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第十一話  死線

少し時を戻そう。


墓場には驟雨しゅううが降り注ぐ、そこには呆然と立つ聖騎士サイファ、身も魂も焼かれ倒れているアーカシ姫さま、その間に立つオリビアがいた。鋼鉄の疾風、モフモフは主人に寄り添っている。



「なッ! なんだこれはッ!」



サイファが何もない地面に向かって叫んでいる。オリビアの魔法が効いているようだ。今のうちに逃げないと。 オリビアはアーカシ姫さまに駆け寄る、思ったよりヤケドは酷くないようだ。しかし魂を焼かれている、既に瀕死、意識もない。



「馬鹿なッ! 怪異かッ!」



サイファはひとり騒いでいる。サイファ、貴様はいずれ殺す。それよりアーカシ姫さまを運び出さないと。オリビアは姫さまの両脇を抱え、抱き起そうとする。意識無く倒れている人間をひとりで持ち上げるのは相当な困難である。オリビアはそれを今知った。それでも必死で姫さまの上半身を浮かす。


コカカカカカカカカ……


モフモフのエンジンが小刻みに振動、ボクに乗せろ、そう言ってる気がした。オリビアはなんとか頑張ってモフモフの座席にアーカシ姫さまをうつ伏せに乗せる。モフモフと姫さまが十字に重なるなんとも無様な乗車姿勢であるが、モフモフはそのまま微速前進、落ちないよう手を添えるオリビアと共に墓地を後にする。



墓場を抜け市街地に近づいた辺りで魔導士と兵士が数名駆け寄ってきた。もともとアーカシ姫さまの動向を探って監視していたのと、墓場から大きな爆発音がしたために、彼らは急ぎ様子を見に来たのだ。魔導士は姫さまに、兵士は墓場に向かおうとする。



「墓場は行っちゃダメ! 殺されちゃう!」



兵士を止めるオリビア。確かに兵士が墓場に行けば、聖騎士サイファに切り伏せられる可能性は高い。しかし彼女は別の理由もあって兵士を止めたのだ。それを今は語るまい。戻ってきた兵士とオリビアでアーカシ姫さまの乗車姿勢を整え、さきほどより少し早くモフモフは進む。魔導士は姫さまの脈を取り、ケガの状態を確認している。



「これは……酷い……治療院へ……急がないと……」



「お願いします! 魔導士さま! どうか! どうか姫さまのお命を救ってください! お願いします! 魔導士さま! どうか! どうか姫さまのお命を救ってください! お願いします! 魔導士さま! どうか! どうか姫さまのお命を救ってください! お願いします! 魔導士さま! どうか! どうか姫さまのお命を救ってください!」



「だ……大丈夫だから……助かるから……落ち着いて……」



「なんでもします! 私の身を切り刻んで医学の発展に役立てても構いません、お金が必要なら必ず用意いたします、必要な薬草が足りなければ今すぐ採取に向かいます、なんでもします、ご所望でしたら我が身を、どのような恥辱も耐えます、ですからどうか、どうか、どうか! 姫さまをお救い下さい魔導士さま!」



「そんなの……必要ないから……絶対助けるから……」



魔導士から見てもアーカシ姫さまの状態は酷く、助かるか否か五分五分である。しかしオリビア必死の懇願に、魔導士は思わず " 絶対助ける " などと口にしてしまう。魔導士は医者のような医療行為は行えど医者ではない。医者なら無責任な気休めは絶対口にしない。しかし良くも悪くも人の感情に引っ張られる彼ら魔導士は、誠意を尽くして懇願すれば、姫さまの治療を頑張ってくれるはずだとオリビアは信じて魔導士に縋りついた。


……オリビアは誤解している。そんなことしなくても魔導士は常に可能な限り手を尽くし医療行為を行ってくれる。求められるならいつでも、求められなくても分け隔てなく命を救う。しかし、そんなオリビアの必死な懇願こそ、効果が無いと知って尚且なおかつ、無様を晒し祈る姿こそ【 魔法使い 】の言う魔術である。


魔法使いは説く【 魔法 】とは超常的な現象ではなく、常軌を逸した祈りの先にある事象だと。



◇◇◇



アーカシ姫さまは黒い神殿と呼ばれる場所に運び込まれた。街の治療院では手に負えないため、神殿の研究室、最先端の医療が可能な高度魔法治療室へ搬送されたのだ。



何重にも重ねられた魔法陣の上に乗せられたアーカシ姫さまのバイタル(心拍・呼吸・血圧・体温)はモニタリングされ、身体再生を専門とする大魔導士が術式を展開、数名の魔導士が呪文詠唱で生命維持に必要な物質を生成、あるいは分泌を促している。


水晶に浮かぶアーカシ姫さまの心室細動に、異常を感知した魔導士が新たな術式を展開する。姫さまの心臓に刺激を与え、心拍を正常に戻すためだ。別の水晶を凝視する魔導士は脳波を見ている。血中酸素の濃度を観測する魔導士もいる。


身体再生を行う大魔導士は、これが1643回目の術式展開である。大魔導士となってまだ日の浅い彼も、最初の数年は上級魔導士に付き添って術式展開を学ぶ日々だった。人を救いたい一心で魔導士となった彼だが今は違う。人命救助という善意すら邪念、所詮は欲望過ぎない。彼は無心で最適解を選び患者の命を救うマシーン、意思なき機械、部品に徹する。


誰も救ったことのない、金と肉欲にしか興味がない宗教家が彼を信仰に誘うことがある。大魔導士を信徒とすることで、己のコンプレックスの解消と、妄想に満ちた自称・聖典に箔を付ける魂胆なのだろう。


根が優しい大魔導士は宗教家に告げる、君は具体的に何人の命を救い、何人の痛みを取り除いたのか。わずかな金銭で時に罵倒されながら淡々と人を救う我々に、口先で金を奪い人心を汚すことに終始する君がどのような魔法を使えるのか見せて見よと。宗教家は皆すごすごと立ち去るのみだった。


魔導士は基本信仰を持たない。それは課せられた義務ではなく、効率を求めた結果としての実相である。しかし……



「神さま……神さま……姫さまをお救い下さい……」



高度魔法治療室の外で膝をつき、両手を合わせるオリビア。だれが彼女を責められようか。力なき者の祈り。だれが無意味と笑えようか。不可能を認めない彼女の意思、それが奇跡を生む可能性、その重さを知る者に、オリビアを否定できようか。


ニヒリストとは、心の重さを測れない者を表す言葉である。







筆者が以前書いてた長編を何作か消すことになった

歌詞の引用が多く、なろう的にアウトだからだ

読んでくれた方々、そして評価して下さった方々に申し訳ない


だがそれは本作で血肉となり

筆者に新たな闘志と創作意欲をもたらす事となった

人生をかけて熱く激しく

燃え上がる作品に仕上げてやるッ!


これが私の【 魔法 】だッ!


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