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第66話「復讐④」

 衛兵隊隊長の騎士爵ギヨーム・アンペールと法衣ローブをまとった少年の従者は、密談していた愚連隊鉄爪団(タロン)首領ボス、ブリアック・バズレールに殴り倒され、意識を失ってしまった。


 従者はともかく、歴戦の戦士であるギヨームがあっさりのされたのは、油断していたからに他ならない。


 まさかブリアックが反逆するなど露ほども思っていなかった。

 そういう事だ。


「ふっ、ちょろいぜ」


 ふたりを「のした」ブリアックは不敵に笑うと、部屋にある両開きの衣裳入れを開いた。

 すると中から、ひとりの少年が現れ、床へ軽く飛び降りた。

 衣裳入れに潜んでいた少年は……ディーノであった。


 と、なればブリアックの正体も知れて来る。

 当然ながら、このブリアックは本物ではない。

 加えて、魔法による心と心の会話、念話まで使って来る。


『どうだい、ディーノ。俺の演技は?』


 胸を張り、誇らしげなブリアック。

 だが、ディーノはその名では呼ばない。


『ああ、ジャン、大した名優ぶりだ』


『へへへ』


 ディーノに褒められたブリアック、否、ジャンは再び面白そうに笑った。

 そう、ジャンが得意の変身を使ってブリアックに化け、宿に来た本物と入れ替わったのである。

 そして入れ替わった後に、ギヨームが来るのを待ち受けていたのだ。

ちなみに本物は宿の物置へ放り込んである。


『ディーノ。さっさとギヨームの心を読心魔法で読み、いろいろ情報収集してくれや』


 ジャンに促されたディーノは短く返事を戻す。


『了解!』


 とりあえずジャンの仕事はひと段落。

 次はディーノが力を発揮する番である。


 ロシュフォール伯爵の配下であるギヨームが持つ様々な情報を、

 彼の心から一切合切頂戴するのだ。


 ディーノは魔法使い特有の呼吸法で体内魔力を高め、精神集中すると、

 早速、読心魔法を発動させたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 1時間後……

 従者を連れたギヨーム・アンペールは、ロシュフォール伯爵邸へ赴いていた。


 ギヨームの自宅同様、この屋敷の内外にも多くの護衛が詰めていた。

 騎士と衛兵の混成部隊で、選り抜きの戦士達である。

 伯爵の親衛隊という趣旨であろう。

 主に何かあれば、命も投げ出すという気迫がみなぎっていた。


 そんな中を……

 家令に先導され、ギヨームと従者は歩いて行く。


 やがて……

 ギヨームは屋敷の最奥、伯爵の書斎に通される。

 書斎では主ウスターシュが不機嫌な面持ちで待っていた。


 案内した家令が従者と共に下がり、ギヨームだけになると、

 ウスターシュはもどかしそうに言葉を吐く。


「どうした? 遅かったな、ギヨーム」


「は、閣下。少し手間取りまして……」


「手間取った? あんな簡単な仕事がか?」


 ギヨームの言葉を聞いたウスターシュはますます険しい顔付きとなった。

 無理もない。

 冒険者になったばかりの少年を10人がかりで確保し、拷問する。

 もしもアルドワンに関して何か知っていれば白状させる。

 

 そしてあとくされの無いように「始末しろ」と命じてあった。

 相手はひとりだし、喧嘩慣れした鉄爪団が人数を頼んで襲えば造作もないと、

 ウスターシュは考えていたからだ。


「どういう事だ? ギヨーム、説明せい」


 ウスターシュは、先ほどギヨームがブリアックに問い質したのと同じように言葉を発した。

 対して、ギヨームも、


「は! 閣下、実は……」


 ブリアックがしたのと全く同じ説明を行う。


 ずっと監視していた、アルドワン邸を探索した少年冒険者がいきなり王都を旅立った事。

 鉄爪団に命じ、ブリアック達に密かに少年を追跡させ、渓谷で取り囲んで襲い、確保しようとした事。

 世にも怖ろしい獣の声が響き、追跡していたブリアック達が気を失った事。

 気が付けば少年の姿は消えており、怯える部下達の統制も全くきかない様子から、ブリアック達はやむなく撤退し、王都へ帰還した事。


 このように説明を受けても……

 ウスターシュの機嫌は全く直る様子がなかった。


「使えんな、あいつらは……」


「は! ……も、申し訳ありません」


 任務を完遂出来なかったブリアックの代わりに謝罪したギヨームであったが、

 別にかばったわけではないようだ。

 その証拠に、ギヨームは非情な言葉を放つ。


「閣下、ブリアック……始末しますか?」


「うむ、お前に任せる。いっそのこと鉄爪団全員を消せ。……理由は適当にでっちあげれば良い」


「御意!」


「ギヨーム、ついでに奴らの後釜あとがまも探しておけ」


「は!」


「愚連隊など世間の屑……使い捨てで良い。……金さえ出せば代わりはいくらでもおる」


「かしこまりました」


「よし、さっさと行け」


「は!」


 しかし……

 何故かギヨームは辞去しなかった。

 無言で、ウスターシュをじっと見つめている。


 れたウスターシュの声が荒くなる。


「何故、さっさと行かぬ! 俺の命令が聞けぬのか?」


 とがめるウスターシュに対し、ギヨームはきっぱりと言い放つ。


「ああ、従わんね。これ以上、あんたの悪事の片棒は担げません」


 言葉遣いがガラリと変わったギヨームにウスターシュは憤る。


「何ぃ!」


 にらみつけるウスターシュだが、ギヨームは全く臆さない。


「屑と言った愚連隊、確かに正解だ。しかし伯爵、あんたも同じく人間の屑さ」


「ぬおおお!」


「まあまあ冷静に、実力もない癖に、貴族の生まれだけをかさに着たあんたの代わりだって、いくらでも居るって事ですよ」


「ギヨーム、貴様ぁ!」


「ははは、悪いが俺はギヨームって名前じゃないんでね、だから返事はしないよ」


「……ぬうう、何者だ? 貴様ぁ!」


「お前が殺した者、誰かの亡霊だと言ったら……どうする?」


「な、なに~!?」


 不敵に笑うギヨームを前にして……

 ウスターシュは音がはっきり聞こえるくらい強く歯ぎしりしていたのである。

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