第94話「約束したのっ!」
⛤『魔法女子学園の助っ人教師』
◎コミカライズ版コミックス
(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)
☆最新刊『第3巻』発売決定しました! 6月27日発売予定!※予約受付中です!
※6月6日付けの活動報告に書影公開の情報を掲載しましたので、宜しければご覧くださいませ。
何卒宜しくお願い致します。
「エミリー、良くぞ無事に戻って来た。役目も果たし、大手柄じゃ」
「じいちゃ……いえ、村長! ただいま、戻りましたっ」
やがて……
不安げな村民達の中から現れたのは……
エミリーの祖父、楓村村長アンセルムであった。
老齢ながら、四肢に力がみなぎり、
眼光は鋭く、物腰は落ち着いている。
「助っ人の方々……早速、ご相談したい。儂の家へいらして頂けるか」
アンセルムはそう言い、深々と頭を下げた。
自宅で、作戦会議を行うつもりらしい。
しかし!
「ちょっ~と、待った!」
ストップをかけたのは……腕組みをしたままのステファニーである。
機嫌が悪そうに、しかめっ面をしていた。
アンセルムは訝し気な表情となる。
「何かな? お嬢さん」
「何かな? じゃないわよ、爺さん!」
「ふふ、爺さんか?」
「そうよ、爺さん! あんたのウチでくだらない相談なんかする前に、やる事があるじゃない」
「ほう、やる事か?」
首を傾げるアンセルムの様子を見て、ステファニーは焦れたように舌打ちし、
きっぱりと言い放つ。
「ちっ! 村長の癖に本当に駄目な爺さんね! 何よ! あんたのとこの村民ったら、覇気が全くない陰キャじゃない。このザマじゃあ、気合負けしてゴブリンの餌になるのも時間の問題よっ!」
ステファニーの厳しい物言いに圧倒されたかのように、
アンセルムは頷き、苦笑する。
「これは手厳しい。情けないが、お嬢さんの言う通りじゃわい」
「やい、爺い! お嬢さんじゃない! ちゃんとステファニー様と呼びなさい!」
「ほうほう! では、ステファニー様のお考えとやらをお聞きしようかのう」
「耳の穴かっぽじって良く聞いて! 戦いはまず士気が大事よ! 次に敵味方の正確な戦力分析と双方の比較、続いて有効な作戦立案と勝機を見極めた駆け引き、5と6が無くて最後は根性なのよっ!」
ステファニーの言う事は尤もである。
アンセルムは同意しながらも、納得しない様子だ。
「成る程……理屈じゃわい。だが口で言うだけなら容易い。ここに机はないが机上の空論ならいくらでも言えるだろうよ」
しかしやられたら、100倍返しがモットーのステファニー。
アンセルムの皮肉に対し、彼女の毒舌はますますエスカレートする。
「黙れ、くそ爺い! あんたこそ見かけ倒しの口だけじゃない! 良い、論より証拠。有言実行! あんたに言われずとも私は口先だけの奴が大嫌いなの! 見てなさいよ、早速、村民の士気向上の作戦をしっかり実行するからね!」
「ほう! それはありがたいが、一体どうするのじゃ?」
「エミリーから聞いたけど、あんたたちは村に閉じこもって怯えてるだけ、いわば籠城だけで守り一辺倒の専守防衛」
「その通りじゃのう」
「ふん! それじゃあ絶対に勝てないわ。援軍が見込めないこの状況じゃね」
毒舌でアンセルムを罵倒しているだけのように見えて、
ステファニーは冷静に状況を見極めていた。
アンセルムは少し驚いたようだ。
「ふうむ!」
「相手は大群、こっちは少数、その上、陰キャで士気が全くなしじゃあ、絶対に勝てないのっ! くそ爺い、分かったあ?」
「ふむ、良く分かった。で、ステファニー様の作戦はいかがかな?」
「攻撃は最大の防御よ! 私達が打って出る。村はあんたたち自身でしっかり守ってちょうだい!」
「戦うのはステファニー様達だけか? 儂ら村民は戦わんで良いのか?」
と、アンセルムが尋ねれば、ステファニーは首を横に振る。
「不要ね! あんた達が居ると却って足手まとい! 戦うのは私達だけで良い! 今から慌てて訓練しても泥縄でしょ?」
激高しているように見えて、戦局の分析は冷静に行う……
やはり……
ステファニーは凡庸ではない。
ランクAの超一流冒険者カルメンが見込んだ、大器の素質が開花しつつある。
アンセルムも何か、感じるモノがあったらしい。
大きく頷き、きっぱりと言い放つ。
「分かった! ではステファニー様。儂らは村の守りに専念。攻撃役たるあなた方への慰労休息と補給の後方支援に徹しよう」
「へぇ! 爺さんたら! ようやく分かって来たじゃない?」
「ふむ、プレッシャーをかけるようで悪いが、もしもステファニー様達が敗れれば、この村はもうお終いじゃろうて」
もしも、ステファニー達助っ人が敗れれば……
村民も死ぬ。
達観したようなアンセルムの物言いを聞き、
ステファニーは再び力強く首を横に振った。
「大丈夫! あんた達は助かる! 私達は絶対に負けない!」
「ふむ、期待しておりますぞ!」
「任せて! ……あ、そうだ! ひとつだけ爺さんにお願いがあるわ」
「お願い?」
「ええ、あんたの孫を借りるから」
「エミリーを?」
「何故なら、私達はここらの地形を含め、勝手が分からない。未知の土地で戦うには地元民の的確なアドバイスが必要なのよ」
「成る程」
「だけど覚悟しといて。下手すりゃ、あんたの孫は死ぬかもしれない。一応、守ってはやるけどね」
「ふうむ!」
話していて分かる。
ステファニーは安易な約束をしない。
だから却って信じる事が出来る。
アンセルムがそう思った時、
衝撃の発言が、ステファニーから飛び出す。
「アンタの孫はね、見ず知らずの男に、自分の身体を投げ出そうって決意してるのよ! いざとなりゃ、村を守る為に死ぬくらいの覚悟はしてるわ」
「エ、エミリー、お前!」
ステファニーの言葉で、アンセルムは全てを悟った。
孫が、エミリーが……
助っ人を連れて来る事が出来たのは、
とんでもなく大きな代償を払ったからだと。
考え込むアンセルムへ、エミリーは叫ぶ。
「村長! ……いえ、爺ちゃん! ステファニー様の仰る通りよっ!」
「…………」
「私達はこの戦いに勝つ! 絶対に勝つ! そして勝った後……私はここに居るディーノのお嫁さんになるのっ!」
「エミリー……」
「私はそう約束したのっ! 必ず守るのっ!」
村は静まり返っている。
気合がみなぎり、叫ぶエミリーを……
アンセルムだけではなく、村民一同が無言でじっと見つめていたのである。
いつもご愛読頂きありがとうございます。
※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。
宜しければ、下方にあるブックマーク及び、
☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。
東導号の各作品を宜しくお願い致します。
⛤『魔法女子学園の助っ人教師』
◎小説版第1巻~7巻
(ホビージャパン様HJノベルス)
大好評発売中!
◎コミカライズ版コミックス
(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)
☆最新刊『第3巻』発売決定!6月27日発売予定!※予約受付中!
第1巻~2巻も大好評発売中!
※月刊Gファンタジー大好評連載中《作画;藤本桜先生》
☆5月18日発売の月刊Gファンタジー6月号に最新話が掲載されました。
今回の掲載は『センターカラー』です。乞うご期待!
また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。
コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。
WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。
マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が好評連載中です。
毎週月曜日更新予定です。
お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。
最後に、連載中である
「帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者」
も宜しくお願い致します。




