公衆浴場
カラカテイッツァ
城市オーチル
この都市に来てから何日たったか。
僕はこの日もトラジロウに稽古を頼み、夜遅くまで付き合わせていた。
「はぁ……俺は疲れたよイサミ、もうやめようぜ」
「分かった! 稽古相手になってくれてありがとう!」
「いいってことよ」
僕はいつも通り、汗を流すために兵舎にある水浴び場の方に歩く。
ちょっと歩いて止まる。
なぜなら横にいるはずのトラジロウがいないからだ。
後ろを振り向くとトラジロウはしゃがみ込んでいた。
「どうしたのー? いくよー?」
「なぁイサミ」
「なに?」
「今日は大衆浴場に行こうぜ」
「なんで?」
「そりゃ身体を洗うためだよ」
「……兵舎にある水浴び場でいいじゃないか」
「あそこの水めちゃくちゃ冷たいじゃん」
「僕お金持って無いよ?」
「おれが払ってやるよ、言い出しっぺ出しな!」
「トラジロウが良いならそれでいいけど……」
「よっしゃ決まり!」
立ち上がって意気揚々と歩くトラジロウと1度部屋へ戻り、
桶と、小さいのと大きいタオルを手にして公衆浴場へと向かった。
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入浴料を払って男湯の方へと入る。
服を脱いで、いざ入ろうとすると、
トラジロウに止められてしまった。
どうやら腰にタオルを巻いてちんちんを隠さなきゃいけないらしい。
もしくは、水着と言う浴場に入る時専用の下着を履くか。
男しかいないのだから、隠す必要は無いじゃないのかと聞くと。
過去に男湯で全員のちんちんを颯爽と揉んで去っていく変質者が現れたと言う。
変質者は指名手配をされたが、行方知れずで今も捕まってないらしい。
そのため用心してこの規則ができたのだ。
「初めて聞いたけど、トラジロウはなんでそんな事知ってるの?」
「……おれが揉まれた内の1人だからだ」
「お……ぉぉ」
揉まれたのか。
なんて声を掛ければ良いか分からなかった。
とりあえず、隠す必要があるというのは理解した。
気を取り直して浴場入る。
そこは僕が思っていた場所では無かった。
すごく広いくて湯船が多いのはもちろん。
湯船それぞれ違う様子だ、お湯が山羊乳見たく白かったり、イカ墨見たく黒いのもある。
そして何よりも気になったのはあれだ。
大きな滑り台がある。
「トラジロウ! あれは何?」
「ありゃウォータースライダーだな、ガキが乗るもんだ…………なんでお前ずっと見てんの? もしかしてあれに乗りたいのか!?」
「ゆくぞ!」
「おい、待て! 先に身体洗うのが先だ!」
「なに! なら早く洗おう!」
身体を洗い、直ぐにウォータースライダーへと足を運んだ。
数人の子供だけが並んでいたので、あっという間に僕の番が来た。
僕は滑り台の上から辺りを見下ろす。
「すごい高さだ」
僕の前に並んでいた子供達は皆、叫びながら滑って行った。
この高さだ、さぞかし怖いだろう。
僕も叫んでしまうかも知れない。
「じゃあおれは下で待ってるからな」
「え!」
トラジロウは滑らないのか? っと思って僕は振り返る時。
「わっ!」
ヌルッと足を滑らしてしまった!
咄嗟に何かに掴まろうと手を伸ばす。
だがつかんだのはトラジロウの足首だった。
僕は飲み込まれるようにウォータースライダーに落ちる。
「あぁ!?」
僕に引っ張られてトラジロウはうつ伏せに倒れる。
そしてそのまま道連れとなる形で、僕達は勢い良く滑り出した。
「うわぁぁぁあ!」
「バカヤロぉぉぉ!」
滑り台は右に、左に、コースをくねくねさせながら僕達をさらに加速させた。
そして急カーブがに入った瞬間。
僕達の身体は宙に放り出される。
曲がりきれずにコースから出てしまったのだ。
速すぎたか、子供の身体じゃない僕達が滑ったからか、どうしてかは分からない。
分かるのは、これから落ちて下の水面に叩きつけられて痛いって事だ。
「イサミーー!」
「ごめーん!」
バッシャーン! っと盛大な水飛沫をあげた。
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最初は、うわざわざお金を出して身体を洗うなんてアホだと思ってた。
でも公衆浴場は身体を洗うための場所じゃなかった、遊ぶための場所だった!
「また来たらウォータースライダーに乗ろう!」
浴場から出て更衣室で、僕は赤くなった頬にうちわで扇ぎながらトラジロウに言った。
「嫌だよ、おれは癒されに来たんだ、ガキみたいにはしゃぎたくない」
そういう割には、僕がウォータースライダーを乗る度に一緒に乗ってたけどね。
それから公衆浴場を出て一緒に兵舎に戻るのだった。




