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第三話  復活のモフモフ

ぼくはアタマがぼんやりしている

ずっと寝てたんだ

いま起きたばかり


ぼくはカラダがバラバラだったよ

だけど魔導士がね

組みたててくれた



「モフモフ! うちがわかるか! モフモフ!」



ご主人がぼくを抱きしめてくれる

ずっとそばにいて

だいすきなご主人


ぼくのカラダがあたたかくなるよ

だけどエンジンに

火はいれてないぞ



◇◇◇



「記憶回路に……混乱がありますが……大丈夫です……」



魔導士がモフモフの車体についてアーカシ姫さまに説明していた。モフモフは聖騎士サイファの爆発から姫さまを守るため、我が身を犠牲にして盾となり、粉々に砕け散った。しかし運よく、あるいは極端に頑丈なのか、自動詠唱機は無事で記憶回路も作動している。


さらに運が良かったのは、先日この黒い神殿でオーバーホール(分解整備)をしていたことで、魔導士たちが車体のデーターを詳細に記録しており、自主的に複製を行っていたのだ。自動詠唱機を組み込むだけで、モフモフは復活することが出来た。


魔導士の説明は続いている。しかしアーカシ姫さまにとってそんな些細な仕様変更より、身を呈して自分を庇い、自らも愛して止まないオートバイが再び蘇ってくれたことが大事、嬉しくて仕方ないのだ。今はただモフモフを抱きしめて、冷たい車体に体温を移すことに夢中だった。



「モフモフ兄貴、お疲れさんでござんした!」

「モフモフ兄貴、お疲れさんでござんした!」

「モフモフ兄貴、お疲れさんでござんした!」

「モフモフ兄貴、お疲れさんでござんした!」



オリビアの子分たちも盗賊式カーテシ(仁義を切る)ーで挨拶をする。彼らにとってモフモフは、自分たちの先輩にあたる兄貴分であり、命を捨ててアーカシ姫さまの身を守ろうとした男気溢れる憧れの存在であった。オリビアに次ぐ侠客として一目置かざるを得ない。


ご主人に頬ずりされて可愛がられ、新しい子分たちにも尊敬され、体も新調・極楽気分のモフモフが地獄へ叩き落されるのに時間はかからなかった。



「嫉妬(SHIT)」



オリビアにとってアーカシ姫さまを奪われることが何を意味してどんな結果を生むのか想像できるだろうか。そして先ほどまで自分をチヤホヤしていた子分どもまで今はモフモフに両手をすり合わせヘコヘコしている。きさまら……



つつつ……



鋼鉄で作られ体温を持たないモフモフの車体を、さらに冷たいオリビアの指先がなぞる。

鋼鉄のように表情を持たないオリビアの視線が、モフモフを見据え文字を指先でえがく。



「殺す(Kill You)」



【тусламж хэрэгтэй хүмүүст туслах】


モフモフの自動詠唱機が作動、自身の危険を察知し単独による緊急避難を開始。魔導エンジン始動。FCRキャブレターより一部の不穏な空気を吸引、内燃機関は程々に燃え、現地域より離脱を開始する。



ばりーーーん!



壁を突き破り、黒い神殿の外へ逃げだしたモフモフ。

アーカシ姫さま、魔導士、四人の子分が血相を変えて追いかける。



「うちのモフモフが! モフモフが! どこ行くんや!」


「なぜだ……! なにが……起こったんだ……! 」


「モフモフ兄貴ぃぃぃぃ!」

「モフモフ兄貴ぃぃぃぃ!」

「モフモフ兄貴ぃぃぃぃ!」

「モフモフ兄貴ぃぃぃぃ!」



◇◇◇



アーカシ姫さまが黒い神殿に足を運んだ理由は、モフモフの引き取りだけではなかった。手に入れた経緯がどうしても思い出せない不思議な日本刀(玄君七章刀)の調査を依頼していたのだ。姫さまは刀を一時期魔導士たちに預けており、その時取られたデータの分析結果を聞きに来たのだ。



「これも一種の……自動詠唱機です……」



やはりそうか。アーカシ姫さまは納得しかなかった。聖騎士サイファを討伐した時、2本に分かれた日本刀は、何も無かったように今は1本に戻っている。こういう不可思議な現象は、自動詠唱機無しに発現しないだろう。しかし呪文詠唱は無かったようだが……



「おそらくこれは……現存する最古の詠唱機……」


「へえ、いつ頃作られたもんや?」


「測定器の数値では……300万年前……」



どすん。アーカシ姫さまが椅子から滑り落ちた。余談だが魔導士たちが年代測定に使用する魔導年代測定器は、物質に含まれる魔素の魔力量を測定し、その半減期を計算して行なう。姫さまに測定器の理屈は理解できなかったが、玄君七章刀が桁外れに古いことだけは理解した。



「300万年前? 人類生まれてないやんけ!」



絶叫するアーカシ姫さまだったが、これは間違えている。人類は姫さまの前世であっても500万年前にアウストラトラロピテクス(猿人)が誕生しており、すでに二足歩行と道具の使用が行われている。


なお類人猿 (チンパンジー・ゴリラなど) との分岐は700万年前(ここを人類発祥とする説もある)、その類人猿と人類のゲノム(DNAの遺伝情報)は98.8%が同じである。想像してほしい、もしあなたと98.8%同じ人間が現れたとして、他人に見分けがつくだろうか?


では、類人猿と人類のわずかな違い、1.2%は何か?

地球上の全哺乳類で人類が持つ唯一の能力とは何か?



口呼吸である。



吠える動物も鳴く動物もいる。しかし言語を発し会話を可能とするのが人類だけである理由がおわかりいただけるだろうか。とはいえアーカシ姫さまが言う人類がここを指しているわけではないことも理解できる。姫さまは恐らく20~30万年前にアフリカに出現したとされるホモ・サピエンスの存在を人類の発祥と言いたいのだろう。異世界にアフリカがあるかどうかは疑問だが。



「まあ……不自然ですよね……つまり測定不能です……」



魔導士は研究結果を客観的事実として述べただけで、彼らもまた納得しているわけではない。とはいえ主観を捨て客観を駆使するのが魔術である。魔導士はそう信じて理解の及ばない事でも事実を認め、魔法を行使する。


モフモフを脅した罰としてロープで縛られ天井から吊るされているオリビアは、それを黙って聞いていた。そもそも猿ぐつわで口を封じられているので喋れないのだが、彼女も当然300万年前に作られたなどと信じてはいない。主観が全て、そのために事実もねじ曲げる方法が魔術、その結果が魔法。魔法使いはそういう人間の成りの果てである。


もし教会の聖職者がここにいれば、こう主張するだろう。人類は430年前に女神メイ・ナンギによって創られ、それ以前は人も猿も牛も山羊も、同じ肉の塊に過ぎないと。観測されていない歴史は虚無であり存在すらしていない、それが彼らの教義なのだ。矛盾した主観が全てである点は魔法使いに近く、魔導士に遠い。


ちなみにアーカシ姫さまの前世では

文字の発明はわずか5000年前である

ゆえに歴史の授業は、その記述が残る5000年の時を学ぶ

そして人類の歴史は、短く見積もって5,000,000年である







【人類生まれてないやんけ!】

──注釈

本作のキーワードを見てもらえれば分かる通り

この物語は一応SF(すこし不思議)である

筆者は自分なりのパタリロを書いてるつもりなのだ


とはいえ面倒で小難しい話は読み飛ばすのが正解

筆者もそのつもりで書いている

細かい考証に耐えるほど高尚な作品ではない

ファンタジー作品の魔法解説の類だと捉えてもらいたい


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