れているのではないか?」

ジュリオ「学校への申請のことかな?もちろん考えているが、種族が分からないと申請のしようがなくてね…。偽造すると下手したら斬首刑だからね。研究が奪われてしまうそれだけは避けたい。」


 ルドは相も変わらず、研究のことしか頭のないジュリオに軽く溜息をつき、ジト目で見つめた。


ルド「そこまでいったら研究のことを考えている場合じゃないだろう。ただ、我が言おうとしたのはそっちではない。」

ジュリオ「…?何か忘れていたかな?」

ルド「名付けだ。ずっとこの子と呼ぶつもりか?種族こそ分からぬとも、名ぐらいは付けてやれ。」


 失念していたかのように、目を見開くジュリオ。


ルド「忘れていたのだな…」

ジュリオ「手順を追ってと思っていたけれど、この子を相手に正規の手順で物事が進むわけがなかったね。」


 少し恥ずかしそうに笑みを浮かべた。そして、両の手で、机上を歩き回っていたシアンブルーの羽を持つ美しい従魔を掬い上げる。


ジュリオ「名前かぁ…。君はどういう名前が気に入るのかな?」


 ジュリオが頭を傾げると、それに連鎖するかのように、その従魔も首を傾げた。


ジュリオ「…フェリス。フェリスなんでどうだろう?」


 フェリスと呼ばれると、それに自身の意を示すように、その場でクルクルと飛び始めた。そして、喜びを表現するかのように水泡がフェリスの周りを飛ぶ。


ジュリオ「ははっ、気に入ってくれたみたいだね。」

ルド「のようだな。」


 そんな会話をしながら、顔を見合せて微笑みあっているジュリオとルド。

 フェリスが、ルドの鼻頭をクチバシで、優しくツンっとつつくと、触れた場所から群青色の光と水泡が舞う。


ルド「相当の喜びようだな。」


 そして、ジュリオにも同様に、クチバシで鼻先を軽くつつく。すると、群青色の光と水泡が舞うと同時に、フェリスはあの泉の時と同じように、目を覆いたくなるほどの光に包まれた。


ジュリオ「っ、!」

ルド「…、!」


 光から解放されたフェリスは、ジュリオの両の手の上に舞い戻った。


ジュリオ「サイズが…」

ルド「デカくなったな。」


 元々、30cm程だった全長が実に2倍の60cm程に変化している。


フェリス「人間よ…」


 荘厳でありながら、透き通るようなその声にジュリオとルドは不思議と身が引き締まる思いだった。


フェリス「名前をつけるのが遅い!」

ジュリオ「…え、えっと、それは、申し訳ないことをしたと思っているよ。」

フェリス「私をいつまで待たせるのかと…。あれだけアピールしても気が付かないとは、愚鈍な奴ね…。」

ジュリオ「アピール…?」


 全く心当たりのないジュリオは、不思議そうに首を傾げた。一方で、心当たりがあったのか、ルドが口を開いた。


ルド「まさか昨夜のことか?」

ジュリオ「昨夜?何かあったの?僕は何も気が付かなかったけれど…」

ルド「寝ているお主の額の上で踊り狂っていたのだ。」

ジュリオ「何してるの…。」

フェリス「ふん!高貴な私からのアピールに気が付かないなんて、無礼にも程があるわ!」


 ジュリオの額の上に乗り、ダンスホールかのように華麗に踊り、額の上で一夜を明かしたらしいフェリス。

 合点がいったのか、ジュリオはやっと、納得したように声を漏らした。


ジュリオ「だから今朝は元気がなかったんだね。ってきり封印解除の影響かと思ったよ。」

フェリス「勘違いも甚だしいわね。」

ジュリオ「つまり、あの封印も封印解除も全てフェリスには影響を与えなかったってことになる?」

フェリス「当たり前でしょう。」

ジュリオ「そうか、封印されたものに全く影響を与えないのか。それは特殊な封印魔法だね。」

フェリス「私が封印される前はその方法が主流だったわよ。というより、それしか無かったもの。」

ジュリオ「時代の流れで変化したという文献はないし、そんな封印魔法、少なくとも僕は知らないな…。」


 ジュリオが自分の世界へ入りかけたその時、それを見越したかのようにルドが話を持ち出した。


ルド「所でフェリス、何故急に話せるようになったのだ?」


 フェリスはルドからの質問に目をぱちくりとさせた。

 どんな答えが返ってくるのかと羽ペンを持ちながら、期待に満ちた顔で今か今かと待ち構えているジュリオだが、フェリスから帰ってきた返答は想像以上に素っ気ないものだった。


フェリス「さぁね」

ジュリオ「さぁね…?」

フェリス「だって知らないもの。私は神じゃないのだから、全てを知ってる訳がないでしょう?」


 フェリスはぷりぷりと不機嫌そうに告げたかと思えば、今度は別人かのように羽をパタパタとさせ、水泡を撒き散らしながら、「そんなことより」と話を転換した。


ジュリオ「そんなこと…?」


 フェリスとジュリオの感情のすれ違いに、ルドは呆れた表情を見せる。


フェリス「そうよ、そんなこと。人間は研究が好きなのでしょう?」

ジュリオ「まぁ…それはそうだね。研究は好きだよ。研究は人間に平等に与えられた、世界の摂理を知るための術だからね。」

フェリス「そう。そんな人間だから選んだのよ。私を連れて行って、リュミナルに。」


 その言葉に目を見合わせるジュリオとルド。

 新たな歯車が動き出した音が聞こえた。


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