障害物競走
「よーい、どん!」
スターターピストルと共に私は走り出した。
出だしは好調、周りの者たちを置き去り、どんどん足を進める。
中盤を過ぎた頃、先頭を走っていた私は足がほつれて転んでしまった。
後ろを走っていた者たちがどんどん私を追い抜いていく。
これは競争。手を差し伸べる者などいない。
起き上がり、怪我をした足を引きずり私はヨロヨロと歩き出す。
もう先頭を走ることはできない。
でも最下位でいい、とりあえずゴールにたどり着きたい。
私より前の集団が見えなくなっていく、不思議と周りの声も聞こえない。
立ちはだかる障害物がどんどん険しくなっていく、怪我をしている体では大分きつくなってきた。
次の障害は綱渡り。
恐る恐るロープの上を進んでいく。
孤独からくる焦燥感か、足を踏み外してしまい、私は地に落ちた。
脱落こそしたが、ゴールはできた。
真っ暗で無音だった世界に光が灯した。
これで良い、これで良いのだ。