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第82話「ステファニー様、襲来④」

⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)

☆最新刊『第3巻』発売決定しました! 6月27日発売予定!※予約受付中です!

何卒宜しくお願い致します。

 所変わって、ここは英雄亭……


 ディーノと女子4人……

 酒と料理を載せていたテーブルを蹴り上げられ……

 楽しくやっていたデートを台無しにされ、ニーナはおかんむりである。


 美少女が重厚なテーブルを軽々と蹴り上げる。

 非現実なシーンを目の当たりにして、吃驚している間に、

 ステファニーが、ディーノを速攻で連れ去ってしまった。


 なので、ニーナは残ったカルメンへ食ってかかる。


「ちょっと! 酷いじゃないですか?」


 カルメンはニーナと初対面だ。

 ユニフォームのメイド服を着ていないので、英雄亭の従業員だとは思わない。


「……お前は誰だ? ウチのメンバーと何をしている?」


「私はニーナ、この英雄亭の従業員です」


「は! 従業員が客と飯を食っているのか?」


「今はプライベートの時間です。それより理不尽じゃないですか? いきなり乱入して来てあの振る舞い、折角のデートが台無しです!」


 見上げるような巨躯のカルメンに対し、ニーナは全く臆していない。

 堂々とした態度で抗議した。


 しかしカルメンもニーナを完全に小娘扱いし、問題にしていない。


「ニーナとやら、お前は私の話を聞いていなかったのか? 婚約者が居る男とデート? 極めて不埒ふらちだ!」


「不埒? 馬鹿な事言わないでくださいっ! 貴女こそ、マドレーヌさん達の話を聞いていなかったのですか? ディーノさんはあの人とはもう無関係です!」


「無関係ではない! ディーノ・ジェラルディはステファニー様の婚約者、厳然とした事実だ」


 ニーナはもう何度、同じ話を聞いただろう……

 当事者であるディーノ本人へも、念入りに確かめた。

 だから当然、反論する。


「そんなの無効です。ディーノさん自身は認めていません」


「いや、ディーノが認めなくとも、ステファニー様が仰れば、それは事実となる。もしもカラスが白だと仰れば、それが事実となり、ルールともなるのだ」


 何という不合理なロジック。

 まるで、一方的且つ非道な政策で住民を苦しめるどこぞの専制君主である。


「そんな無茶な!」


「無茶ではない! それが事実であり、現実なのだ」


 ニーナの抗議を真っ向から否定した上で、カルメンが重々しく告げた。

 しかし!


「それは違うな、カルメン」


「な? お前は」


「辺境伯の小娘如きに何故、そう入れ込む、カルメン」


「…………」


「お前達クランのルール、男子禁制とやらを破ってまでもさ」


 苦笑しながら立っていた偉丈夫は……

 この店の主、コック服姿のダレン・バッカスである。


 騒ぎを聞きつけ、厨房から出て来たようだ。


 しかしカルメンは顔をしかめ、首を横に振った。


「黙れ! 引退した『もうろくじじい』が余計な口を出すな」


「いや、冒険者は引退したが、口はしっかり出させて貰う。何故なら俺はディーノとニーナの親代わりだ」


「何ぃ、親だと!」


「ああ、ふたりの親だ。それとお前の連れであるお嬢様が破壊したテーブル、酒、料理、全て弁償して貰おうか」


 しかしカルメンは、ダレンの申し入れを完全に無視する。


「……じじい、お前の最初の質問に答えてやろう」


「ほう!」


「ディーノとお前の親子関係など、笑止!」


「何? 笑止だと?」


「ああ、私にとってステファニー様は神だ。単なる主君を超えた称え敬うべき存在なのだ」


「はあ? 神?」


「そう、神だから許される。例え婚約者が居ようとな」


「……おい、カルメン」


「何だ?」


「お前、頭の中、大丈夫か? お花畑になって、ハチがぶんぶん中を飛んでるんじゃないのか?」


「馬鹿者! 私は正気だ!」


 一喝したカルメンを……

 相変わらずダレンは訝し気に見つめていた。


 暫し、沈黙が流れたが……

 先に口を開いたのは、カルメンである。 


「ふ! ぐだぐだ言っても、らちが明かん」


「はは、その通りだ、カルメン。では、もっとはっきり簡潔に言え」


「ふむ! 私がステファニー様を信奉するのは、あの方がまれに見る大器だからだ」


「稀に見る大器ねぇ……」


「間違いない! あの方の直観力、判断力は凄まじい。それと勘の良さ、引きの強さも人間離れしている」


「ふうん……」


「加えて膂力りょりょくに優れ、武道の才能も天才的なのだ」


「ほう、これ以上ないっていう褒めっぷりだ。ついでに押しの強さもあり過ぎるくらいだな」


「ああ、じじいの言う通り、押しの強さも加えておこう」


 きっぱり言い切るカルメンだが、

 対して、ダレンは首を傾げている。


「しかし、そこまで『大器』のお嬢様が、何故、身分違いなディーノをしつこく追いかけ回すんだ?」


 ダレンがそう言うと……


 傍らのニーナ、マドレーヌ、ジョルジエット、そしてタバサが……

 全く同意! という趣きで「ぶんぶん」と頷いた。

 

 上級貴族の令嬢が、何故平民のディーノを?

 「自分の婚約者だ」と偽ってまで?


 そう、誰もが感じる不可解さである。

 全員の注目が、原因を知るであろうカルメンへと集まる。


 しかし、カルメンは口ごもっている。

 いつもの歯切れの良さが嘘みたいに……


「それは……」


「それは?」


「謎だ!」


「謎?」


「私から見たら、『しなびた野菜』のような覇気はきのないディーノへ、どうしてそこまで執着するのか分からない。ステファニー様のお気持ちが全く分からないのだ!」


「ちょっと! 『しなびた野菜』って何ですか! ディーノさんに失礼です!」


 と、再び怒ったニーナが抗議した、その時。


「本当に失礼だ。相変わらず口が悪いな、カルメン」


 英雄亭の入り口にふたつの人影があった。

 ひとりは男、ひとりは女のようだ。


 そう!

 「ずるずる」引きずられて行ったディーノが、引きずったステファニーと共に、

 ちょうど戻って来たのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。


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