表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/44

第十二話  フェルナンデス公国独自の挨拶

アーカシ・ウォンターナは目覚める。


全身を魔術で麻酔されてからの目覚めは唐突だった。主観的に数秒前まで聖騎士サイファによって焼かれ悶えていたアーカシ姫さまは、瞬きの間に白く清潔な部屋にいた。天井に蛍光灯がなく、壁にランプが吊るされていることを確認するまで、ここが異世界か前世の夢か判断つかなかった。



「お気づきに……なられましたか……」



黒いフードを被った魔導士がアーカシ姫さまの顔を覗く。とはいえ魔導士の顔は黒いフードで隠れて見えない。これは不公平ではないか。かといって魔導士の顔が見たいかと言えば正直なんの興味もない。今の姫さまが関心を寄せるのはただ一つ。我が身の空腹である。



「もう大丈夫ですよ……ケガも回復なさいました……」


「はら減った」


「お見舞いの方が……待っておられます……お呼びします……」


「はら減った」



魔導士は部屋を出る。

入れ違いで入ってきたのはオリビア。



「姫さま! 姫さま! 姫さまぁぁぁぁぁぁぁ!」


「はら減った」



んぐぅ?


泣きながら部屋に入ってきたオリビア

アーカシ姫の唇を奪う


それはオリビアにとってファーストキス

アーカシ姫にとっても初めての口付け


「……! ……! ……! ……!」


オリビアはアーカシ姫の手首を押さえ、唇を離さない

姫さまは抵抗する気力が足りない

本気でぶっとばしてやろうと睨むアーカシが見たのは

アーカシ姫の頬をくすぐる

オリビアの長い髪


「……! ……! ………………………」


オリビアの口付けが優しくなっていく

その舌がアーカシの唇をそっとなでる

アーカシの頭を切ない痺れが支配していく

経験したことのない穏やかな恐怖


「………………………」


オリビアはいつも優しかった

常に見つめ

求めてくれた

寂しい一人旅に温もりを与えてくれた

アーカシ・ウォンターナを愛してくれるたったひとつの存在


オリビアの舌がアーカシの舌先に触れる

アーカシに走る甘い刺激


アーカシは眉をひそめ

そして緩やかに力を抜いた

蕾のように握った手は花が咲くように開く

高鳴る鼓動が

禁忌の扉を叩く


「………………………」


オリビア・フェルナンデスの舌を感じる

アーカシ・ウォンターナはもう抵抗しない

アーカシの舌を優しくなぞるオリビアの舌

アーカシも少しづつ応え始める…………





「あの……診察しても……いいでしょうか……」



いつの間にか入室していた魔導士

それ気付かず夢中になっていた二人は絶叫。



「ぎやああああああああああ!」


「うわああああああああああ!」



病室に相応しくない叫び声をあげた二人だったが

その後の態度には明確な違いがあった



「あら失礼、我が公国独自の挨拶(ぜったいに嘘)の途中でございまして」



「ちゃうねん! うち急にあんなことされてどないしたらええんかわからんかってん! ちゃうねん! うち悪くないねん! うち始めてこんなんされてビックリしただけやねん! こんなんされたことなかったからなんやわからんようになっただけやねん! ちゃうねん! うちそんなん興味ないねん! そらちょっとこのままずっととかいやちゃうちゃう! そんなこと微塵も思てへんわ!」



どうでもいいから早く血圧と体温を測らせてほしい、そう思った魔導士だった。そもそも病室でイチャイチャすんな。



◇◇◇



聖騎士サイファは街を出て街道を駆ける。


あのままアーカシ姫を追い詰め止めを刺すのも一興だが、魔導士どもを敵に回すのは分が悪い。自分だけならともかく、白教会、いや、我が主に害が及ぶことだけは避けなけねばならん。オリビアの奇妙な術も気になる。ここは一度間を空けて改めて参ろう。次は姫君の首と心臓を持ち帰る。


全ては我が、主のために。


聖騎士サイファは主を愛しているわけではない。むしろ悍ましく嫌悪している。我が身を呪いにかけ、我が身をなぶり、我が身を汚した張本人。憎い。

しかし騎士とは主君に仕え契約に基づき行動する所作とサイファは信じていた。忠義など不要、主が憎しみの対象であれば、純粋に騎士として徹することが出来る。忠義を持って仕えることは、却って主の身を亡ぼす。



「わが父のように」



聖騎士サイファは馬を走らせる。しばらくはあの街(ミソノ)で身を潜めよう。あの姫君が魔導士の街を離れた時を狙い、その首を斬る。その胸を穿つ。仮にそこへオリビアの姿があろうとも……



「邪魔立てするなら、オリビアも斬る」







「全身を魔術で麻酔されてからの目覚めは唐突だった」

──注釈

全身麻酔経験者は無言で頷くだろう

筆者も数回は経験した

そのうち何回かは目覚めの低血圧で最悪の気分だった

今は健康的な高血圧である、ダメじゃん


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
いちゃいちゃ〜♡ლ(´❥`ლ)←マテ 麻酔で「寝ないよ」って言う人が数秒で効果ばっぐん!なのは、いとおかし(.❛ᴗ❛.)←マテマテ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ