第11.5話 side光
性的な描写があります
苦手な方は閲覧注意です
全部演技だった。そんなのは当たり前のこと。自分から告白した記憶も無ければされた記憶もない。なのにその事実にどこかガッカリしている自分がいる。それに気づいた時、光は自分の中のある感情を自覚した。
放課後になって自室に戻ってからも悶々とした気分は続いた。授業なんて集中出来たものではなかった。ふとした時に無意識に飛鳥のことを目で追ってしまい、気付いては羞恥に悶えるというのを一人繰り返していた。
「わたし、どうしちゃったんだろう」
自己分析するまでもなくこの気持ちが恋愛感情によるものだと分かっている。会ってまだ2ヶ月しか経ってないというのにそんな感情を持ってしまう自分に「私ってこんなに軽かったの?」とショックを受けつつもそれでも抱いてしまったものはどうしようもない。
女の子同士の恋愛に抵抗があるわけではない。いや、むしろ女の子同士だからこそその垣根を越えやすかったのかもしれない。そんな分析をしつつ今日はもう予習や復習なんて出来る気分ではないと光はベッドに入る。
「気持ち悪いって思われないかな……」
光にとっての1番の心配事はこれだ。自分が女性同士の恋愛に抵抗が無いからと言って、相手もそうだとは限らない。クラスメイトにも上級生と姉妹関係を結び恋慕の情を全面に出している者もいるが、それはお互いの同意があってのこと。それに傍観者であるうちは不快感を示さなくても、いざ当事者となったらどう思うかは分からない。
ならば、この感情は自分の中に留めておく必要がある。しかし、明日から自然に振るまえるだろうか。
「んんっ……飛鳥さん……ッ!」
光はベッドの中で身を捩る。飛鳥に名前を呼び捨てにされた時のことを思い出すと心も身体も切なく疼いた。
「ううぅぅ……飛鳥さん……かっこ良すぎるよぉ……!」
この学院に来ると決めたとき、3年間誰とも仲良くなれないということまで覚悟していた。知り合い程度にはなれるかな、なんて低い目標を掲げてもいた。それくらい自分はこの学院においては紛れもない異物で、ましてやそんな自分を助けてくれる人なんていないと思っていた。
「飛鳥さん、好き、好きぃ」
けれど、飛鳥はそんな光の不安を全て取り払った。初めて懇親会で飛鳥を見た時の印象は可愛いメイドさんで、けれども自分のことを気遣ってくれてとても優しい人だと思った。
そんな優しいメイドさんはただ優しいだけじゃなかった。まるで以前の学校で流行っていた乙女ゲームに出てきた騎士のように、いやそれ以上にかっこよく守ってくれた。
「こんなの、好きにならないわけがないよぉ……はぁっ……、あっ、飛鳥さん飛鳥さん、んんん〜〜っ……っ!」
絶頂に達した光の身体はびくびくと痙攣する。絶頂の余韻が押し寄せ、疲労感が襲ってくると意識がぼんやりとしてくる。このまま眠ってしまおうか、そう思った時に今更になって自分がしていたことを理解した。
「わ、私、なんてことを……」
飛鳥のことを恋愛対象として見ているというのは自覚していても、まさかそれが性的な目で見ていたなんて。自分の欲求だというのに青天の霹靂であった。
「わーーーー!!! 私のバカぁぁぁぁ!!!」
本当に明日からどうやって飛鳥と顔を合わせればいいのか。顔を枕に埋めながら羞恥に悶えるのであった。




