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リアル女子と相合い傘

 いま、光は必死に理性を保っている。

 なんせ女子とこんな近い距離になったことがない。

 しかも、その相手は学校一とも言われる美少女だ。


 体と体の距離は約十五センチ。

 その距離は意地でも縮めるわけには行かない。


 それにしても、

 さっきから情報量がとんでもない。

 

 風になびく黒髪のサラサラ具合。

 ぱっちりとした二重の瞳。

 きれいな唇。

 毛穴なんて存在していないようなきれいな肌。

 そして、


(何で女子ってこんな良い匂いがするんだよ)


 そんなことは小説の中の話だけではなかったのか。

 さっきから甘い落ち着く匂いが漂っている。


(うぅ〜、精神に悪い)


 近くで見ると余計わかる。

 琉花は美少女だ。


 そしてそんな美少女といっしょに帰って当然、話が出来るはずもなく。


 ふたりは黙って駅の方向に向かっている。


(なにか話しかけたほうがいいのか?)


 それをするには経験値が圧倒的に足りない。

 ということで、ふたりはそのまま黙って歩いていた。


 なにかもったいないようなそんな気がしたが、そんなことはないとむりやり納得した。

 さっきから情報が錯乱していて心臓に悪い。


 しばらく歩いて。

 急に光が止まった。


「どうしました?」

「いや、ここおれの住んでるとこ。着いた」……


 光の住んでるアパートに着いた。

 アパートに着くと、光はなにかを思い出したように早口でまくし立てた。


「というわけで、あとは勝手に使ってくれていい。事務室への返し方がわからなければ、明日おれにこっそり渡してくれればいい。早く帰れ」


 光が急に強い口調になって琉花をさっさと帰そうとした。

 まるで、誰かを恐れているようにキョロキョロ周りを警戒しながら。


「なんですか。その言い方」

「いや、お前は悪くない。ただ、嫌な予感が……」


 妙な言い方に訝しむ琉花だったが光が本気で帰って欲しそうだったのですぐ帰ろうしたその時。


「あら、おかえり光くん」


 女性の声。

 振り返ってみると、たぶん二十代なかばぐらいの女性が興味深げにふたりを見ていた。


「っ! た、ただいまです。奏さん」


 どうやら光の知り合いらしい。

 どうしたらいいかと琉花が止まっていると。


「あら、美少女ね。光くんも隅に置けないわね」

()()はそういうのじゃないよ」

「これ、って言わないでください」


 光が少し苦笑いしながら訂正するが、琉花は()()扱いだ。

 抗議する琉花。

 そして、それをさらに興味深げにみる女性。


 どういうことかと行動できない琉花を見てため息をついたあと、光が話し始めた。


「この人は、山口(やまぐち)(かなで)さん。このアパートの管理人さん。いろいろと助けてもらっているけど、特に青春に関してうるさいんだ。はぁ、だから早く帰って欲しかったのに」

「あら、大人になったらそんなことできないのよ。今のうちにできることをしておかないと損でしょ?」


 ふわふわした雰囲気を持っている。

 まさにお姉さんと言ったような雰囲気だ。


「それで? そこの彼女さんとどうしたの? 私に聞かせて欲しいな」

「だから、彼女じゃないって」


 困ったように答える光。

 琉花に目線で今のうちに帰れと伝えようとする。

 だが、


「あれ? 雨が強くなってきました」

「おいおい、奏さんはついに天候まで支配できるようになったのかよ」

「あらあら」


 すごいタイミングで雨が強くなってきた。

 なんの呪いだろうか。

 とりあえず、屋根のあるところまで退避する。


「光くん、この雨の中、女の子を歩かせるの?」

「いや、そういうわけではなくてですね……」


 これは流石に予想外らしく、どうしたものかと雨を見る。

 さすがに琉花もこの中では帰れない。

 というか、風邪をひかないために相合い傘をしてでも傘に入ったのに、ここで濡れては本末転倒だ。


「というわけで、光くんの部屋に行きましょう。三人でお話をしましょう」

「いや、ちょっとまって」


 当然のごとく出された奏の案に、光は猛抗議だ。


「何でおれの部屋なんだよ!? というか、お話できるようなことなんてなにもないし、あったとしても面白くないです」

「え〜。お姉さん二人の話、聞きたいな〜」

「勘弁してくれ」


 本当に困っている光を見て、琉花が助け船を出す。


「本当にお話できることなんて特にないんです。少しくらいならお話できますけど、光くんが嫌がってますし」

「う〜ん、そうねぇ」


 悩むようにあごに手を当てる奏さん。

 悩まなくていいのに。


 そんな光の考えをもちろん知らない奏は、さも名案が思いついたとでも言うような顔でこちらを見た。

 光からすれば、さっきと同じく嫌な予感しかしない。


「光くんの部屋の隣って使われてないからそこでお話しましょう。別に量は気にしてないから。大事なのは質よ」

「はぁ、もうそれでいいです。お前も雨宿りの代金だと思ってくれないか?」

「いいですよ」


 光の困った顔が見れて少し上機嫌な琉花は、光の話にうなずいた。


「お前、なんでそんなに楽しそうなんだよ」

「いえ、先生にも動じない新田さんも、お姉さんには弱いんだな〜って思いまして」

「すごい風評被害なんだが」

「あら〜、あながち間違ってないじゃない」

珍しく早く出せました。もしよろしければ、感想や評価の星をポチポチしてくれると嬉しいです。(嬉しいだけでなにも出てこない)

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