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詩[思索]

相互不理解

作者: 日浦海里

神様なんていない、とは言わない

人の血管が張り巡らされているように

緑の茎が細かく繊細に広がっている

その先端のいくつかには蜜柑の皮を裏返したような

白く皮のようながくと橙の実のような花


近くで見ると

クリスマスツリーとして飾られているもみの木にも見える

その草花の上を黒い斑点を背負った赤くて丸い塊が

よちよちと赤ん坊のように逆さ向きで下ってる


この草花がもみの木とするなら

赤くて丸い塊はそういう色合いの鞄を背負って作業をしている人なのだろうか

そうしたら、それを興味深く見つめている

白のレインコートを羽織った黒髪の子たちは

きっととんでもなく巨大な生物に見えるだろう


小さな黒の斑点のついた、赤い鞄を背負った人が

何を思ってもみの木を下っているのか


巨大生物はそのことに想いを馳せることはない

ただ不思議だから見つめているだけだ

どうやってこの木の幹に張り付いていられるのか

なぜこんなにせわしくなく動くのか


小さな人が何を考えているかよりも

小さな人がどうやって動いているのか

こんなに小さくても生命であることを

ただ不思議に思ってみているだけだ


もしも


そんな僕たちを興味深げに眺めている何かがいるとしたのなら

それはやっぱり同じように

ただその不思議を眺めているだけだろうか


たとえばそれは神様といった存在かもしれないけれど

彼らは僕たちが何を考えているのかなんてどうでもよくて

ただ自動で動く人形がどんな風に動いているのか

これからどこに向かうのか

このあと何をしでかしてくれるのか

その興味だけで眺めているのかもしれない


この黒い斑点を背負った赤い人が

今生きることにどれだけ必死だとしても

もしかしたら不可思議で巨大な生物に眺められることで

死の恐怖から逃れようと必死だったとしても

巨大な生物からすればそんな想いを汲み取ることなどまったくなく

ただ己の興味を満たすためにじっと眺め続けているように


僕たちがどれほど悩み苦しんで

互いに傷つけ合って

自分たちの生きていく場所を

自分たちで壊していくとしても

神様はそれに興味をもつかどうかだけで

興味を持てば眺めているし持たなければ見向きもしない

気まぐれで誰かに肩入れをしてほんの少し手伝うこともあるかもしれない

僕たちが稀に何かに思い入れを持って応援したり手伝ったりするように


何者かの救いなんて

そんなものなんだろうって思う

だから、僕たちは

互いに互いを支え合うことで

生きてくしかないんじゃないかって

そう思う

神様がきっと救ってくれる、とも言わない

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― 新着の感想 ―
[一言] とても好きな作品です。 赤くて丸い塊が、赤い人だなんて……そんな風に考えたら、何だか世界が一気に変わって見えるかも知れません。 そして、私達をどこかから見ているその存在はどんな思いを持って私…
[良い点]  もみの木が何かはわからずですが、小さな人はかわいらしく。  もっと小さな者にとっては捕食者なのでしょうけどね。 [一言]  頼るものではなく。  どちらかというと反発心さえ覚えそうなほど…
[一言]  巨人→人間→虫  なんだと、某巨人漫画を読んで思っていました。  自分の上位にあるものが、敵性かどうかで、悲劇的に状況はかわりますね。  傍観者なら、まだまし。
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