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最果ての地へ  作者: いらは
出会い編
2/14

【出会い】1

出会い編となります。シャナ視点の一人称です。

R15となっています。人間に卵産み付けとかそういう単語が少しでますが、描写はないです。苦手な場合はお避けください。

──昔々

神様がこの世界を創ったとき、いろんな生物を造りました。同様に人間もいろんな種族も生み出しました。

その中に、燃えるような鮮やかな赤い髪を持つ種族がいたそうす。その赤い髪の種族の一人はなぜか、神様を恨んでいました。

“彼”は神様と同じような力を持っていたとも、神様から奪ったともいわれるほど、圧倒的な“力”を持っていたそうです。

“彼”はその力で何かを作るのではなく、あろうことか、その力を使って神様を消してしまったのでした。

神様を消してしまった“彼”の髪は、今まで燃えるような鮮やかさは消え、まるで血のように禍々しい赤い色に変わってしまいました。

“彼”は後に魔人族と呼ばれ、今、この世界にいる魔人族の毛並みが一部赤いのは、この名残なのです。

赤い部分が多ければ多いほど、色が濃く禍々しいほど魔力を持っている証と言われるのです。

この世界でみんなが知ってる昔話。

そして、この世界で赤い髪は…


忌み嫌われる、災いの色なんだ。


どうも!シャナです。

あのあと無事に山を降りて、今は採った魔核石を換金するために町へと向かってる最中なんですよ。

ボクは相変わらず、仏頂面のイザナの後を必死に着いていってるんですけどね。本人には言えないけど、良い顔が台無しなんだけどなー。

ま、顔の事を言ってイザナがボクに対して優しく対応してくれるなら、口に出して言っても良いのだけど、逆効果にしかならないのであえて言いません。

平坦な道が続いてはいるんだけど、もう少しボクに合わせて歩いてくれてもいいのにな。

かといって、また文句などいえばギロリと睨んで、ボクを置いて行きそうで。

町までの道のりは、この1本道だから方向音痴のボクにだって辿り着けるとわかってるので、やりかねないのです。

半年のバディですが、そこはよく身に染みました。イザナのやりそうな事。

でもね、ああ見えて根は良い人なんです。

どこが?って思うかもしれないけど、ボクみたいな足手まといと旅なんて、他の人はしてくれないのだから。

ボクたちは最果ての地、北に向かって旅しているんだ。最果ての地と言うのは、いわゆるこの世の始まりがあった場所。

元々、最果てにはボク独りで目指していたんだ。

イザナに会うまでは。

でも、なんとか独りでやっていけていたんだけど、半年前にイザナに会わなければ魔物に捕まって、ボクは死んでいたかもしれない事もあって…

イザナに言わせると、それまで順調に旅ができていたのが不思議だ、そうです…


─半年前─


「あ、よかった地図がある!」

相も変わらず、ボクは森の中をさまよっていた

前の町を出たときに買った地図が、まさかの別区域だった…おまけにコンパスの魔石も値段の割には、すぐ効力も消えた。

汚い格好だったせいか、ボクに対しての態度はあまり、良い印象の町ではなかた。

いくら旅人だと言っても、数日洗ってないマントはさすがに不可解な目で見られたし、頭全体をを覆い隠すように巻いたターバンも不思議そうに見ていた。

出ている前髪が茶色だから、そんなに詮索されなくて済んだから良いけどね。

これでターバン外してって言われたら大変なことになっていたかも。

まさかこんな嫌な町に当たるなんて。

まぁ、済んだことをああだこうだ言っても仕方ない。

こうやって、案内板を見つける事が出来たから、良しとしよう。

気持ちを切りかえ、じっくりと案内板を見てると、どうやらこの近くに温泉があるらしい。

ちょっと複雑な道になってはいるけど、曲がる順番さえ間違わなければ行けそうである。

実はさっき、木になっていた果実を取るときに、木に着いてた植物から液体をかけられたんだよね…

振動でそうなる仕掛けなのか…はたまた魔力を持った植物なのか…

とりあえず、その液体が臭くて臭くて…

予備の服が入った袋まではかからなかったけど、せめて洗いたいなと思っていたんだ。

場所がかわると、いろんなのがあるんだなぁって、しみじみ思うよ。

「よし、道順をメモしたし、温泉は西だから、太陽を背にしていけば大丈夫だしね。

おまけに整備されてる道だから余裕綽々さ。」

自分で自分に言い聞かせる。一人旅をしだしてから独り言がやたら増えた気がするが…そこは多目にみてほしい。

でも、この時は本当に余裕だった。

しばらく歩いていたら、どこからか羽音が聞こえて来たんだ。

「蜂?やだな…さっきの液体と関係なければ良いな…」

小さい羽音を気にしながら、ボクは温泉がある場所へと足早に進めた。

だけど、羽音は消えることはなかった。

消えるどころか…その音は徐々に大きくなりだしたが、明らかに近くにいる音の大きさじゃない…

ボクは嫌な予感がし、振り向かず走り出した。

走り出したはいいけど、脚力増大の魔石など持っていないから、走れる距離は決まってる。

羽音は遠ざかるどころか、さっきよりも大きくなり、背後から空振も伝わって来た。

ヤバいかもしれない。

何から逃げているのか確認の為振り向くと、それは1mもある足の長い昆虫の蜂型の魔蟲だった。

振り返ったてよかったかもしれない。魔蟲は勢いよくボクに向かって、お尻の先端にある針を突きだしてきた。ボクはあわててその場に伏せた。羽音はボクの頭上を通り抜けたが、空中で見事なターンをしまたボクへと襲ってきたのだ。

ボクはあわてて横の茂みへと入った。

茂みに入って魔蟲を巻いたと思ったけど、そう簡単にはいかないようだった。

ボクが隠れた茂みの上を旋回したとおもうと、いきなり針を茂みへと突き入れてきた。

(ひぃ!)

思わず声が出そうになったけど、どうにかこらえて少しでも針が刺さらないよう体を地面へと着けた。

だが、魔蟲は諦める事なく、執拗に茂みに針を突き刺してくる。

低い羽音がよけいに恐怖心を煽ってきてボクはつい、その茂みから出てしまった。

「うあぁ!誰か!」

情けない声をあげながら、ボクは立つに立てなく四つん這いのまま逃げて行くことしかできなかった。立って走ればまだなんとか距離をおけたのかもしれないが、完全にパニックになってしまっていた。

手足がもつれ顔から地面へと倒れてしまった。すぐさま不穏な羽音が近づいた。

(あー、これはもうダメなヤツ!)

そう思い、目を閉じた。

羽音が近づいた瞬間、風切り音がした。

そして、恐怖でしかなかった低い羽音も、カツンと何かが落ちる音とともに聴こえなくなった。

(え…?何があった?)

ギュッと目を瞑っていたが、あんなに怖かった羽音もなければ体に痛みもない。

ボクは不思議に思い、恐る恐る振り向き片目を開けてみた。

足元には小さな魔核石が鈍く光っていただけで、回りを見渡したが何もいなかった。

「どういう事?」

首を傾げ、足元にある魔核石をみつめた。

「死ぬのは勝手だが、魔蟲を殖やされるのはやめてもらいたいな。」

どこからともなく声が響き、ボクはビックリして辺りをキョロキョロと見渡した。

だけど、相変わらず誰も見当たらない。

誰?

そう聞こうとした瞬間、上から人が降りてきた。

そう“降りてきた”が合っているかもしれない。

ドサッと音がたつでもなく、フワリと音もなく目の前に現れたのは淡いブルーの長い髪を束ね、少し冷たそう目付きをした、少し細めの男性だった。

襟にはどこかで見たようなバッチがしてある。

彼はなにも言わず、ボクに近づく。

「他人の嗜好をとやかく言うつもりはないが、死にたいならもっと別な方法で死んでくれないか?後片付けやら魔蟲駆除はめんどくさいんだよ。割りに合わん。

なんなら…オレがとどめを指そうか」

魔核石を拾った彼は、いきなり腰にあった剣を抜き、その刃先をボクの喉元へと当てた。

ヒヤリと冷たい感触が喉に伝わる。ボクはあわててその刃先を払い彼を睨んだ。

「自殺?!ボクは自殺するためにここに来た訳じゃない!勘違いしないでください!

それにいきなり切っ先を人に向けるなんて、なに考えているんですか!何様なの?」

刃物を向けられ、おまけに自殺者と間違われたボクはつい叫んでしまったが、言い終わった後我に返って血の気が引いた。

ヤバい人ならこの後、絶対ボクの首をはねる…と!

目の前にいる彼はキョトンとしたまま、ボクをみていた。

良かった!間に合う。今のうちに弁解しなくては!

「あのっ…」

「威勢がいいな。自殺者と間違えたのは悪かった。

さっきも言ったが、最近変な嗜好を持った奴らが多くてな。麓の町から協会に申請が出ていたから、ついでに駆除していた。」

そう言い、抜いた剣を鞘に戻していった。

よかった…ヤバい人じゃなかった。見た目は冷たい人そうだけど、話せばわかる人なのかもしれない。

ボクはホッとし、胸を撫で下ろした。

「あの…ボク、シャナと言います。

遅くなりましたが、魔蟲を倒してくれてありがとうございました。本当に助かりました。」

立ち上がり、改めてちゃんとお礼を言うと、彼は不思議そうな顔をした。

え?なんで不思議そうな顔するんだ?お礼の言葉が違うのかな?それとも、ターバン外れてる?

焦りながらボクは、ターバンがずれてないか頭を触る。

ターバンはズレてはいなかったのに、なんでこの人は不思議そうな顔をしているのだろうか?

「お前…ちゃんとお礼が言えるんだな」

え?そこ?不思議そうな顔する理由そこですか。

なんか、変な感じ。

「…当たり前じゃないでしょうか?」

「まぁそうだが…切っ先向けた相手に口答えするから、まともじゃないかと…」

「あ…あぁ…そうですね…」

乾いた笑いをしたボクを見て彼はフッと笑った。

おぉ?意外と表情あるんだね。そんな失礼なことを思いながら彼を眺めていた。

「オレは…イザナだ。」

心の声が聴こえたのかどうかはわからないけど、イザナさんはふいと顔をそむけ、拾った魔核石を袋に入れてた。その魔核石をみてボクは疑問がわいた。

「イザナさん、お強いですね。もしかしてハンターですか?ボク、生でハンター見るの初めてで。

それで、さっき言ってた事で気になるのがあったんですが…変な嗜好ってなんですか?その魔蟲と何が関係あるんでしょうか?」

「イザナでいい。

なるほど…格好からよそ者だと思っていたが…

ちゃんとしたハンターだ。証拠はこのバッチ。これがないと魔核石を採ることも売ることも出来ない。」

そう言いイザナさんは襟のバッチを指した。

バッチは太陽と月のような形が型どってあり、太陽の部分は真っ赤な色をしていた。

どこかで見たと思ったら、魔石を買うときに店にあった飾りと同じだったのを思い出した。

「さっきの魔蟲は人体に卵を産み付ける。体内で孵った魔蟲の幼虫は、その身体のなかを這い回り、内臓を食べ体外へと出て魔蟲と孵化するんだ。この時期ちょうど産卵期だから執拗におそってくる。」

「か…身体に…?

良かった…ボク、卵を産み付けられなくて…」

青ざめるボクを横目に、イザナさんは話を淡々と進めていく。

「産み付けられた人間は痛覚も運動神経も麻痺して動く事が出来ない上に、ショック死しないよう恐怖心を抑える物質も注入してるらしくてな。どうやら楽に死ねると変な噂が広がっているそうだ。

マニアの中では、わざと卵を体内の宿し、幼虫を身体の中で這い回る感触を楽しんでるらしい。内臓を喰う前に始末するらしいが…

全くもって理解できかねん。」

「うわぁぁ…気持ち悪い…」

少しでも想像してしまったボクは、一気に鳥肌が立ち気分が悪くなってしまった。

「いくらなんでも…胎内に卵って…うわぁ…本当にイザナさんに助けてもらって良かった…」

「イザナでいい。それより、お前のその臭い、どうにかしないとな」

イザナさん…イザナの表情は何とも言えない顔をしていた。

いつの間にかボクはこの臭いに慣れていたようだ。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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