5話
「ふぅ、疲れた」
俺は半分を加工し終えたところで休憩を挟む。
「残りはとっておくか。さて、作ったのにどんな魔法を付与しようかな」
攻撃魔法は論外だ。するとすれば【幻覚魔法】をつけて女に姿を変えて、出掛けるようにするのもありだし、【無魔法】で身体強化をするのもいい。魔道具は魔法の代わりに開発されたから魔法を使うより燃費がいい。でもその魔法よりは効果は弱い。魔力の代わりに魔石を使うかともできる。
魔石は魔物の心臓で、上位の魔物は魔石ではなく魔宝と呼ばれている。魔宝は魔石と違って綺麗な球体で透き通った無職が基本色だ。
そして属性色と呼ばれるのはその色の魔法の効果を底上げする効果を持つ。ただの宝石としても需要はある。勿論魔石も魔宝も使い切れないほどある。俺の顔より大きい魔宝もある。これは【デスエンペラー】と呼ばれる死神の眷属を倒したときのものだ。かなり苦労したがそれに見合ったものだったので俺は勿論仲間もほくほく顔で帰った。
「···············取り敢えずは保留かな〜。宝石なら作ったし、魔法ならいつでも付与できるからな」
そう言って全ての鉱石と今作ったアクセサリーを【収納】にしまう。
するとドアがノックされ俺は返事をする。中に入ってきたのは安定の妹だった
「どうしたんだ咲雪?もう寝る時間だぞ」
俺は時計を横目で見ると既に10時を回っていた。
「えーっと、お母さんがかいにぃは病み上がりだから念の為一緒に寝てあげてっていってたから」
咲雪は俺から目を逸らしながらそう言う。
確実に嘘だろ!
ま、可愛いから許すけど。
「そうなんだ。分かったよ。枕を持ってきて一緒に寝ようか」
俺そう言って微笑む。しかし内心では暗い思いでいっぱいだ。
「ホント!やったっ。すぐに持ってくる!」
そう言ってドタドタと走音をたてながら階段を降り、また大きな足音をたてて階段を駆け上がる。
「戻ってきたよ!」
咲雪の枕は花柄の未だ女の子のような枕だったしかしその可愛らしさも咲雪らしいと思う。
俺は既にベッドに寝転んでおり、そのベッドは魔道具になっている。形も質も世界最高なので文句は出ないはずだ。俺は隣の場所をポンポンと叩いて呼ぶ
「ほら、こっちに寝ていいよ」
「わーい!」
そう言ってベッドにダイブしてくる。俺はそれをあえて自分で受け止めるような形にして咲雪に合法的に抱きつく。そしてそのまま俺と向かい合うような形にしてまた抱きつく
「お兄ちゃん?!」
ん?今お兄ちゃんって·······。
「今お兄ちゃんって」
「ううっ恥ずかしいよ。かいにぃ」
かいにぃ呼びもいいけどお兄ちゃん呼びがいいな
「だーめ。これからはお兄ちゃんって呼ぶこと。それとも海翔お兄ちゃんでもいいけど」
俺は寝転びながら咲雪の顔を俺の顔に限りなく近づける。
「お兄ちゃんのいじわる」
俺は真っ赤にさせて目を逸らす咲雪の顔を俺の顔から離し俺の胸へと持って行き、咲雪の顔を抱きしめるようにする。
「ほら、もう1回呼んでみて」
「········お兄ちゃん」
咲雪はボソッと呟いた。俺はそれを聞こえないふりをしてもう1回聞く
「あれ?聞こえなかったな。もう少し大きな声で言ってくれないか?」
俺がそう言うと咲雪は俺の胸に顔をうずめてからその間から俺にも聞こえる声で言った。
「お兄ちゃん。もう許してよ」
「そんな言い方だと俺が咲雪をいじめてるみたいじゃないか。俺は可愛いい咲雪を愛でてるだけだよ」
俺はそう言って咲雪の頭を撫でる。恥ずかしがって俺の胸に頭を押しつけてくる咲雪。この状態で理性を保ててる俺は神の資格があるかもしれない
(そんな簡単に神になれたら苦労しねぇよ。神だってなりたくてなった訳じゃないしな)
俺は頭の中で聞こえる声を無視して妹の頭を撫でる。すると力を込めて俺に抱きついてくる。すると妹のどことは言わないが程よく実った何かが俺の腹に当たる。それが俺の理性をガリガリと削って、中から本能が姿を現す。
しかしそれを増長させる悪魔、それを止める天使が俺の心の中に現れる
[この世界の女は男からグイグイ来るのが好きなんだよ。この女の好感度は100%振り切って200%だこの際襲っちまえ]
〈ダメよ。襲うにしてもタイミングと言うものがあるの。でも彼女が望んでるならいいと思うわ〉
おい、天使。お前の仕事は俺の悪魔の暴走を抑制することだろ。1件停めてるように見せて、性犯罪にならない保険をかけてならOKとかふざけてんだろ。
この時海翔は理解してなかったが、男から女を襲う分には性犯罪にはならない。むしろ人にもよるがほとんどの人はウェルカム状態である。特に政府は男が子供を作ることを強制とまでは行かないが推奨しており、子供ができると男には生活支度金という名の自由にしていい金が与えられる。それを目当てで子供を作る男もいる。
しかし性欲がないこの世界の男にとって子作りとはかなりな重労働で、単純に女から貢いでもらった方がというのもある。
「どうしたのお兄ちゃん。手が止まってるよ」
俺の手が止まってることに気付き声をかける咲雪
俺の性格が変わりグイグイ言っても大丈夫だと思われたのか咲雪は誰よりも責めてくる。
この世界では女から男を襲うのは重犯罪でそれだけで無期懲役になることもある。なので男は襲われる恐怖を知らない。しかしこの世界にもやり手はいるもので、男をあの手この手で誘いだし、たっぷり楽しんだ後は監禁するか、奴隷にするか、殺してしまう。殺すという方法はあまり取らないが。しかし男も金が欲しいのは事実で、契約と称してお金を渡すと首を縦に降ってしまうほど無防備なのだ。
「そうだな。それにしても咲雪は甘えん坊だな。俺がいないと眠れないなんて」
「ち、違うもん。1人でも眠れるもん」
「そうか、せっかく愛しの妹が一緒に寝てくれるんだ、歌でも歌って寝かせてやろう」
俺は【睡眠魔法】を使うことはせず、俺が作った歌の中の1つである落ち着く歌を歌う。
「~~~~♩~~~~♩」
俺は歌いながらチラッと咲雪を見やると既にうとうとし始めてるのか瞼が下がりかけてた。
俺はそれを自分の手で完全に落としてやり眠りやすいように、さらに歌を続ける。すると完全に眠ったのか寝息が聞こえてくる。
「やっと寝たか。俺も寝よう」
今度は【睡眠魔法】を使いすぐさま意識を手放す
俺が目を開けると未だ眠ったままの咲雪の姿が目に映る。俺はそれを寝ぼけた頭で撫でる。すると咲雪はくすぐったいのか体をモゾモゾと動かして離れようとするが、撫でてない方の手で華奢な体を抱きしめ逃げられないようにする
「おはよう咲雪」
俺は眠ってる咲雪に声をかけた。返事が返ってくることは期待してない。しかしそれを言うだけで孤独感は無くなった。
俺は咲雪が起きるまでずっと撫でてたが、ずっと寝てるなんてことがあるんけもなく、
「うーん」
咲雪が起きたしまった。俺は撫でる手と抱きしめる手を離すことなく、
「おはよう」
声をかけるをすると咲雪は何も分かってない表情で
「おはようかいにぃ」
と呼びかけてくる。
「違うでしょ。違う呼び方にしなさいって言ったでしょ」
俺が語気を強めて言うと
「お兄ちゃん、おはよう」
そう言い替えた
「そろそろ着替えようか」
俺はそう言ってベットから出る。外は少し肌寒かったけどずっと寝ていたくなるような寒さではない。寒ければ魔道具の力を使うなり、魔法を使うなりすればいいだけの話だ。
俺は自分の引き締まった肉体を惜しげも無く咲雪に晒しながら着替える。咲雪はまだ頭が回ってないのかその光景をぼーっと眺めていたが、現状に気づいたのか、顔を赤くして俺から目をそらす。
その初心な反応に少しばかり楽しくなってしまうのは意地悪だからだろうか。
「ほら、咲雪も着替えてきな。まだ学校はないけど、生活リズムは整えておかないとね」
俺はそう言って扉までの道をあける。すると咲雪はそそくさと帰って行ってしまった。
「あーあ、そんなに早く帰らなくても」
俺の声は咲雪が帰ったせいで、誰にも返されることなくただ部屋に響いただけとなった。
「海翔の歌がまだテレビに出てるぞ。このままだと当分は収まらないだろうな」
「このまま学校のみんなの興味がかい······お兄ちゃんから正体不明の男性歌手に向けばいいのに」
咲雪はかいにぃと呼ばうとしたみたいだが俺の視線に気づきお兄ちゃんに戻した。可愛い妹だ。
「七海は今日は高校があるのね。海翔と咲雪は休みだから家のことはお願いね。私は今日大事な会議があるから外せないの」
母さんは超有名企業に勤めている。しかもその部長だ。かなりの給与があるだろう。
この世界の超有名企業といえば【ナンバーズ】が出てくる。【ナンバーズ】とは昔から続く貴族の家だ。全員の名字に数字が入ることからそう呼ばれる。1~5まであり、全員が超有名企業に連なる者だ。
この世界の遺産は男ではなく女が普通は継ぐ。だから跡取りは女が勤める。だからこの国の上層部も女ばかりだ。男など一人もいない。むしろそんなところにいたら目立つ。
結婚する男の役割は当主の女性の癒しとなること。それが求められる。だからこの世界の金食い虫のようなタイプはお呼びでないということだ。しかし男と交わらなければ子供は生まれない。男の狙いはそういう事から繋がっている。
この世界には男子校や女子校というのがない。全ての学校が共学だ。男と女が関わる機会を多くさせ、子供を多くするという政府の意向によるものだ。
「分かった。洗濯物とかでしょ。私がやっとくよ」
「俺も手伝うよ。咲雪だけだと申し訳ないからね」
自分より年下が働いてるのに自分だけが悠々とくつろぐ勇気は俺は持ってない。
「分かったわ。2人にお願いね。あ、今日は海翔の退院祝いが政府から届くから咲雪、くれぐれも気を付けてね」
母さんがそういうと咲雪は一瞬で真剣な顔つきになり頷く。
この世界は男を大切にするためにことある事にお金を送っている。今回のような退院祝いがいい例だ。例えば入学祝いなどで10万とか卒業祝いで30万とか珍しくない。男はそれが目的で学校に通ってる。
それ以外にも月1で男に生活支援金という名のお小遣いを30万円送ってる。1日1万円使えば丁度使い切る計算だが1日に1万円も使わないだろ。と、俺は思ってたが、『エンスタ』と呼ばれる写真投稿サイトでは男が自分の持ってる服を見せて自慢しているのがよくある。男は自尊心が高すぎるだろ。その一方で自尊心を傷つけられてもし返す方法がないので、その点では前世より楽と言える。
「任せて、お兄ちゃんは私が守る」
俺はそう言った咲雪の頭をなでなでする
「ありがとな。助かるよ」
すると顔を真っ赤にする咲雪、それを羨ましそうに見つめる母さんと姉さん。姉さんは必死に取り繕って、目の端っこで見ている。バレバレだ。
この机は丸型で全音が向かい合えるようになってる。全員の頭は手を伸ばせば届く範囲だ。目の前の母さんは少し前のめりにならないと無理だが
「そんな羨ましそうな顔で見ない。2人にもやってあげるから」
そう言って2人の頭も撫でる。自分より年上を撫でるってなんか違和感だな
2人は戸惑いながらも抗えない気持ちよさに顔をゆるめる。そして2人の顔は段々と発情してる雌の顔に。俺はこれ以上は、という所で手の動きを止めて食事に戻った。2人は物足りない顔をしてるが、ここではもうダメだ。やるならかえってきてからだ。2人も諦めたのか食事を食べ始める。
「母さんは何時頃帰ってくるの?」
俺は気まずい空気を立て直すため、話題を変える。俺からの突然な質問に戸惑いつつもしっかりと答える
「え、えっと、今日は少し遅くなるから9時頃かな。晩御飯作っておいてもらえる?」
後半は俺ではなくて姉妹の2人に向けられた言葉だ俺は咲雪はともかく姉さんが料理できることに驚いた
「え、姉さん料理できるの」
「料理くらい私にもできるよ!」
朝食の時間は和やかに過ぎ去っていく