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第62話「罠という名の旅⑥」

 愚連隊鉄爪団(タロン)の首領ブリアック・バズレールに見せた夢の中から帰還したディーノは……

 魔獣兄弟ケルベロス、オルトロスと共に少し離れた繁みに身を潜めている。


 ケルベロス達の咆哮で気絶したブリアック達――鉄爪団タロン一味はまだ意識を取り戻していなかった。


 ディーノがケルベロスに聞けば、ブリアック達が目覚めるのも、もうまもなくだという。

 咆哮ほうこう加減かげんしたから、後10分ほどで起き上がるのではないかと。


 ケルベロスの言った通りであった。

 10分経つ寸前に、ブリアック達は目を覚ました。


 ディーノが見やれば……

 ブリアックは先ほどディーノが見せた『悪夢』のせいか、ひどく怯えていた。

 

 これから相手がどう動くのか、ディーノはブリアック達を観察する。


 暫し経つと……

 ブリアックが、想い出したようにディーノが居た場所を見やった。

 しかし、誰も居ないのを見て、まだ「ぼうっ」としている子分達へ怒鳴り散らし、発破をかけ始めた。

 何か指示を出しているようだ。


 再び自分を襲うにせよ、態勢を立て直す為に、とりあえずは撤収する、

 ディーノはそう読んでいた。


 その『読み』はズバリ当たった。

 ブリアック達は慌てて身支度みじたくを整え、急ぎ撤収して行ったのである。

 とりあえず狙われる心配はない。


 ブリアック達が去ったのを見届けると、ディーノ達はゆっくりと身を隠していた茂みから出た。

 

 しかしディーノはブリアック達を放っておかず、王都まで追うと決めていた。

 

 まずはブリアック達のアジトを突き止め、逆にこちらから反撃する為である。

 悪事の証拠を掴んだら、最終的には背後に居る黒幕ロシュフォール伯爵へアプローチし、アルドワンの仇を討つつもりだ。


 ブリアック達の追跡役はケルベロスである。

 相手に気付かれぬよう、少し距離を取って後を追うのだ。

 ブリアック達が馬で移動する為、さすがにディーノ単独では追い切れない。


『よし、では奴らを尾け、王都でバカ猫と合流する』


『え? バカ猫? ジャンをそう呼んでるの?』


『いや、呼んでない。あいつは実力がない癖に、プライドだけは山のように高い。いちいち怒って面倒だからな』


『まあ、仲良くしてくれよ』


『ほどほどにやるわい。もしオルトロスがバカ猫を知っていれば、追跡役を頼むところだが、仕方がない。おい、オルトロス、ディーノをしっかり守れよ』


『分かってるって、兄貴こそ、しっかりって来いや』


『な! 字が違うだろ、このたわけが!』


 そんなこんなで、ケルベロスは出発し、

 後にはディーノとオルトロスが残された。


『あはは、うるさい兄貴は逝っちまった、せいせいしたぜ』


『おいおい、まだ字が間違ってるぞ』


『まあ、大勢に影響はないだろ。アホ兄貴にもたまには働いて貰わないと』


『……お前達兄弟は相変わらずだな。……でも助かったよ、ありがとう』


 今回も上手く行ったのはこの魔獣兄弟のお陰だ。

 ディーノは深く頭を下げた。


 オルトロスはすぐに反応しなかった。

 暫し経ってから、黙って背を寄せた。


『…………乗りなよ、戦友』


『馬代わりには出来ない』


『兄貴だって、お前を乗せただろ? 俺は負けたくねぇ』


『でもさ、悪いが、俺、最近太ったぜ……重いよ』


『馬鹿な事言ってるんじゃねぇ、ラブリーな第一形態ならともかく凛々しい第二形態だぜ! ほそっちぃお前を乗せるのなんか楽勝だ』


『おい! ちょっと待て! ラブリーな第一形態?』


『だろうが!』


『……まあ、そういう事にしておこう』


『こら! ちゃんと同意しろや!』


 という他愛もないやりとりはあったが……

 ディーノとオルトロスも、ケルベロスを追い、続いて出発したのである。 


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ディーノを背に乗せたオルトロスは素晴らしい速度で走りに走る。


『なあ、ディーノ』


『ん、何だい? オルトロス』


『俺と兄貴はどちらが速い?』


『ノーコメント』


『はっ、兄貴から聞いてた通りだ。敢えて角を立てたくないか? とんだ安全策野郎だ、臆病者め』


 オルトロスは口汚く罵るが、本意ではない。

 その証拠に、言葉に悪意がこもっていない。

 憎しみの波動も感じない。

 逆に、ディーノに対する畏敬の念さえ、伝わって来るのだ。


『おい、ディーノ、知ってるか、その指輪の真の力をよ』


『ああ、ケルベロスから聞いたよ』


『じゃあよ、指輪の元の持ち主ルイ・サレオンはよ、その指輪の力を使って72柱の大悪魔と数多あまたの魔族を従えたという事は知ってるな』


『うん、認識はしている。でも俺はまだ指輪に力を認められていないようだから、ルイ・サレオンのようには行かないな』


 ディーノが自嘲気味に言うと、オルトロスは同意する。

 否、同意どころか強調だ。


『そうだな……お前は絶対、ルイ・サレオンには、なれねぇ』


 オルトロスから厳しい事を言われたが、ディーノは腹が立たなかった。

 その通りだと思うからだ。


『あはは、自覚してるよ。俺は所詮凡人だもの』


 とディーノは自嘲気味に笑ったが……

 何故か、オルトロスが否定する。


『違う! 俺が言ってるのはそういう意味じゃねぇ!』


『え?』


『お前はルイ・サレオンとは違う。……彼は指輪の力で魔族を押さえつけ、奴隷の如く絶対服従を強いたというぜ』


『…………』


『だが、お前は違うんだ! 指輪に頼らず、誠意と尊重、真心で俺達魔族と接してくれている』


『…………』


『俺は兄貴からお前の話を聞いていたが、珍しく同意見だ』


『…………』


『今回の幽霊の件で俺は更に確信した。もしもお前が指輪に全面的に認められたとしても、お前自身は全く変わらないとな』


『…………』


『うわ! がらにもない事言っちまった。……というわけで、今後とも頼むぜ、戦友』


『……了解!』


 短く言葉を戻しながら、ディーノは嬉しかった。

 オルトロスだけではなく……

 戦友全員との絆がまた深くなった事を感じたからである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


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