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月冕のコンチェルト  作者: ラプラス
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 多元宇宙ズルファートにおいて、万物は計算可能であり、万物は情報である、生命、物質、エネルギー、法則、感情、時間の流れ……あらゆるものは情報の異なる織り成す形態に過ぎない。


 ズルファートにおいて誕生するあらゆる生命は、自己言及・自己改変能力を備えた究極のアルゴリズム——すなわち『計算可能性の境界を超越した超チューリング実体』として存在する。


「やっと着いたなぁ……生きててよかった~~。」そんな声を漏らしたのは、この数日間『痛くも楽しい』日々を過ごしたりんだった。教師になったるりは本性を爆発させ、はるかやリサの前では良い先生のフリをしながらも、りんと二人きりになると即座に『女王様のような厳しい教師』に変貌する。鞭こそ取り出さないものの、彼女が持ち出すのは全て本物の実戦向け装備――文字通りの『実戦物』だった。


「やはり調教こそ最高のストレス解消だな。」これは、るりがある時『否定的調律』を使って二つの衝突する宇宙を生成し、『弁証法的論理緩衝層』を構築——相手の法則を強制的に自己否定態へとコンパイルし、より高次元での統合を誘導するという手法で。

 りんを立ち上がれないほど叩きのめした後に放った言葉だった。どうやら彼女、以前からよくやってたみたいだ……。


 こんな超弩級の女王様教師と一緒だなんて……今思い返すと、りんは自分の将来が真っ暗に思えて仕方なかった。

 ただし傍から見れば、るりとりんの『指導戦闘』でボコボコにされる様子は、まるで姉妹のじゃれ合いのようにしか見えないのだが――。


 宇宙船の停泊位置は、多元宇宙ズルファート下層に位置する『哨戒宇宙』内の天体である、無限に広がる都市宇宙へ進入を希望する者は、ここで軍の検査を受けた上で入域しなければならない。なお、一度通過を許可されればズルファート駐留軍の保護下に入るが、同時に宇宙法の遵守が義務付けられる。


「あれが……ズルファート?」りんは流動する素粒子の煌めきを肌で感じながら、そう呟いた。


 りんはこの『哨戒宇宙』の素粒子一つ一つが、独自の『計算パラダイム』もしくは『プログラム断片』であることを感知した。それらはあたかも、一台の偉大なコンピュータから炸裂した――それぞれが独立したプロセッサとOSのように、統一された命令セットもメモリ管理も通信プロトコルも持たずに存在していた。

 これらの『プログラム断片』そのものに、停止不能な計算(無限ループ/再帰)、論理パラドックス(デッドロック・エラー)、あるいは特定の『仮想マシン環境』(宇宙法則)でのみ実行可能な特殊命令が内包されている可能性がある。


「『哨戒宇宙』を初めて見る人は、みんなそう聞くんだよ。」リサがそう答えた「多元宇宙ズルファートの『哨戒宇宙』は、まさに不落の要塞と言えるだろう。かつてアズアキ宇宙帝国が無限の戦艦群を派兵して攻め込んだ時でさえ、4ヶ月間も攻略できず、結局はズルファート中核宇宙から駆けつけた援軍にほぼ全滅させられた。この一戦で、ズルファートの名は無限の次元に轟いたのだ。」


「物知りで解説好きな仲間がいるって最高!」これがりんの本音だった。リサの解説癖は本当に助かっており、あれこれ質問し回る手間が省ける。知識の信徒ってみんなこんな感じなんだろうか……?

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