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第43話「山賊退治⑨」

 開け放たれた両扉の向こう側……

 ふたりの『むくつけき中年男』が立っていた。


 ふたりとも酷薄こくはくそうな性格がはっきりと顔に出ており、

 はっきり言って凶相である。

 ディーノを見る目がねめつけるように吊り上がり、口元は意地悪そうに歪んでいる。


 まず声をかけて来たのは、やはり配下の男であった。


「おい、どうしたガキ」


「は、はい! 俺ひとり旅で……街道を歩いていたんです。歩き疲れたんで森へ入ってひと休憩していたら、いきなり怖ろしい化け物が……」


「おお、そうか、で怪物はどうした?」


「いや、後ろを振り向かずに必死で走ったんで……どうなったのか」


「ふむふむ……それで?」


「は、はい! 走っ走って、気が付いたらこの砦が見えたんで駆け込みました。だ、だけど!  ひ、人が、いっぱい倒れていて……怖くなってこの塔に逃げ込みました。そしてずっと昇って行ったら、この部屋の前でおじさん達の声が聞こえて……」


「それで助けを求めたってわけか……成る程……ボス、筋は通ってますぜ」


「だな!」


 納得したらしく顔を見合わせ頷き合う配下とバスチアン。

 更にディーノに聞こえないよう、ひそひそ話を始めた。


 しかしディーノは魔法指輪の力で聴力が大幅アップしている。

 少し気合をこめたら、バスチアン達の会話が耳へ飛び込んで来た。

 同時に師ロラン直伝、読心魔法も発動する。


「ボス、このガキを使って、怪物がまだ居るか居ないか確かめましょうや」


 この馬鹿ボスめ! 俺が偵察に出されてお前の代わりに喰われるのなんて、

 ま~っぴらごめんだよ!

 見てろよ!

 今にチャンスをつかんで、てめぇを絶対にぶっ殺す。

 こき使われたうらみをバッチリ晴らしてやる!

 こいつが死ねば、代わって俺がボスだ!


「だな! このガキなら喰われても全然心が痛まない。俺達だけ助かりゃ良いんだ」


 あはは、こいつホントに馬鹿な奴だ。偉大な首領の俺だけ助かりゃ良いんだよ。

 てめぇは ガキと一緒で所詮はとかげのしっぽ。

 俺の為にいさぎよく死んでくれや。

 手下の替えは、金さえ出せばいくらでも居る!


 バスチアン達の肉声会話と共に、邪な心の声も聞こえて来た。

 両方を聞いたディーノは、思わずため息を吐きそうになる。

 自分に対する奴らの冷酷な計画……

 そして人間の薄っぺらい建前と醜い本音を知って。


 依頼の概要と共にネリーからは聞いていた。

 捕まえた旅人に対するバスチアン達の悪逆非道ぶりを。

 男は容赦なく殺し、女はなぶって犯し、子供は遠国へ奴隷として売り払っていると。


 こんなやつら、裁判を受けさせる権利もない!

 この場で始末したいくらいだ。


 と、ディーノはいきどおったが……

 やはりと思い直す。


 俺は依頼を受けた冒険者。

 仕事は「きちっ」とやらなきゃ……と。


 ディーノには分かる。

 

 怒り狂ったステファニーの恐ろしさに比べれば……

 本気となったミンミの持つ凄みに比べれば……

 こんな奴らは全然怖くないと。


 ディーノは「にこっ」と笑い、問う。


「ねぇ、おじさん達、何、内緒話してるの?」


「い、いや、な、何でもねぇ。ですよね、ボス」

「あ、ああ、そうだな」


 と、ここでガラリとディーノの表情が変わった。

 口調もひどく冷淡となる。


「あはは、そろそろ……お互い本音で話そうよ」


「何!?」

「何が本音だ、このクソガキ!」


「残念ながら、おじさん達の運命はもう決まってる。裁きを受ける時が来たんだよ」


「は? 裁き?」

「このクソガキめ! 何、寝言を言ってるんだ?」


「さあ、かかって来い。ひとりでも、ふたり一緒でも全然構わないよ」


「野郎! ガキだと思って、下手したてに出てりゃ、良い気になりゃがって!」


「……生意気だ。……殺れ! ……気が変わった」


「へい! ボス! うおりゃああああっ!」


 バスチアンから命じられ、雄叫びをあげた配下が拳をふりあげ、

 殴り倒そうとディーノへ襲いかかって来た。


 ばし!

 乾いた軽い音がした。


 何と!

 ディーノは左の掌で配下の拳を軽く受け止めていた。


「……遅すぎる!」


「な!?」


「攻撃が遅すぎる……そう言ってんだよ」


 ディーノは空いていた右拳を、身体が伸び切った配下のボディへ叩き込む。


 どぐわっ!!

「ぎゃう!」


 肉を打つ重い音と共に、短い悲鳴をあげた配下は、

 先日ニーナに絡んでぶっとばした冒険者のように、

 くるくるとあっさり宙に舞った。

 「ごろごろ」と転がり、そのまま動かなくなる。


「安心しろ、ちゃんと手加減したよ。……殺しちゃいねぇさ」


 気絶した配下へ全く同じセリフを吐いたディーノは、

 二ッと笑い、左手を挙げ、人差し指を「くいっ」と前に動かした。

 誰もが知る挑発のポーズだ。


 一方、バスチアンは頼みとしていた配下があっさりのされ、ひどく驚いている。


「ガキ! き、貴様、何者だ!」


 叫ぶと腰から提げていた剣を抜き放つ。

 しかしディーノは臆せず、高らかに言い放つ。


「覚悟しろ、バスチアン・アジェ! 俺はディーノ・ジェラルディ。お前を捕える為、ギルドに雇われた冒険者だ!」


「くう! ク、クソガキが~~!!!」


 剣を振りかざし、ディーノ向かって突っ込んで来たバスチアンではあったが……

 ディーノは素早く体をかわし、剣の切っ先を避けた。

 そして!


 どぐわっしゃ!!!


 あっさり攻撃を躱され、驚くバスチアンの顔面へ、

 鮮やかなカウンターで、怒りの拳を打ち込んでいたのである。

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