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7話 魔剣士におけるスキルレベルの伸ばし方

 あのゴブリンロードを倒した依頼から十日と少しが経ったある日。


 今はパーティーを組んでからちょうど三度目の依頼を無事に達成して帰還し、以前のように酒場で宴会をしているところだ。ちなみに依頼はどちらも最初の時と似たような難度のものだった。


 俺たち冒険者は基本的に経験を積み、スキルレベルをあげることで強くなっていく。


 隣に座ったトーメが、今度はどのスキルレベルを上げようかな、とつぶやいているのを聞いた時、自然に俺の口から次の言葉が出ていた。


「トーメ。これは俺の個人的な考えだが、スキルレベルはまずどれか一種類を優先的に伸ばしたほうがいい。とくに駆け出しの頃はな」


 魔剣士といえば器用貧乏・中途半端の代名詞である。


 しかしそんな魔剣士も、冒険者になりたての頃は他職に引けをとるわけではない。


 戦士が戦士スキルを4レベルにすることと、魔剣士が戦士スキルを4レベルにすること、どちらも必要な経験値は一緒だ。


 つまりレベルを一本伸ばしにするならば、決して専門職に劣らないということである。もちろん4レベルまでという制限がつくが。少なくとも冒険者になりたての頃、パーティーから誘われなくて困るということはない。


 トーメが駆け出しの時期にお呼びがかからなかったのは、バランスよくレベルをあげていたのが理由の一つだろう。すべてをこなせるが逆にすべてが中途半端なので、パーティーメンバーから見るとどう扱えばいいのか分からないのだ。


 まあ、戦士スキルだけが4レベルあって白と黒の魔法スキルレベルが0の魔剣士を、魔剣士と呼んでいいのかどうかははなはだ疑問だが……。


 パーティーメンバーから見たら『やっぱり戦士でよくね? これから先も成長するし。よし、魔剣士は追放だ!』ということになる。


 つまり一本伸ばしだろうがバランスよく上げようが、いずれはパーティーから追放されるのが魔剣士なのだ。


 ……あれ? だったら別に俺のやり方でもトーメのやり方でも一緒じゃね? それに俺も今現在、中途半端でパーティーから誘われない存在だよね。


 これまで自分が信じていた一本伸ばしの優位性がガラガラと崩れていくのを感じたが、一応先輩の魔剣士として上で述べたような一本伸ばしのメリットをトーメに伝えた。


「……なるほど。わかりました。僕も最初からスキルを一本に絞っていたら、あんなに皆から邪魔者扱いされることはなかったんですね……」


 まあスキル一本伸ばしでもいつかは邪魔者扱いされるがな。


 トーメの言葉を聞いて俺の脳裏に思い浮かんだのがこれだった。


 もう少しトーメに希望を持たせる言葉をかけてやりたいが、俺自身が魔剣士というものにもう何も期待できなくなっているからなあ……。


 魔剣士の少ない利点としては、他のクラスと比べて最高レベルになるまでの成長期間が短くて済むということが挙げられる。


 戦士、白魔法使い、黒魔法使いは6レベルを超えたあたりから少しずつ成長が遅くなる。


 連中が8レベルに届くよりも早く、魔剣士は三種類のスキルをすべて最大の4レベルにすることが可能だ。


 もっとも、そんなメリットは専門クラスの連中が高位のレベルになれることと比べると、あまり意味のないものだと言わざるを得ない。なにしろスキルレベルが上がれば新たなスキルを覚えられることに加え、基礎的な身体能力や魔力が上がっていくのだから。


 魔剣士は成長が早いと表現するのは語弊があるから言い方を変えるか。はっきり言えば頭打ちになるのが早いのだ。


「個人的には、戦士スキルか黒魔法スキルを上げたいですね……やっぱり敵をビシバシと倒したいです」

「フハハハハハ! トーメよ。それなら黒魔法スキルを上げるのがおすすめだぞ。貴様も3レベルになればライトニングブラストが使える。つまり我ら三人でトリプル・ダーク・ライトニングブラストを発動することができるのだ!」


 だからその痛いネーミングはやめろモルグナン! トーメも瞳を輝かせるな! というかモルグナン、お前はさっさと白魔法のレベルを上げろ。さすがにもう経験も足りているだろうが。


「さて、ワシは黒魔法スキルを1レベルから2レベルにしようかな」


 さっき俺がトーメにしてやった話を聞いてなかったのかおっさん? 経験値を使わずに貯めて戦士レベルを上げた方がよりパーティーに貢献できると思わないか?


 まあおっさんの場合はもう年齢的に手遅れだし、好きにしてもらってもいいか……。


 最終的な判断はお前に任せる、とトーメに言い添え、俺は自分の酒と料理を平らげることに専念することにした。


 そして顔の向きを正面に戻した時、じっとこちらを見ている対面のルビィの顔が目に入った。


 何か言いたげだったが、俺の視線に気付くとルビィは慌てたように自分の酒のカップを手にし、顔を隠すようにあおった。


 少し気になったが特に指摘する理由もなく、俺も料理に手を伸ばし始めた。

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