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第80話「ステファニー様、襲来②」

⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)

☆最新刊『第3巻』発売決定しました! 6月27日発売予定!※予約受付中です!

何卒宜しくお願い致します。

 再会した時は、吃驚し、少し臆しもしたが……

 ディーノは徐々に落ち着きを取り戻しつつあった。


 けして豊富とはいえないが、積み重ねた修羅場での戦闘経験が、

 ディーノへ大いに勇気を与えていたのだ。


 衆人環視の中、注目を浴びながら……

 ステファニーにより襟首をつかまれ、「ずるずる」引きずられるディーノは、

 軽く息を吐く。

 

 見上げれば、空は真っ青、雲ひとつない快晴。

 そんなとりとめもない事を考えると、

 今、自分の置かれた状況が、却って可笑しくなって来る。


 それにしても……

 ステファニーは、自分をどこへ連れて行こうというのだろう。


 ひきずられながら、改めて周囲を見回したディーノ。

 王都で生まれ育ったディーノは……

 道と周囲を見れば、大体、現在位置が分かる。


 この道は……そうか!

 でも……まさか!?


 とディーノが気付いた時。


 リンゴーン!


 午後1時を報せる鐘が、重々しく鳴り響いた。

 苦しい息の下、ディーノは尋ねる。


「ステファニー様」


「何よ」


「創世神教会へ行くのですか?」


「そう、私とあんたは結婚するの」


 教会へ行き、強引に式を挙げる。

 そこまでステファニーは段取りを組んでいた。


 手紙で「婚約者だ」と、のたまうくらいのレベルならと、ディーノは軽く見ていた。

 はっきり言って冗談だと思っていたのに、とても意外である。


「どうしてです?」


「私が決めたから」


 簡潔明瞭な答えである。

 これ以上、余計な口をはさむなという『命令の感情』が伝わって来る。


「……俺の意思は関係ないのですか?」


「関係ない。私はあんたと結婚したいからするの、ただそれだけ」


「それでは、愛のない結婚生活になると思いますが……」


「いいえ、愛はあるわ。私がいっぱい持ってる」


 ……昔から、ず~っと変わらない。

 けして、ぶれない、この人は……

 そう、ディーノは思う。


 しかしひ弱な少年だった昔ならいざ知らず、

 冒険者として一人前となった今のディーノなら、正面切って反論出来る。


「そういう一方的な愛って困るし、第一、貴女が何故俺を好きなのか、とても不思議なのですが」


「もう! いちいち……うるさいわね」


 ステファニーは、ひきずっていたディーノを無理やり立たせると、

 ぱん! 

 と一発、平手で頬を張った。


「いて!」


「ぶたれるような事を、ぐちぐちと言うからよ。グーパンでない分、ありがたく思いなさい」


「はは、確かに……ありがとうございます」


「言っておくわ。私の愛に対して、あんたに拒否権はない。それとあんたを好きなのは理屈じゃないの、自分の感情に基づいて、素直に行動してるだけ、以上」


 ステファニーは回りくどい言い方はしない。

 無駄を嫌う。

 改めて、彼女の考え方、価値観を理解出来た。


「成る程……理解はしました」


「分かった? じゃあ、ガタガタ言ってないでさっさと教会へいくわよ。司祭様には頼んであるから、すぐ結婚出来るわ」


 ステファニーは再び、ぐいっと襟を掴んで引っ張ったが……

 ディーノは踏ん張って、連行を拒否した。

 そして言う。


「残念です、ステファニー様」


「何が残念なのよ?」


「ステファニー様のなさったご手配が、一切、無駄になるからです」


「何よ、それ! 何故無駄になるのよ?」


「はい、俺とステファニー様は結婚などしないからです」


「何故よ!」


「何故って……」


 ディーノが少し口ごもると、

 ステファニーは、すかさず、きっぱりと言い放つ。


「あんたが置き手紙に書いた、理想の『想い人』を探してるって奴?」


「は、はあ、まあそうです」


「じゃあ、問題は全く無し! 理想の想い人はこの私! あんたの幼馴染み、誉れ高きステファニー・オベールでしょ!」


「それはちょっと……」


「何が、それはちょっとよ! のぼせ上ったあんたが取り巻きにしてた女どもより、私の方がず~っと可愛いじゃない?」


「取り巻きって、あのね」


 ディーノが英雄亭で女子達に囲まれている姿を思い出したのだろう。

 

 ステファニーは、ディーノへ迫る!

 迫り来る!

 自信に満ちあふれた己を、大きく大きく誇示するように。


「どうなの! 私は上級貴族であいつらは平民。身分は遥かに上だし、顔立ちも段違いに綺麗でしょ? 違うの?」


 対して、ディーノは淡々と返す。

 ステファニーの美しさをしっかりと認めながら。


「比べるのはどうかと思いますけど、確かにステファニー様はお美しいと思いますよ」


「でしょ! じゃあ!」


 と、なおも迫るステファニーへ、ディーノから想定外の言葉が投げかけられる。


「でも……ときめかないんですよ」


「はあ? ときめかない? 何に!」 


「申しわけないですが、ステファニー様にです」


 ディーノが決定的な『禁句』で答えた瞬間!


 どぐわっしゃああ!!


 拳をグーにした、ステファニー渾身のパンチが、ディーノの顔面にさく裂していた。


 まともに顔面を殴られたディーノは、呆気なく吹っ飛んで、民家の壁に叩きつけられた。


 周囲の通行人がびっくりしてディーノとステファニー、双方を見つめている。

 喧嘩だ!

 と叫び、衛兵を呼びに行く者も居る。


 しかし、ステファニーは動じたりはしていない。

 威風堂々という文字がぴったりな態度で、鼻を鳴らした。


「ふん、口が過ぎるわ。しばらく会わないうちに、こいつ、随分生意気になったじゃない」


 しかし、「ぴくり」とも動かないディーノを見て、美しい眉をひそめる。


「ちょっと力が入り過ぎたわ。骨が何本か、折れたかしら?」


 だが……

 ディーノはむくりと起き上がった。


 首を左右に軽く振り、汚れた服の埃を払う。


「相変わらず、無茶しますね、ステファニー様」


 にっこり笑ったディーノの顔は、まるで何事もなかったかのように、

 晴れやかだったのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

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