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ドイツっ娘魔法少女とアマアマ奴隷生活♥  作者: 黄田田
第1章:非現実な人生の終わり
6/9

榎本香里Ⅰ

お兄ちゃんの様子がおかしい


最近はどこかに勝手に出かけるのだ。本当に一瞬で、何の連絡もなく、それこそ消えるように


朝帰りも多く、そのせいかどこか疲れているように見えるし、顔だってやつれている。今日もまた学校から帰宅すると、すぐに布団に突っ伏して私の話を聞こうとしない


「ねぇ今日も母さん帰ってこないよ、ごはんどうすればいいの?」

「ごめん、今日はちょっと疲れてて…。出前を取るからそれで済ませてくれませんか?」

「私に他人の汚い手で触った料理を食べろっていうの!?」

「昔は食べてたじゃないか…いつからそんな潔癖に…」


潔癖症。そんな三文字で済む言葉


思うに、過去の私は無知だっただけなのだ。この世界がどれほど穢れているのかを理解していなかったから平然と兄以外の人間と交流できていたし、どんな豚が創ったかわからない廃品同然の食品だって処理できていた。でも、今はもう無理だ


ヒステリックに喚き散らかすと兄はしぶしぶと布団から顔を上げた。顔には泣きはらしたような跡があって紅い


「…誰にやられたの?目、腫れてるけど」

「え?別になんでもありませんよ。そう見えますか?」

「…ふぅん」


取り繕ってはいるが、おおかた誰かに虐められたのだろう。兄の美しさや能力の高さに嫉妬した手合いは前から腐るほどいた。


私はそのことに多少憤りはするけども別に口に出したりはしない。これから兄にはもっと世間の悍ましさを知ってもらわないといけないからだ


「カレーぐらいなら作れますが、それでいいですか?」


棚から黄色いエプロンをとって羽織る。私はその姿の兄に見惚れはするもののすぐに「いい」と返した。しぶしぶと長い髪を結びながら料理を始める兄、たんたんと野菜を切る牧歌的な音が響いた


あぁ、これこそが私の原点なのだ。兄と私だけの無菌的な空間。時間が止まっているようで、いつも悲しそうな兄の横顔を見て初恋の瞬間はいつだったかと考える


私、榎本香里と兄、榎本武は本当の兄妹ではない。お兄ちゃんは私の父と義母が結婚した際の義母側の連れ子で旧姓は雪野だった。前の苗字の方が好きだったそうだがそれでは本当の家族になれないからと無理やり変えたのだ。今思うと、滑稽でおかしい


名前を変えられて、見知った友達も失って、故郷とは遠く離れた場所に移されて。そんな兄の苦労も知らないで当時の私はこんな綺麗な人が“家族”になるのかと興奮していた。これが第一の初恋だろう


何が家族だ。速攻で破綻したくせに


だから私は兄妹というものが嫌いだし、この関係に甘んじるつもりもない。兄のこの遠慮したようなとってつけた敬語も看過している


昔から料理好きの兄は最初の最初、こんな血のつながりのない日常の侵入者だった私となんとか打ち解けようとよくクッキーなんかのお菓子を焼いてくれた


その時からつけていたのがこの黄色いエプロンだ。私は、下腹部が熱くなるのを感じる。そうだこの瞬間だ、私の第二の初恋は


あの頃の兄は御伽話の中から現れたお姫様のような、鏡の国から飛び出たアリスのような可憐な容貌でそんな彼が父も義母もいつも忙しくて私に構ってあげられないからという理由でかいがいしく世話をしてくれたのだ


夢中にならない方がおかしい。いわば兄は、いや武はずっと母親がいなかった私の代わりのママになってくれたのである


特別な日のお菓子だけじゃなく毎日の料理も作ってくれるようになった。同じ小学校に通っていたからいってきます、お帰りも一緒


毎日独りで孤独なかぎっ子だった灰色の日常は色めき始めた。兄の瞳が、その宝石のような、長い睫毛に包まれた瞳が私を見る、朗らかに微笑んで、金糸を紡いだような髪が揺れる


だから私は告白した。別になんてことはない、子供の通過儀礼だ


「私ね、大きくなったら武お兄ちゃんと結婚するー!!!」

「はは、ありがとうね。香里は見た目が華やかだから真っ白なウエディングドレスは似合うだろうなぁ。でもおれたちは兄妹だから結婚はできないんですよ?」


その時の私はそれを聞いて真に絶望してどうすれば兄と結婚できるのかを画策していたが、今思うとひどく容易いことで悩んでいたなと思う


本当の兄妹ではないのだから子供を作ってしまってしまえばいい。血のつながりがないなら近親相姦には当たらないし結婚もできる。今私はこの因果に心底感謝しながら毎日楽しい日々を送っている


それよりわかってないよなぁ。ウェディングドレスを着るのはお兄ちゃんなんだよ?太陽の下、純白に身を包んだ天使を私が迎えに行くのが理想だ


問題はいつ関係するかだ。想い続けてきた母であり姉であり兄である彼と終ぞ結ばれる瞬間は相当な舞台を用意してロマンティックに演出しなければならない。初めから必然であったかのように、この関係を神が認めたように


「~♪」


鼻歌を歌いながら調理をする兄、大好きな料理をすることでもう機嫌が良くなったようである。本当に家庭的な人だ、あの長い髪を兄が切ろうとした時それが嫌でつい殴ってしまった時を思い出す


「香里さんがそれを望むなら…」


それ以降兄は髪を伸ばしたままだ


「そろそろできるので、配膳をお願いします」

「えぇ」


二人並んで仲良く食卓に座る。祈るようにいたただきますと言いあった


兄が中学に上がってから私たちは離れ離れになってしまった。私は必死に勉強したがついぞ兄と同じ中学に通うことはできなかったし、ある事件が起きて一緒に暮らすことすらもできなくなってしまった


その別離は私に緩やかな精神の崩壊を引き起こすには十分だった。毎日のように会いに行っても、おなじ屋根の下にいないというだけでどこか満たされない。直接肌に触れても、家族という重しがあったあのころとは違い、手を離せばすぐに壊れてしまうような、安定感がない、そんな感慨


私のこの渇望は次第に性欲に遷り変り、兄を見るたびに強姦したくなる衝動にさいなまれるようになった


面会室越しで、みたあの白い肌。ひどく悲し気に泣いていて、「ごめん、ごめん」と謝り続ける兄


許す、許すから頼むからどうか抱かせてくれ。その細首を引き裂いて、処女の生き血を啜りたまえ。永遠に私の者だと証を残させてくれ


「お風呂作りますね」

「待って、その前に“お水”、“お水”を頂戴」

「…今日もやるんですか」

「うん」


既に液体が入っているグラスに透明な容器から水を注いで、機嫌を伺うかのような少しおびえた表情で私を見る


この男は女が怖いのか、どこで覚えさせられたのか。聞いても無駄だなと思った、兄が誰に凌辱されようと、暴力を振るわれようと興味はないがたった今向けられた恐怖は兄だけのもので、加害者は私の同類である可能性が高い


暴力女を糾弾したとて、それを超える愚行をほぼ毎晩犯している私がどうしようもなくむなしくなるだけだ、兄にとっくに嫌われているのはわかっている、恐れられているのは理解しているんだ


「武も飲んでね、ちゃんと薬とセットで」


でも、止められない。私は免罪符を片手にどんどんと進んでいく、後にはもう戻れない




***


窮屈そうに身をかがめて私が飲むのを見続ける兄、おかわりというとそっと容器をグラスの口につけた。コポコポと、小さな音が無音の部屋に響く


父を思いだす。深夜になるといつもこうやってお兄ちゃんを傍に侍らせて晩酌をさせていた


深酒になると猫撫で声で「雪野」なんて兄を旧姓で呼ぶのだ。そうしてお兄ちゃんが私に敬語で話しかけるように父は「圭介さん」と呼ばれ二人で最も暗い奥の部屋に消えていった


そこで何をしていたのか、当時小学生だった私は理解できなかった。しかし、それでも鮮明に覚えている。その時の兄が血の気がまったく引いたような、こちらも身震いしてしまうような生気のない顔をしていたことを


兄はその時と全く同じ顔をしている。私が首を絞めているから


まだ長針と短針は重なっていなく事に至るまでは少し早い時間だがそれでよかった。風呂に入っていない兄の匂いが堪能できるし、なにより一時でも長く愛すことができる。一秒一秒惜しむことなく体を、性を堪能するのだ


“水”は中性スピリッツとトニックウォーターをカクテルしたものだ。それを私は向精神薬とリタリンと睡眠薬と合わせてセットで飲む、これだけで簡単にオーバードーズさせることができるからだ


武にはそれに加えてシルデナフィルも、これがないとお兄ちゃんは私との行為で、立たせることができない。仕方がないことだ


お兄ちゃんは抵抗しない。負い目があるから、私に対して借りがあるから、罪人としてそれを償うために私の獣欲に付き添うのだ


女中として、飯炊きとして、売女として、男娼として、性奴として、玩具として


「ハァ…ハァ…お兄ちゃんは首を絞められても妹相手に感じちゃう変態なんだね。変態なら何してもいい、そうでしょう?だって自らこの関係を望んだもんね、私に虐められたい犯されたい、そうでしょう?そうなんでしょう!?」


兄は何も言わない。当たり前だ、薬で無理やりしているだけなのだから。している、強いている。脅迫したのは私だ


私しか、この場に悪人はいない。お兄ちゃんは罪びとなれど、罰は受けている。私の行為を正当化する贖宥状はどこ?どこ?


薬でまともな思考ができない。私たちはいつ結婚できるの?いつ武の目をこの綺麗な瞳を永久に独占できるの???


気が動転してしまって、つい兄の服をナイフでバラバラに引き裂いてしまった


するとそこにあったのは夥しい数の傷跡。切り裂かれ、突き刺され至るとこに穴はあり、皮膚は紫に染まっている


「なに?この、なに?」


中途半端に縫合され、治されたような傷跡は赤黒く孕み、こんなものを隠して普通にふるまっていたのかと驚嘆した


「…オリヴィア」

「!?」


何が起きたのか一瞬では理解できなかった


「…オリヴィア、もうやめろ、やめてくれ」


とっくに向こう側の世界に旅立ってしまった思った兄が、寝言を言ったのだ。悪夢に犯されているのか、私が悪夢の原因なのかは知らないが女の名を言った


「そう、その女がお兄ちゃんを虐めたのね、心を壊して、犯したのね」


私はどうしようもなく父の子だ、性欲は化け物であまつさえ義理の兄に恋慕している。それでもけじめはつける人間だ


兄が罪を犯したならそれ相応の罰は与えるし、兄が罪に犯されたならその畜生を滅ぼしてみせよう。大儀、大儀があるならなんだってできる


兄をうつ伏せにすると背中に掘られた屈辱的な刺青があらわになった。乱雑にカッターナイフで刷ったのだろう、子供の落書きような形でそれは書かれてある


「淫売」

「殺人者」


オリヴィアとかいう女は武の何を知っているのだろう。私の家族の、何をわかった気でいるのだろう


お兄ちゃんは漢字数文字で終わらせられるようなそんな単純な存在じゃないんだ!私たちの関係はヒトモドキ風情が干渉できるほど下劣なものじゃないんだ!


もっと崇高で…マゾッホとワンダのような次元の高い理想の、、、あれ何の話だっけ?


あぁそうだ思いだした


「殺人者」


この墨は私が入れたんだった。戒めとして刻み付けたんだった。ならこの「淫売」どうしてくれよう。オリヴィアとかいう端女(はしため)、どうしてくれよう


道具はアイスピックとカッターナイフ。数奇なことに私が普段使用するおもちゃと同じだった


「ゲホッ…!オェェェェェェ」


お兄ちゃんはまるで断末魔のように普段とは比べ物にならないほど低い声でえずき、そのままベッドの上にゲロをぶちまけた


首を絞めすぎてしまったらしい。それと同時に温かいものが私の中を包む


「うん…殺そうかな、ぜんぶ」


吐瀉物を手ですくって啜ってみる、酸っぱい味がした。白濁を飲んでみる、うん。これは愛おしくてずっと口に入れられた


そうね、ちょっとだけ…この世の地獄を呪ってみよっか


私は刃物をかき集めて、部屋の外に出た


悪魔とやらに遭いに


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