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第一話  神の子

信濃守しなののかみ千代丸は夢を見ていた。


聖騎士サイファ・フェルナンデスが彼を抱きしめ、耳元で囁いてくれるのだ。サイファが口にするはずのない言葉が、彼を目覚めから遠ざける。これが夢だと気付けたとして、彼は永遠の眠りを求めるだろう。



――千代丸、辛い目に遭わせて済まなかった



千代丸はサイファの背に手を添えた。彼の頬をサイファの栗色の髪がくすぐる。誰よりも憧れ、そして憎んだサイファ・フェルナンデス。まるで死後亡霊となって心残りを告げるかのように、サイファは彼に囁き続けた。



――千代丸、自由に生きろ、絶対に囚われるな



千代丸はサイファの優しい声を堪能するため目を閉じた。彼はサイファの言葉を胸に潜めるが聞くつもりはなかった。なぜなら既に、彼はサイファに囚われているからだ。彼が何者かは知らない。話してくれない。だけど俺は誰よりも、この人のことを知っているつもりだ。



――千代丸、壮健であれ



聖騎士サイファは黒い霧のように消えていった。千代丸はここで目を覚ます。廃墟の旧都、ミソノ・ユニバの無法地帯にある宿屋は身寄りのない子供たちが住み着いてる。千代丸も良き兄貴分として彼らを守り、なかなか帰らぬ聖騎士サイファを待っているのだった。


不吉で幸せな夢を見た千代丸は、サイファが帰らない可能性を予感していた。あれほどの剣豪が易々と討たれることなど在り得ないが、さりとて音沙汰なしに消えて数か月は立っている。探しに行きたい気持ちはあるが、居場所が皆目見当もつかないし、なにより子どもたちを放って行きたくない。しかし……


少年の面影が残る千代丸だが、感情任せに行動する幼さは捨ててきた。いや、奪われたのだ。彼はそっと唇に指を添えた。諦めきれない焦燥感が彼を悩ませる。その時気配を感じた。誰かが宿の前に立っている。総勢3名。大人2名。子供1名。やがて穏やかに宿屋の扉を叩く音が聞こえた。



「どなたか居られますか」



涼しく冷えた子供の声だ。外の寒さに耐えかねて、宿を求めてここにきたのだろうか。それにしても上品でシッカリとした口調は幼さを感じさせない。きっと裕福な家庭で育ち、相応の教育を受けてきたのだろう。それなら何もこんな無法地帯で宿を取らなくても……



「我々は白い教会の者です、聖騎士の行方を捜しています」



◇◇◇



「そうですか、サイファ・フェルナンデスがここに……」



白い教会を名乗る少年と、後ろに控える聖職者が2名、そして信濃守千代丸は宿の一室で聖騎士サイファの情報交換をしていた。サイファは白い教会の枢機卿から特別な勅令を受け、聖剣を貸与され任務に就いていたという。少年は饒舌で、千代丸が聞きたかったサイファの話を次々と聞かせてくれた。千代丸もサイファの行動を少年に話す。もちろん色々伏せてはいるが。



「子どもたちを脅した相手を懲らしめるとは彼らしい」



少年はくつくつと笑う。まあ懲らしめるというより殺してしまったのだが、そこは伏せておこう。それより少年は何者なのか。



「申し遅れました、私はティエン・シュリーズ」



信濃守千代丸は立ちあがった。まさかこの少年が奇跡の大司教と噂されるティエン枢機卿だったとは!どうりで子どもながら聖職者らしき大人を2名も従えているわけだ。急いで膝をつく千代丸をティエンは手で制した。



「やややや、ここは対等に、君は臣下でもあるまいに」



ティエンはそう言うが、サイファが主とした人を前にして、信濃守千代丸は礼を尽くさずにはいられない。気まずそうに肩をすくめるティエンは、何かわかったらお互い教え合うとの約束を残し、また日を改めて来ると言った。そして帰り際に、千代丸の耳元でそっと囁いた。



「サイファとは、した?」



一瞬で肝が冷えた。千代丸は殺意を抱いた。控える聖職者たちも感じるほどの強烈な気迫が、穏やかだった宿の一室を雪がちらつく外よりも冷たく感じさせた。ティエンはカカカと下品に笑い、宿を去った。



◇◇◇



「新しい玩具を手に入れましたな、枢機卿」



右後ろを歩く聖職者がティエンに声をかけた。

ティエンは悪戯に笑い、振り向いて答えた。



「彼はサイファが死んだことに気付いてないようだね」


「もとより死んでおりましょうに」



雪の舞い散るミソノ・ユニバの大通りで、3人は声をあげて笑った。ティエンは豊富な食材を前にして、如何にふざけた料理を作るか悩むシェフの心境だった。まずは切る、さらに煮込む、骨付きか、ミンチか。



「魔導士どもに、感づかれなければ良いのですが……」



左後ろを歩く聖職者がティエンに声をかけた。

ティエンは振り向かず、前を向いたまま答えた。



「気付いているとは思うがな、表立っては争うな」



そこからは無言だった。そもそも教会と魔導士は相性が悪い、魔導士は神を信じない。奇跡を崇めず分解し、衆目に晒す背徳者だ。いずれ大いなる奇跡で汚らしい黒のフードごと焼き払ってくれよう。ティエンは神を信じている。いや、神の子なのだ。


そもそもティエンの出自を知るものはいない。ある日教会の孤児院に1人で訪れ住み着いたのだ。そこで数々の奇跡を起こし、その美しさもあいまって当時の司教たちに愛され今に至る。なお、彼を愛でた司教たちは誰一人として存命していない。


ティエンは誰にも過去を語らなかったが、彼自身は両親を知っている。母はメイ・ナンギ、教会で崇められている女神だ。父は不器用な男で……今は語るまい。430年前に死んだとされる母に会ったことはないが、ティエンは彼女の教えを頑なに守っていた。



「必ず世界を焼き尽くします、お母さん」







本作を読み返してみたところ

第1話2行目の時点で既に日本語がおかしい

絶望した……

修正と加筆もしておいたので

機会あれば再読して頂けると幸い

ていうか読んでくださった方々に申し訳ない……


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