第98話「名も無き英雄②」
⛤『魔法女子学園の助っ人教師』
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カルメンを叱りつけたステファニーがふと見やれば、
ディーノが『何か』に祈りをささげている。
跪いたディーノが祈りを捧げていたのは、遥か昔に造られた人間の石像らしい。
パッと見て、ほぼ等身大だと思われる。
風雨にさらされ、傷み朽ちてはいるが……
どうやら石像の『意匠』は男性のようだ。
しかしステファニーは、石像など見向きもしない。
全く興味がない。
「ディーノもよっ! ぐずぐずしないでっ!」
「…………」
ステファニーは容赦なく促したが、
ディーノは両手を合わせ、跪き、祈りを捧げていた。
「ほら、ディーノ、何ぼうっとしてるのよ!」
焦れたステファニーが、再び促せば……
ディーノはようやく「反応」する。
「あ、ああ……ステファニー様か」
「ああ、じゃないわよ! これからやるのは、あんたが立てた作戦でしょ? 先頭に立って私達を引っ張りなさい!」
「了解!」
尻を強烈に叩かれたような形となり……
苦笑しながら立ち上がったディーノは、改めて石像へ一礼した。
と、そこへ声をかけて来たのは村長アンセルムの孫娘エミリーである。
「ディーノ」
「ん?」
「どうしたの? ブレーズ様の像にお祈りしたりして」
「ああ、何となくね……それよりブレーズ様って誰?」
とディーノは曖昧に答えを戻し、歩き始めた。
その横に、エミリーもピタッと寄り添い、歩き始める
「この楓村のご先祖様と言われる伝説の方よ」
「この村のご先祖様? 伝説?」
「うん! ず~っとず~っと昔……まだ小さな集落だったこの村を魔物から救い、村の少女と結婚し、末永く幸せに暮らしたという流浪の騎士様なの、名も無き英雄というふたつ名もお持ちよ」
「流浪の騎士……名も無き英雄……」
ディーノはエミリーの言葉を復唱した。
実は……不思議な事が起こっていた。
ブレーズの石像の傍らを通った時、
ディーノの心へ謎めいた声が響いたのである。
『頼むぞ、勇者』と……
既に亡霊のロランと邂逅したディーノには、もしやという勘が働く。
未知の存在が、この村の未来を、自分へ託したのかもしれないと。
しかし今、そんな事をエミリーも含め、誰にも言えない。
「私の家はそのブレーズ様の子孫だって、爺ちゃんが言ってた」
「そうなんだ」
とディーノが頷くと、
エミリーは前方を歩くステファニーへ、柔らかい視線を投げかける。
そのステファニーは「やるき満々」という感じで、カルメンを引き連れ、
勢い良く手を振って歩いていた。
『死地』へ向かう者とは思えない「はつらつさ」だ。
「ええ……ステファニー様は、あのように張り切っていらして、ありがたいと私は思うけど……」
「思うけど?」
「ステファニー様達が来てくれたのもディーノのお陰よね。だから私は貴方をブレーズ様の再来だと思ってるわ」
「おいおい、エミリーさん。再来って、俺はそんな大層な者じゃないよ」
ブレーズ様の再来?
伝説よ、再びって事か……
ディーノは困惑し、手を左右にひらひら振って、否定した。
しかし、エミリーは引き下がらない。
「いいえ! 冒険者ギルドでディーノを見て、この人ならと思った私の直感は正しかった」
「直感……」
「うん、私の直感、大当たり!」
「大当たり?」
「ええ、普通ならばありえない、来てくれる人なんか絶対居ない!」
「…………」
「でもディーノ! 貴方はこうして実際に村まで来て、人喰いゴブリンと戦ってくれる」
「…………」
「貴方の心意気と思い遣り、私との確かな絆を感じるもの」
「エミリーさん……」
「ディーノ! 貴方を信じてる! 私はブレーズ様の子孫……同時に、ブレーズ様と結ばれた村の少女の子孫でもあるの! 絶対に勝ちましょう! そして私を迎えに来て!」
熱く語り、迫るエミリーであったが、好事魔多し?
いつの間にか……
ステファニーが腕組みをし、ふたりの行く手に立ちはだかっていた。
傍らにはカルメンが苦笑して立っている。
ステファニーは大声で叫ぶ。
どうやら、エミリーの言葉が聞こえたらしい。
「ディーノ!」
「何でしょう? ステファニー様」
「まだ早い! 戦いに勝ってからよ!」
「え? まだ早い? 戦いに勝ってから?」
「ディーノ、あんた! わざと、とぼけてるの? その子を第二夫人にする事よっ!」
「え? 第二夫人?」
「ホント馬鹿ね! 栄えある第一夫人は、この私に決まってるでしょ!」
ステファニーは吐き捨てれるように言い、踵を返し、南門へ歩いて行ってしまった。
その後を、相変わらず苦笑したままのカルメンが、
大袈裟に肩をすくめ、ついて行ったのである。
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最後に、連載中である
「帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者」
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