第96話「作戦会議」
⛤『魔法女子学園の助っ人教師』
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村民達が、人喰いゴブリンとの戦いに身を投じる決意をした後……
ディーノ達一行は、楓村村長アンセルム自宅へ、打合せの為に移動していた。
居間のテーブル上に2枚の地図が置かれ……
それをディーノとステファニー、クラン鋼鉄の処女団のメンバー、そしてアンセルムと孫娘のエミリーが、凝視していた。
打合せの議長兼進行役はステファニーである。
本来、依頼の受諾者はディーノなのだが……
生まれ持ってのリーダー的な性格なのだろう、
クランの新リーダー『大嵐』ことステファニーが、
ガンガン仕切っていた。
先ほど、ステファニーからほんの少しだけではあるが、
気を遣う言葉をかけて貰ったので、ディーノはとりあえず静観する事にした。
「爺さん、エミリーからひと通り話は聞いたわ。だから……再度、同じ話を聞くのは時間が勿体ない」
「な、成る程」
「だから、こちらから順序だてて簡潔に話す。認識に相違があったら、訂正。または必要があれば補足してくれる?」
「了解したよ、ステファニー様」
アンセルムが同意し、頷いたので打合せは開始された。
「じゃあ、行くわよ、爺さん。敵は、人喰いゴブリン。出没開始は、2か月と少し前から。最初は小群だったけどあっという間に増えて、現在は約1,000頭を超える。農作業中の村民に何人か、犠牲者が出た。最近は村へも頻繁に襲撃して来る……こんなものかしら?」
先の言葉通り、ステファニーは経緯と状況を簡潔に述べた。
アンセルムは再び頷いた。
「うむ! おおむねOKだ」
「おおむね?」
言葉尻を捉え、ステファニーが聞き直す。
対して、アンセルムは答える。
「頭数だけは……違う。もっと多いと儂は思う」
「多い? 根拠は?」
「村民の目撃情報や被害現場の検証等で、儂の推定じゃ」
「ふうん……」
アンセルムの説明を聞いたステファニーは分かったような、
分からないような曖昧な反応をした。
と、ここでディーノが手を挙げ、発言を求める。
「ちょっと」
「何よ? ディーノ」
「俺も同意見です。村長の推定は……当たっている。既に確認したけど、ゴブリンの数は1,000頭どころじゃない。その数倍は居るでしょう」
ディーノが断定した事にステファニーは、
「へえ! いつ確認したの? 及びその根拠は? 爺さんみたいに推定なんて言わないでよ」
「ええ、事実です。俺の戦友からの報告だから」
「戦友? 何、戦友って! どこに居るのよ?」
ステファニーの言う通りである。
ディーノが言う『戦友』らしき者の姿は周囲にはなく、気配すら無い。
しかしディーノは、改めて言い放つ。
「俺が召喚した戦友がこの村の周囲を巡回しています。実は、俺達がこの村へ到着するまで護衛をさせていました」
「召喚? ディーノ、あんた召喚魔法を使うの?」
「ええ、ほどほどに」
「ほどほどって……ふうん、少し驚いたわ。で、使い魔くらい呼んだの?」
「いや、使い魔じゃないです」
「使い魔じゃないって……そうか! 護衛役なんて使い魔には到底無理だものね!」
……この世界における使い魔の定義とは、異界に棲む自我を持つ精神体の総称である。
召喚魔法を習得した者が、最初に呼ぶのは彼等が多い。
犬や猫、鳥などの小動物の精神体が殆どであり、持つ能力もメッセンジャーや簡単な偵察、軽い荷物のお運びをする事くらいだと認識されている。
「ステファニー様が馬車の中で押さえつけて、ず~っと毛をいじくってた黒猫もそうです」
「え? あの黒猫も召喚したの? 村に着いたら何故か、すっとんで一目散に逃げたけど」
「あはは、多分ステファニー様が怖くて、逃げんたんでしょ」
「はあ、何言ってるの! 失礼な事言うとぶっ飛ばすわよ!」
「華麗にスルー。ちなみに、あの猫は魔族ですが、召喚で呼んだのではありません。テイムしました」
「テイム? 何それ? あんたテイマーでもあるの?」
テイムとは、魔法で異界から呼び出す召喚とは違い、
現世に存在する魔族を手なずける事である。
テイマーとは、そのてなずける技に長けた者だ。
妖精猫のジャンが戦友になった経緯は少々違うが、
面倒なので、ディーノはテイムと伝えたのである。
しかし……
このまま話が進めば、興味を持ったステファニーにより、
いろいろ突っ込まれた上に『打合せも』滞るに違いない。
この場で、ケルベロス達の説明を詳しくするわけにはいかなかった。
だからディーノは、さりげなく話題を変える。
「まあ細かい事は置いといて、俺の戦友からの報告では、楓村へ向かう森林で合わせて2,000頭近く、目撃したそうです」
「2,000……か。それは少し手間取るわね」
「いや、奴らの本拠……多分この近くに巣穴がある。だから、間違いなくその数倍は居るはずですよ」
ディーノは全員へ『現実』をズバリ告げた。
カルメンは無言で聞き流し、マドレーヌ、ジョルジエット、タバサ、
そしてアンセルムとエミリーは表情を暗くしたが……
唯一、ステファニーだけは目をギラギラさせ、不敵に笑う。
「わお! だったら下手すりゃ、1万頭? これは面白くなって来たわね」
「面白いって……ステファニー様らしいですね。怖くはないんですか?」
と、ディーノが苦笑すれば、
「怖いわけないわ! 面白いのは当然でしょ! たった6人で延べ1万頭のゴブリンを相手にするのよ! 最初から勝てると分かった戦いなんて全然面白くないじゃない!」
「成る程」
「負け戦は絶対に嫌! だけど、どきどきしない、高揚感皆無の戦いなんて、もっと嫌!! 全然つまらないわ!」
と、ここで口を開いたのがカルメンである。
「それでこそ、ステファニー様です。ウチのメンバーの持ち味はご説明した通りです。盾役は私にお任せを」
「了解! 王都までの道中、あんたから散々聞かされたから、マドレーヌ達の能力は把握してる」
ステファニーはそう言うと、再びディーノへ向き直る。
「初戦は必勝が条件! 結構な数のゴブを血祭りにあげ、村民達の士気をより高める事が必要。……ディーノ、あんたには妙案がありそうね」
「はは、分かります?」
「分かるわよ、あんた、やけに落ち着いてるから」
「…………」
「よっし! 愛する妻として、あんたの顔を大いに立ててあげる。作戦を提案してみて!」
「あ、愛する? つ、妻!? ステファニー様がディーノさんの!?」
驚いたのはアンセルムである。
他の者は表情を変えず、無言である。
エミリーを含めた女子達は、既にステファニーから散々聞かされていたから。
「いえいえ、絶対に愛する妻じゃありませんって。……では、作戦をお話します」
首を振り、ステファニーの発言を否定したディーノは、
自分が考えた作戦の段取りを話し始めたのである。
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最後に、連載中である
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