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第94話「約束したのっ!」

⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)

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「エミリー、良くぞ無事に戻って来た。役目も果たし、大手柄じゃ」


「じいちゃ……いえ、村長! ただいま、戻りましたっ」


 やがて……

 不安げな村民達の中から現れたのは……

 エミリーの祖父、楓村村長アンセルムであった。

 老齢ながら、四肢に力がみなぎり、

 眼光は鋭く、物腰は落ち着いている。


「助っ人の方々……早速、ご相談したい。儂の家へいらして頂けるか」


 アンセルムはそう言い、深々と頭を下げた。

 自宅で、作戦会議を行うつもりらしい。


 しかし!


「ちょっ~と、待った!」


 ストップをかけたのは……腕組みをしたままのステファニーである。

 機嫌が悪そうに、しかめっ面をしていた。

 

 アンセルムは訝し気な表情となる。


「何かな? お嬢さん」


「何かな? じゃないわよ、爺さん!」


「ふふ、爺さんか?」


「そうよ、爺さん! あんたのウチでくだらない相談なんかする前に、やる事があるじゃない」


「ほう、やる事か?」


 首を傾げるアンセルムの様子を見て、ステファニーは焦れたように舌打ちし、

 きっぱりと言い放つ。


「ちっ! 村長の癖に本当に駄目な爺さんね! 何よ! あんたのとこの村民ったら、覇気が全くない陰キャじゃない。このザマじゃあ、気合負けしてゴブリンの餌になるのも時間の問題よっ!」


 ステファニーの厳しい物言いに圧倒されたかのように、

 アンセルムは頷き、苦笑する。


「これは手厳しい。情けないが、お嬢さんの言う通りじゃわい」


「やい、爺い! お嬢さんじゃない! ちゃんとステファニー様と呼びなさい!」


「ほうほう! では、ステファニー様のお考えとやらをお聞きしようかのう」


「耳の穴かっぽじって良く聞いて! 戦いはまず士気が大事よ! 次に敵味方の正確な戦力分析と双方の比較、続いて有効な作戦立案と勝機を見極めた駆け引き、5と6が無くて最後は根性なのよっ!」


 ステファニーの言う事は尤もである。

 アンセルムは同意しながらも、納得しない様子だ。


「成る程……理屈じゃわい。だが口で言うだけなら容易い。ここに机はないが机上の空論ならいくらでも言えるだろうよ」


 しかしやられたら、100倍返しがモットーのステファニー。

 アンセルムの皮肉に対し、彼女の毒舌はますますエスカレートする。


「黙れ、くそ爺い! あんたこそ見かけ倒しの口だけじゃない! 良い、論より証拠。有言実行! あんたに言われずとも私は口先だけの奴が大嫌いなの! 見てなさいよ、早速、村民の士気向上の作戦をしっかり実行するからね!」


「ほう! それはありがたいが、一体どうするのじゃ?」


「エミリーから聞いたけど、あんたたちは村に閉じこもって怯えてるだけ、いわば籠城だけで守り一辺倒の専守防衛」


「その通りじゃのう」


「ふん! それじゃあ絶対に勝てないわ。援軍が見込めないこの状況じゃね」


 毒舌でアンセルムを罵倒しているだけのように見えて、

 ステファニーは冷静に状況を見極めていた。


 アンセルムは少し驚いたようだ。


「ふうむ!」


「相手は大群、こっちは少数、その上、陰キャで士気が全くなしじゃあ、絶対に勝てないのっ! くそ爺い、分かったあ?」


「ふむ、良く分かった。で、ステファニー様の作戦はいかがかな?」


「攻撃は最大の防御よ! 私達が打って出る。村はあんたたち自身でしっかり守ってちょうだい!」


「戦うのはステファニー様達だけか? 儂ら村民は戦わんで良いのか?」


 と、アンセルムが尋ねれば、ステファニーは首を横に振る。


「不要ね! あんた達が居ると却って足手まとい! 戦うのは私達だけで良い! 今から慌てて訓練しても泥縄でしょ?」


 激高しているように見えて、戦局の分析は冷静に行う……


 やはり……

 ステファニーは凡庸ではない。

 ランクAの超一流冒険者カルメンが見込んだ、大器の素質が開花しつつある。


 アンセルムも何か、感じるモノがあったらしい。

 大きく頷き、きっぱりと言い放つ。


「分かった! ではステファニー様。儂らは村の守りに専念。攻撃役たるあなた方への慰労休息と補給の後方支援に徹しよう」


「へぇ! 爺さんたら! ようやく分かって来たじゃない?」


「ふむ、プレッシャーをかけるようで悪いが、もしもステファニー様達が敗れれば、この村はもうお終いじゃろうて」


 もしも、ステファニー達助っ人が敗れれば……

 村民も死ぬ。

 

 達観したようなアンセルムの物言いを聞き、

 ステファニーは再び力強く首を横に振った。


「大丈夫! あんた達は助かる! 私達は絶対に負けない!」


「ふむ、期待しておりますぞ!」


「任せて! ……あ、そうだ! ひとつだけ爺さんにお願いがあるわ」


「お願い?」


「ええ、あんたの孫を借りるから」


「エミリーを?」


「何故なら、私達はここらの地形を含め、勝手が分からない。未知の土地で戦うには地元民の的確なアドバイスが必要なのよ」


「成る程」


「だけど覚悟しといて。下手すりゃ、あんたの孫は死ぬかもしれない。一応、守ってはやるけどね」


「ふうむ!」


 話していて分かる。

 ステファニーは安易な約束をしない。

 だから却って信じる事が出来る。


 アンセルムがそう思った時、

 衝撃の発言が、ステファニーから飛び出す。


「アンタの孫はね、見ず知らずの男に、自分の身体を投げ出そうって決意してるのよ! いざとなりゃ、村を守る為に死ぬくらいの覚悟はしてるわ」


「エ、エミリー、お前!」


 ステファニーの言葉で、アンセルムは全てを悟った。

 孫が、エミリーが……

 助っ人を連れて来る事が出来たのは、

 とんでもなく大きな代償を払ったからだと。


 考え込むアンセルムへ、エミリーは叫ぶ。


「村長! ……いえ、爺ちゃん! ステファニー様の仰る通りよっ!」


「…………」


「私達はこの戦いに勝つ! 絶対に勝つ! そして勝った後……私はここに居るディーノのお嫁さんになるのっ!」


「エミリー……」


「私はそう約束したのっ! 必ず守るのっ!」


 村は静まり返っている。


 気合がみなぎり、叫ぶエミリーを……

 アンセルムだけではなく、村民一同が無言でじっと見つめていたのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

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