第３２５話「混沌のフロア⑫」
東導 号 書籍化作品
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ガルドルド帝国の元枢機卿アルフォンソ・バンディニは、最後の最後でディーノに邂逅し、満足して逝くと言い放った。
そして、『持てる力』を全てディーノへ託すと宣言したのだ。
『ディーノ、良いか』
『はい、枢機卿様』
『うむ！ 私の伝えたい志はもう理解しているな。ブレーズを始め、君に託した多くの者達と全く同じなのだよ』
『ええ、枢機卿様の放つ心の波動で、俺には分かっております』
『ふむ、さすが導き継ぐ者だ。とは言っても、遺言だからな、念の為、伝えておく……』
『はい、お聞き致します』
『うむ！ 以前の私なら、世界の人々に尽くし、平和をもたらすなど二の次。故国ガルドルド帝国のみの復興を望んだであろう』
『………………』
『しかし、あの大破壊で数多の帝国民が死に、わずかに生き残った者達も世界中へ散らばった。そして気が遠くなるほど、長き時が流れた……』
『………………』
『結果、今や純粋な血筋たるガルドルドの民は、この地上に残ってはおらぬ』
『………………』
『ブレーズの子孫を含め、他国人と混じり合い、ガルドルドの子孫達は、その面影を風貌のどこかに伝えるのみであろう』
『………………』
『となれば、私が故国再興にこだわる意味はない』
『………………』
『ブレーズに比べて、私の器の小ささを露見した上、まわりくどい言い方をして済まない。だが、これは自身を納得させる為に必要なロジックなのだ』
『………………』
『という事で、ブレーズと私の遺志は全く同じという事になる。私の託す奥義をガルドルドの忘れ形見たる子孫達を含め、この世界に住まう者達の役に立ててくれ』
『………………』
『随分と前置きが長くなった……さて、本題へ戻ろう。私が君のこれからの旅に、大いに役立つ魔法を教える』
『お願いします』
『ディーノ、君が放つ強き魔力で私には分かる』
『………………』
『君はブレーズの奥義、更に精霊の大いなる加護も受け、攻撃の技には長けておる。読心、召喚の魔法にも優れておる。だから私が特に得手とする防御、治癒、そして葬送、３つの魔法を託そう』
『防御、治癒、葬送の３つ……ですか！』
念の為、補足しよう。
防御魔法とは心身を物理、魔法の両攻撃から守る魔法。
治癒魔法とは、心身を癒し、体力、魔力等を回復する魔法。
そして葬送魔法とは、死により、肉体から切り離された魂を鎮め、弔い、天へ送る魔法。
ちなみにこの葬送魔法が、実体のなき亡霊のような不死者にも、対抗可能な魔法なのである。
『うむ、不死王ノーライフキングとなってからは、それまで得手たる３つの魔法が、全く不要となってしまった……皮肉なものだ、ははは……』
自嘲気味に笑うアルフォンソだが、ディーノはスルーし、アルフォンソを気遣う。
『枢機卿様、その３つのは魔法を託して頂ければ、俺にとって大いに助かりますよ』
『おお！ ディーノよ！ 私の魔法が君の旅において、大きな助けとなる、そう言って貰えると嬉しいものだ……』
『はいっ！ 枢機卿様の仰る通りですっ！』
『うむ、良き返事だ。では、我が心をさらそう！ 君の行使する読心魔法で、私の心に刻まれた、奥義の極意を読むが良いっ！ そして、君の心に深く！ しっかりと！刻み込めぇっ！』
『了解ですっ！ 行きますよっ！ 枢機卿様、準備は宜しいですかっ！』
『うむ！ いつでも来いっ！』
アルフォンソから促され、ディーノはロラン直伝の読心魔法を発動させた。
魔力が融合し、ふたりの身体が、眩く輝く白光に包まれた。
その瞬間！
アルフォンソの心のうちが、３つの魔法の奥義、その根幹がディーノの心へ刻まれた。
例えが、妥当ではないかもしれない。
しかし、ディーノには、確かに『手応え』があった。
『い、今！ 受け取りましたっ！ 枢機卿様のっ！ 防御、治癒、そして葬送の魔法をっ！』
『おお、ディーノよっ！ 君に確かに託したぞっ！』
ディーノが、アルフォンソから手解きを受けた治癒魔法は5種。
治癒、回復、全快、慈悲、そして奇跡の５つである。
軽い症状、負傷の手当てを行う治癒。
治癒の数倍の効果の回復。
全快は、重い病気や怪我を治療。
体力も満タンに。
慈悲は身体の欠損さえも修復してしまう。
そして、最後の奇跡は死者まで復活させるという禁呪である。
アルフォンソは、さすがに奇跡まで極めてはいない。
しかし発動の手順までは習得していた。
「自分とは器が違う！」と惚れ込んだディーノであれば『奇跡』の行使さえも可能にする。
そんな期待の気持ちまで伝わって来た。
アルフォンソの前で、早速試してみよう。
実験台は、先ほどアルフォンソの声で麻痺させられた、フェン、ケルベロス、オルトロスの戦友3人である。
『全快！』
無詠唱に近いディーノの発動。
極めて短い言霊が念話で詠唱されると、戦友3人は白光に包まれた。
治癒の高位魔法『全快』の効果はすぐに表れた。
うおん！
『おお、身体が動くぜっ！』
『ディーノ！ サンキュ！』
あっという間に呪縛は解け、3人の戦友は見事に復活したのである。
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最後に、連載中である
「帰る故郷はスローライフな異世界！レベル99のふるさと勇者」《連載再開！》
「ぜひ！ウチへ来てください！好条件提示！超ダークサイドなパワハラ商会から、超ライトサイドな魔法女子学園に転職した、いずれ最強となる賢者のお話」
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