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6話 依頼達成を祝って、乾杯!

「オヤジ、依頼を果たしてきたぞ」

「おお、ハルト。おつかれだったな。魔剣士パーティーはうまくいったということか?」

「そうだな。俺が考えていた通りに一人一人がちゃんと活躍できたよ」

「……そうか。それなら良かった」


 どうも、何か含みがあるような言い方だ。声や表情もいつもと比べて少しおとなしい。オヤジにしてはちょっと珍しいな。


「それでは村からあずかっている報酬金だ。受け取れ」

「おっと」


 お金の入った袋を五つ渡され、ひとつを落としそうになって慌てて支える。五人で分配することを考え、あらかじめ分割して渡してほしいと伝えていたのだ。


 落としそうになった袋の位置を安定させて視線をオヤジの顔に戻した時には、もうオヤジの表情も声音もふだんのそれに戻っていた。


 何はともあれ、無事に依頼を果たせて報酬を貰えたことは嬉しい。これでモルグナンもしばらくは宿代に困らずに済むだろう。


 ただ、今回の依頼はそこまで難度の高いものではなかった。報酬の金額も五人で割ると多いとは言えない。またすぐに新しい依頼を探す必要があるな。


「じゃあまた依頼を受けるときはよろしく頼むぜ、オヤジ」

「ああ、お前たちにぴったりの依頼があることを願っているぞ」

「それと打ち上げをするんで料理と酒を頼む。おすすめのコースのやつで。五人前な」

「おうよ。任せておけ!」


 快活に応えるオヤジに背を向け、円卓で俺を待つ仲間の元へと戻る。全員が今か今かといった表情で、俺と俺が持つ報酬の袋を見つめていた。


「いや、今回はおつかれだったな」


 席につくと同時に、先ほどもらった報酬の袋五つをテーブルの上にドンと置く。


 金に困っているモルグナンはもちろんのこと、ルビィをはじめとした皆が目を輝かせた。全員が報酬の袋に手を伸ばし、中身を確認する。


「ああ、久しぶりに冒険者してる……きっちり等分された報酬を貰えるなんて夢みたい……ちゃんと五等分されてるよね? ね?」

「ワシ、結構活躍したし、ちょっとくらい色をつけてくれてもいいんじゃないかな?」

「フハハハハハ! これでわれの深淵なる計画もまた一歩進んだぞ……いや本当にありがたい。これで餓死せずにすんだ」

「やっぱり仲間で戦うのっていいですよね! ソロの時は依頼を達成した後もこんなに嬉しい気持ちにはなれませんでした」


 これまで散々苦渋をなめてきたのか、猜疑心が強くなっているルビィの言葉には俺も身につまされるものがあった。


 それにモルグナン、そこまで追いつめられていたのか……。


 トーメも仲間同士で喜びと報酬を分け合えることに満足しているようだ。


 ……さて、おっさん。あんたこっそりと分不相応ぶんふそうおうなことを言わなかったか?


 俺も報酬を五等分すると書いたことをすごく後悔しているところだ。もちろんあんたの報酬を減らしたいという意味でだが。


 ……と俺がかつてのパーティーメンバー募集の際に不備があったことを後悔している間に、先ほど注文した酒がやってきた。料理も遅れて登場するだろう。


「じゃあ、とりあえず乾杯しとくか?」


 皆に盃がいきわたるのを確認し、俺は酒がつがれたカップを手にとった。仲間たちも報酬の袋をしまうと、俺にあわせて盃をかかげる。


「それじゃ、依頼の達成を祝って。それと魔剣士パーティーが生まれたことに……乾杯!」

「乾杯!」


 喜び溢れる声と共にそれぞれの酒杯が打ち合わされ、そのころにはちょうど料理も届きはじめて楽しい宴会が始まり、それは夜遅くまで続いた。


 こんなに楽しい気分になれたのは久しぶりだ。皆もきっとそうだったのだろう。魔剣士パーティーを作って良かったと、俺はこの時心からそう思った。

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