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第3話 ハイライト

◆◇◆


 わたしこと村山ユキナ19歳は、大学1年生の春休みを満喫している最中である。

 ちょっと退屈かもしれないが、一日の流れを紹介するので、少しお付き合い願いたい。


 8:00。パートに出る母を見送るため起床。

 寝起きが悪いため、母の「引きこもってないでちょっとは外に云々」といった小言も、半分寝ながら受け流す。


 9:30。だらだらと準備してようやく朝食。

 昨日の晩ご飯のカレーを食べながら新聞のスポーツ欄を隅々まで読み込む、というオジサン化が激しい朝のひととき。


 10:30。食器洗い後に、プロ野球情報チェック。

 球団のSNSやらファンの声やらを追っているうちにたいてい12:00を過ぎるので、昼食を調達すべく出かける支度を始める。


 13:00。行きつけのサギサワマート着。

 少し野菜不足を気にしつつも、大好物の唐揚げ弁当を買って帰宅。


 14:00。リビングで唐揚げ弁当を食べつつ、録画してある永久保存版の『リアル野球BAN』を観る。

 テレビに向かって「もう一生分の併殺打打ったんじゃない?」なんて呟いている。


 17:00。パートに出ていた母が帰宅。

 サギサワマートで品出しを担当している母には、捨ててある空容器だけで唐揚げ弁当を食べたことがバレて「太っても知らないからね」と脅される。


 18:00。晩ごはんは2日目のカレーでつくるカレーうどん。

 会社の友人と旅行中の父、高校の部活で合宿中の妹から、それぞれエンジョイしている内容のメールが届いて少し……いや、だいぶウザイ。


 19:00。カレーうどんを食べていると、気をつけていたにも関わらず服に染みが飛ぶ。

 イラッとしつつも完食、食後に入浴。


 21:00。お風呂上りはテレビでスポーツニュースのチェックが恒例行事。

 一緒にテレビを観ている母は、推し球団が全解説者から最下位予想されていて、かなりご立腹。


 23:00。就寝時間。

 まだリビングに残ってテレビを観ている母に「おやすみ」と挨拶し、自室へ撤収。

 情報過多なので何も考えず、そのままベッドへ。


 ……とまあ、これがここ一週間のわたしの日常である。

 そして、今日は3月27日……

 明日はプロ野球の開幕日だ!


 注目の一戦は、母の推し球団vs.わたしの推し投手!

 うーん、今からもう楽しみでたまらない!


 そういえば、明日はサギサワマートの『おにぎりトーナメント』が結果発表なんだよなぁ。

 まれに見る大激戦『ホタテvsシャケ』は、どっちも美味しそうだった。


 気になる、けど……

 明日は、家から一歩も出ない日なんだ。

 プレイボールまでに家事を全部終わらせる!

 開幕戦をゆっくり観るために、母と考え出した作戦だ。


 わたしの推しが先発なら、母の推し球団は1番をあの選手にしてくるはず。

 先頭打者ホームランもありうる……!


 でもなぁ……

 それでわたしの推しに負けがついたら困るなぁ。

 仕方ない、推しにはほかのとこから勝ってもらうとして、明日は「勝ち負けつかず」が理想。

 で、母の推し球団が勝つ、と……


 ほかの対戦カードはテレビ放送あったかな。

 イニング間にCMが入るなら、その間にチャンネル変えていろいろ観てみよう。

 あと、データ放送でスコアも確認して、もちろんスマホで一球速報もチェックして……


 ……なんてことを楽しく想像しているうちに、わたしはいつの間にか眠りに落ちていた。


 その日、久しぶりにまーちゃんに会ったことも、そのときに言われた言葉も、きれいさっぱり忘れていた。

 まるで、その場になければ存在すら忘れられてしまうもののように……


 例えるならそれは、土がついて交換された、ボールボーイに持っていかれたボールだった。



つづく

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