表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/13

1話 いつものように追放される

 魔剣士というクラスがある。


 このクラスは戦士スキル、白魔法スキル、黒魔法スキルという三種類のスキルを使うことができるのだが、それぞれが最大で4レベルにしかならない。

 なお、戦士、白魔法使い、黒魔法使いといった専門職はそれらのスキルを10レベルまで上げることが可能だ。


 この世界の冒険者連中は大抵四人か五人でパーティーを組む。


 一般的な四人パーティーの構成はだいたい戦戦白黒だ。


 五人なら戦戦戦白黒が一番人気がある。攻撃偏重なら戦戦白黒黒もありえるし、防御的なら戦戦白白黒も見かけるな。


 そこに魔剣士の魔の文字が加わることはない。四人であれ五人であれ、な。


 いや、もちろんたまに戦戦魔白黒みたいな形になることはある。が、そこに新たな戦白黒が現れるまでの話だ。大抵は魔が弾きだされていつもの顔ぶれになるわけだ。


 俺は魔剣士というかっこいい名称に惹かれてこのクラスについた。


 それに戦士、白魔法使い、黒魔法使いの役割をすべてこなせるなんて、とても万能で凄いじゃないかと思ったんだ。


 でも実際は違った。万能なんかじゃなくて、ただの器用貧乏で中途半端なクラスだった。


 重ねて言う。魔剣士というクラスがある。


 そして俺はその魔剣士という道を選んだ。


 しかし今ではそのことを猛烈に後悔している。理由は上に述べた通りだ。


    ◇


 今日もいつもの通り、予定調和としか言いようのない出来事があった。


 先ほどまで五人パーティーで戦士の役割をしていたのだが、そこに新たなフリーの本職戦士が現れたので、俺はパーティーから追放されて無事にお役御免になったというわけだ。


 白魔法使いの可愛い子とはちょっといい感じになった気がしたけど、本当に気のせいだった。戦士が加わった途端さっきまでの笑顔はどこへやら、真っ先に俺をパーティーから外すことを進言しやがった。


 ……ま、他の連中も皆それに同意したんだけどな。


 俺はすべてのスキルが4レベル。魔剣士の最強位と言ってよいだろう。しかしそれでもこの程度の扱いだ。


 わかっちゃいたけどへこむ。


 スキルレベルはひとつ上がるごとに能力が高まり、さらに新たなスキルを行使できるようになるが、4レベルは各種クラスの中級スキルを覚えはじめる時期だ。


 戦士スキルが4レベルあれば剣術とそのスキルだけで、ゴブリンロードくらいの敵なら一対一でも互角以上に戦える。


 白魔法のスキルではそれなりの怪我を一瞬で治すことができるし、毒や麻痺くらいならあっさりと浄化することが可能だ。


 黒魔法のスキルもぎりぎりファイアーボールが使えるし、雑魚敵相手の殲滅戦もできなくはないのだ。


 ……が、しょせんはそこまで。


 上を目指すようなパーティーに必要な人材にはなれない。


 オーガなんかを相手にすると戦士スキルだけではほぼ勝てないし、4レベル程度の白魔法じゃ石化すら治せないし、もちろん黒魔法もブリザードストームなどの高位魔法は撃てない。


 追放されるたびにいつも魔剣士が活きる方法を考えるのだが、どう頭をひねっても定番のパーティー構成に魔剣士の入る枠はないという結論になる。


 俺はさきほどまでの仲間から渡された、まさに手切れ金となった報酬の袋を紐で吊り下げるように持ち、腹立ちまぎれにその袋をぶんぶんと振り回した。


 ……ん?


 その時、俺の頭にとてつもないアイディアが閃いた。同時に袋を振り回すのもやめる。中に詰められたわずかなお金がチャリンと音をたてた。


 そうだ。魔剣士は何でもできる。少々語弊があるが、決して間違ったことは言っていない。


 戦士、白魔法使い、黒魔法使い、すべての役割をこなすことができるのだ。少なくとも嘘ではない。


 ならこうすればよくね?


 戦戦戦白黒でも、戦戦白黒黒でも、戦戦白白黒でもない。


 そうだ。


 魔魔魔魔魔だ!


 魔剣士だけのパーティーを組めばいいんだ!


 これなら全員が全てのスキルを活かすことができる!


 先ほどまでの陰鬱な気分がすべて吹き飛び、俺は新たに生まれたこの考えを現実化すべく走りだした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ