表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最果ての地へ  作者: いらは
マヨイノモリ編
13/14

マヨイノモリ5-3

 この魔族を、このまま野放しにしていては危険だと思うイザナだった。しかし、魔力を無力化されたまま、思うように身体を動かすことも出来ずにいた。このまま魔族が言う、完全体になる事を阻止できず、されるがままなのかと思った。 

 だが、魔族の動きが止まり、無表情のままイザナを見つめ首を傾げた。

「おかしい…あの時のあの人と同じ力を感じるのに、どうして半分なの?半分あの人で、あの人じゃない。どうして…?」

「何を言っているのか理解出来ん。お前が言うあの人など知らん。何があれば、お前はそいつを追いかけているんだ?もう、いない存在なんだろう?」

「いいえ…居るわ…微かに感じる。あなたの力を取りこめばわかる気がする。それにあなた、記憶がワザと消されている…」

 イザナの上に跨っていた魔族の身体からは、イザナを縛るツタとは違った、ぬらりと粘膜をまとった物が彼の身体にまとわりついた。そして、服の隙間から入り込み、他人が触れる事を許さない部分へと怪しく動き進んでいく。

「もっとちょうだい…そうすれば何かがわかる。そして、私を仕上げて…」

 そう言い、再びつけた口から、ぬるっとしたものがイザナの口の中に入ってくる。入り込んだなにかは、口内をまさぐりその奥へと、イザナの身体を侵していく。嫌悪感と、身体からなにかが引きずり出される不快感が合わさる。抵抗を試みるが、身体は変わらず思うように動いてはくれなかった。

「あぁ…きた…来たわ…コレが、あの人の力!」

 起き上がった魔族の体が赤く光り、元の姿に戻った。だが、そこから色んな姿に変わっていき、魔族は己の手を見つめていた。

「力が……溢れるのに…苦しい。どうして?」 

 ミシミシと、身体が悲鳴をあげているかの様に音を立て、魔族の体は定まらず変わり続けていった。そして、長い髪の片方だけ赤く、顔も髪と同じように半分だけが模様で覆われた、不思議な魔人族らしき者へと変わり終えた。

 いつの間にかイザナを縛っていたツタなどは消え、体は自由になっていた。しかし力は入らず、かろうじて動く頭を動かし、姿の変わった魔族を見上げた。

─これが完全な姿なのか?─

 男とも女とも言い難い顔をしていたが、姿が変わってからも魔族は動かず、何も喋らず、目を閉じていた。不思議に思い、動かない魔族を見上げていたが、何の前触れもなくゆっくりと、瞼が開かれた。その視線は冷たく、鋭かった。

 目が合った瞬間、イザナの身体は強ばった気がした。魔人族は、そんな彼を嘲笑うような不敵な笑みを浮かべたが、何も言わずイザナの体に手を置いた。

 その瞬間、引きずり出されたなにかが、イザナの体に戻る感覚がした。全てがイザナの身体に戻ったと同時に魔人族は、元の魔族の姿へと変わっていった。

 魔族は身体の震えを止めるのかのように、両腕で自身の体を包み、ポツリと呟いた。

「…どうして?憎んで…いたのは──」

 魔族の体が急に崩れだし、最後は何を言っているのか分からなかった。そして、魔族がいた場所には、不思議な色をした魔核石が残っていた。

 イザナはそれを取ろうと手を伸ばしたが、まだ身体は重く、そのまま意識が遠ざかっていった。

 

 ***

 

 どこからか、声がした。自分の名前を呼ぶ声が。

 ─誰だ─

 目を開けているのか、閉じているのか分からないくらいの暗闇の世界だった。なぜこんなところに居るんだと思った瞬間、視界が急に明るくなり声がはっきりと聴こえた。

 声がする方へと目を向けたが、眩しくて誰が自分を呼んでいるのか分からなかった。かろうじて、眩しい中に人影らしきものが見えた。姿は分からなかったが、どうやら呼んでいるのは二人だった。

 自分を呼ぶ声はどこか懐かしく、そして悲しい感覚が湧き上がる。

『 』

「聞こえない…何を言って…?」

 何故か言葉が理解出来ず、自分を呼ぶのは誰なのか、そして、この感情は何なのかを確かめるべく、近くへと歩きだそうとしたが急に足元が崩れ、暗闇の中へと落ちていった。

 

 

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ