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3話

「えーっと、七海がステーキで、咲雪がうどん、海翔がハンバーグでいいんだよね?」


「「「うん!」」」


「ならこれで注文するね」


そう言って母さんは電話を手に取り、出前を頼む。

母さんは稼いでいるようで、街から離れたところの家が3階建てで庭も結構大きめで着いてる。それをローン無しで一括払いしたらしい。母さん曰く


「金なんて貯めても意味ないし、海翔が住む家がマンションとかだと周りの視線が気になるでしょ?海翔が住む相応しい家にしないとね♪」


男って得するんだなぁ。

俺はこの時初めて男が貢がれるという意味を身をもって知った。


「ね、ねぇ、かいにぃは私達に優しくなったんだよね?」


俺は咲雪からの声に顔を向けて答える。


「勿論だよ。これまで冷たくしてきたから今まで以上に付き合って行きたいと思ってるけど」


「な、ならさ、昔みたいに私の事抱っこしてよ」


昔って俺の記憶だと咲雪が2歳の時なんだが··········

ま、ノープロブレム。


「勿論いいよ。ほら、おいで」


俺は手を広げて咲雪を呼ぶ。


「ほ、 ほんと!やったぁ!」


そう言って咲雪は俺の胸に飛び込んで来る。

あぁ。咲雪の胸が当たってぇ〜、柔らけぇ。


「·······かいにぃ、すごくいいにおい。あったかい」


そう言って咲雪は俺に抱きついてくる。すると必然として胸が俺の胸に当たって潰れ、太ももや二の腕の柔らかい感触が伝わってくる。今は10月なので長袖で過ごしているため、ダイレクトで伝わってこないが、このままでも十分柔らかい。


「咲雪もいいにおいだよ。咲雪を抱いてると落ち着くよ」


俺も咲雪にさっきより強く抱きついた。


「か、かいにぃ、力が強いよ」


「あ、ご、ごめん!」


俺は無意識のうちに力強めたらしい。それとも力の制御が甘いのかな。


「ううん、大丈夫。かいにぃなら強く抱いてもいいよ」


俺は今の意味の捉え方だ迷ったが、取り敢えずは甘えてくれてると捉えた。

俺は姉さんを探したが、既にこの部屋にはいなくて、俺たちがイチャついてるうちに部屋に戻ったらしい。


「出前が後2時間で来るって。流石に店を4件回って来るんだから遅くなるよね。海翔もしばらく部屋を使ってなかったんだから汚れてるかもね。汚れてたら片付けるから言ってね♪」


そう言ってウインクしてくる母さん。母さんはすっごい美人だからそういう事されると心臓に悪い。姉さんや咲雪とは違った色気がある母さんはある意味で咲雪達より綺麗なのかもしれない。


俺はそう思って部屋に戻った。





「そこまで散らかってなかったな。てか部屋広すぎだろ」


俺の部屋はなんと驚くことに3階のほとんどを使っており、残りはトイレや風呂、階段と1人で暮らせるのでは無いかと思えるほど生活様式が揃ってた。


「俺そこまで女嫌いだったのか?てか、この世界の人が前世の世界に行ったらかなりエグいことになりそうな気がするな」


俺はそう言って広い部屋を見渡した。

机は大企業の社長のように大きく、椅子はクッションが柔らかそうだ。ベッドはダブルベッドを1人で使っていて、それでも部屋の10分の1程度しか満たしてないと言えば、部屋の広さが分かるだろうか。


残りは本棚やクローゼットばかりで真ん中のスペースは何も置いてない。一応カーペットは敷いてあるが、それだけだ。


「そういえばさっき力の制御が出来てなかったな。【収納】」


俺は魔法を使って中から木剣を取り出す。この木剣は一見普通に見えるが、【修復】【魔切り】とかなり効果が凄い。しかし振ってる分にはただの木剣なので体を動かすには丁度いい。

真ん中にかなり大きなスペースがあるし。


「ふうぅぅ」


俺は呼吸を整えて、剣を構える。そして型をなぞるように体を動かす。使う型は勿論【勇者流】の型だ。1から16ある型を緩急をつけながらなぞる。勿論本気でやるとここら一帯が吹き飛ぶため手加減はしている。ていうか手加減の練習だ。前世は常に本気だったが、今は本気を使うことは無い。


「はあぁ」


俺は気合いを入れつつ最後の型をなぞる。自分で考案したのだから当然完璧にできる。あーあ。これを流派として継承させたかったな。


俺が16の型をなぞり終えて、初めの構えに戻すと扉から声が聞こえた。


「うわぁ。かいにぃすごい!」


「ん?」


俺が扉の方へ振り返るとスマホを片手にこちらを見る咲雪の姿が。


「かいにぃってどこで剣道を習ったの?それにその木剣、姉さんの使ってるのと色が違うけど?」


「えーっと、これはさっきネットで調べたのをやってみたんだ。ずっと寝たきりだったから体を動かさないとだからね。この木剣は看護師の人が俺が剣道の動画を見ている時に買ってきてくれたんだよ」


俺は咄嗟に考えた直ぐにバレそうな言い訳を言ったしかし今はこれしかこの状況を打開する方法がない


「ほぇ。すごくかっこよかったよ。ねぇ、かいにぃって歌上手い?」


歌か〜。歌ったことなんて前世でも数える程しかないぞ。それも子供の時だけだし


「歌?なんで?」


「え、あっと、か、かいにぃの歌を聞いてみたいと思って」


「歌か〜。知ってる曲が少ないからな〜。何が歌って欲しいの?」


俺は好感度を得る第1歩として妹の願いを叶える。という戦法に出る。


「別にかいにぃの好きな曲でいいよ」


「好きな曲かぁ。別にないな〜。あ、なら作ればいいじゃん」


ふっ、この俺を舐めるなよ。俺は勇者になってから荒んだ心を癒すためと理由をつけて自分で曲を作って、街で素性を隠して自分で楽器を作って、自分で歌ったことがあるんだぞ。

その楽器はギターとしてこの世界にあったが。


「えっ、かいにぃが作詞作曲するの!」


「ああ、それぐらいしか思い浮かばないしな。任せとけ、かいにぃにできないところはないんだぞ」


作戦その2、相手にイキる。

効果としてはこれが成功すると、相手からの信用が得られ、失敗すると失望される諸刃の剣の作戦だ。


「分かった!待ってるね!」


「勿論だ、任せとけ」


咲雪が部屋を出るやいなや俺は社長机を前にして椅子に座り、パソコンを引き寄せる。ノートではなくデスクトップだ。しかも最新式だ。俺はその機能を全て暗記することに30分で成功。そして前世の要領で歌詞を作り、曲を作る。


「道具はギターでいっか♪」


今更ながら咲雪から言われたが自分でかなりノリノリなのに気づいた。自分がやりたかったことが転生してまでできるのが楽しい。俺は夢中になりながら曲を作っていった。



そして30分経つと、


「調子に乗りすぎた〜」


初めのを10分くらいで作り終えると、残りは完璧に趣味に走った曲を作って、挙句の果てには物語まで作ってしまう始末だ。


「俺って以外にこういうのを作るのが好きなのか?」


と前世の20年初の自分の趣味を発見したことに嬉しくもあったが、何故か悲しくもあった。


「妹に聞かせるなら中途半端は許されないな。ここは防音だから歌ってもバレないだろ」


俺はパソコンに曲をインストールし、それを流す。

ちなみに俺が歌う曲第1号はロックでギターとボーカルが俺が務める


さて、そこで心配なのがギターだが、心配無用!前世で作ったのがある。これは王宮鍛冶師、王宮裁縫師、王宮建築士、王宮細工師、王宮魔付与師など様々な力を借りて作った力作。

木は【エンシェントトレント】の腕

弦は【ドラゴンカイザー】の髭

色は【カラフルタイガー】の体毛をすり潰した液体

どれも国指定の厄災級だが勇者であった俺には関係ない。これを作らなければもっと早く、少なくとも1年は早く邪神を倒せてたはずだ。しかし悔いはない。


これは王宮魔付与師が魔法を付与した。

効果は【音響】【衝撃】【効果音】【演出】

俺はこの時に音楽革命を起こしたと自負できるほど、このギターは完璧だと思う。

【音響】は音が響きやすくなる

【衝撃】は聴いた者に衝撃を与える

【効果音】は狙った時に好きな音を出せる

【演出】は狙った時に好きな幻影を見せる


これが完成した時に俺は思ったね。これはやりすぎたっ!ってね。たかだかギターの材料にドラゴンの髭は使いすぎだ!って王様に怒られたよ。それ以外の素材を要らないとか言ってタダであげたら何も言えなくなってたけど。


流石にこの世界で【効果音】と【演出】を使ったらおかしい!ってバレる。だから顔を隠してパソコンで録画しておこう。いつ何時必要になるか分からないからね。

【音響】と【衝撃】は使ってもバレないでしょ。これで分かったらプロの音楽家だね。分かるかどうかは知らんけど。


「ま、練習あるのみだね」


俺は【収納】からギターを取りだし、構え、パソコンで取り敢えず作った楽譜を見ながら引くのだった。









「や、ヤバイ」


私はかいにぃの部屋に潜入中だ。母さんに言われた後かいにぃは自分の部屋に戻った。私はそれの後をつけてみた。普段から何をしてるか気になったからだ。


私が部屋に着くと、かいにぃは剣を降っていた。それが何故か様になっていたのだ。姉さんがやるより綺麗でかっこよかった。かいにぃがやったからかもしれないけど、それを除いてもすごくかっこよかった。これならいくらでも見ていられる気がした。しかし私は急いでスマホを取り出し録画のカメラを向けた。録画で見るとかっこよさが半減してしまうが、それでも並の男よりもカッコよかった


そして始まりがあれば終わりがあるようにかいにぃは剣を振る腕を止めて呼吸を落ち着かせていた。しかしそれは見かけだけで、剣を持って踊っている間は一切息の乱れは聞こえてこなかった。


そして私は昔からの夢だったかいにぃの歌を聞かせてもらえるように頼んだ。するとかいにぃは私の予想の斜め上を行く答え、新しく曲を作ろう!と言い出した。いくらかいにぃでもそれは無理だと思ったが、かいにぃが自信満々に言いきったため信じることにして、部屋を離れた。


「咲雪〜、出前が届いたから海翔呼んできてくれる〜?」


「分かった〜」


私はルンルン気分で向かった。かいにぃは今曲を作るため机と向かい合ってるはずだ。その時のかっこいい横顔が見たい!その一心で急いで階段を駆け上がった。


そして私が扉を開くと、初めに感じたのは衝撃だった。意味もなく感じた。そして机を見るもかいにぃの姿は見えない。その代わり部屋の中央に椅子を置いて座っているかいにぃの姿が、その手にはどこからか取りだしたギターが。


かいにぃはとっくに曲を作り終えて練習をしていたのだ。まさかの2時間で歌とギターの曲と歌詞を作り終えて、既に練習しているのだ。

その練習さえも必要ないと思うほどすごく綺麗な歌声で歌詞も音楽も全てがマッチしていた。

かいにぃが引き終わるまで私は放心状態でそれを聞き続けていた。







「ふぅ」


俺が一呼吸つくと隣からは拍手の音が。それはさっきと同じように扉側から。そして拍手の主はまたしても咲雪だった。


「か、かいにぃ、上手すぎ」


「そうか?そう言って貰えて俺も嬉しいよ!」


「それってかいにぃが作詞作曲したの?」


「うん、そうだよ。かなりの力作だと思うけど」


「かなりどころじゃないよ!これ聞いたら全員が卒倒するよ!」


「そうか、なら他のも作ってみて良かった」


「ほ、他の?」


「うん、作り始めたら楽しすぎて他にも沢山作ってみたんだ。せっかくだからこれを色んな人に聞いもらいたいから動画サイトにアップしようと思って」


「か、かいにぃは世界を乗っ取る気?」


「そんなことしないけど!ところで咲雪はなんでここに来たんだ?」


「あ、そうだ。出前が届いたんだ。早く来てよ」


「OK、すぐに行くから先行って待ってて」


俺はそう言ってギターを机の上に置く。これが壊れるなんて到底思えないが、気持ちの問題だ。

それにしてもロック以外にラブソングみたいなのや、POPとかも作ってみたからみんなに聞いて評価してもらいたいんだよね。咲雪は反対してたけど、さっき撮った奴を投稿してみるか。


さて、 ハンバーグ♪ハンバーグ♪






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