第318話「混沌のフロア⑤」
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どのような敵が出現するのか、全く読めない混沌のフロア……
96階層へ降りたディーノ達一行は、更に進んで行く。
混沌のフロアにおいては、ボス級の魔物との戦闘はともかく……
まずは、レアな中身確定の宝箱を見つけ、ガンガン開放する。
それがランクA冒険者ウッラ、パウラのリュリュ姉妹がこの深い下層まで来た大きな目的のひとつである。
ディーノ達は既に宝箱を3つ開放していた。
最初に見つけたのは回復系の魔法杖。
回復と治癒の強力な魔法を言霊なしで使える逸品だ。
次に猛毒や強力な麻痺攻撃をほぼ防ぐ効果のある遮断の指輪、そして体力吸収が付呪された銀製の魔法剣という超レア宝物を手にしている。
ここまでサクサクお宝をゲット出来たのは、やはりシーフたるウッラの能力が大きい。
彼女は己の才能に絶対の自信を持っていた。
まず、混沌のフロアにおける宝箱の設置場所をほぼ完璧に記憶している。
その為、最も効率的な探索ルートへ一行を導く事が可能なのだ。
更に仕掛けられた怖ろしい罠の種類を瞬時に特定し解除、そして複雑な構造の魔法鍵をあまり苦にせずに開錠している。
「ウッラさん、パウラさん」
「何だ? ディーノ」
「ディーノ君、何かある?」
「ゲットしたお宝は、地上へ帰還した後に売るんですよね?」
「ああ、ぜひキープしたいというモノ以外は、売って金に換える。私はそうしてこのわがまま女を養って来た」
「姉さん、何がわがまま女よ。その言葉、姉さんへそっくり返すから」
「あの、もしも俺が欲しいと思ったお宝があった場合どうなります?」
「ああ、ディーノなら特別サービスだ。上代の2割引きで売ってやる!」
「わあ! 上代のそれも2割引きぽっちって姉さん法外&極悪けち! ディーノ君にもゲットしたお宝について1/3の権利はあるわ。3つゲットしたから好きなものをひとつ無償であげても良いじゃない」
「甘い! ディーノ同様、お前も砂糖のように甘いぞ、パウラ!」
「何よ。私のどこが甘いのよ、姉さん」
「身内といえど、金に関してはきっちりしなければいかん。大事な事だぞ」
「あら、姉さん、きっちりなんて、そんな事言って良いの?」
「どういう意味だ?」
「私ね、回復ポーションとかテントとか、その他もろもろ、ディーノ君がこれまで立て替えてくれた分、ちゃんと憶えているから。後で全部姉さんへ、きっちり請求するわ」
「はあ!? きっちり請求だと!? パ、パウラ、馬鹿! この裏切者!」
「裏切っていないわ。姉さんの言葉を、きっちり! 履行しているだけよ」
「何言ってる? きっちりを姉妹同士で争ってどうする?」
「華麗にスルー&あと、ひとつ言っとくわ。姉さん」
「な、何を言うというんだ?」
「護衛も一切やめちゃうから。姉さんは、ぼっちでお宝ゲットしてね。私とディーノ君は先へ行くから」
「おいおいっ! 私をぼっちにするな! 護衛役が義務を放棄するとはどういう事だっ!」
「義務を遂行しているから権利を主張しているだけよ。無体な搾取は私が許さないわ」
このようなパウラのフォローもあり……
ディーノは、無事お宝1/3の権利をゲットしたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
更にディーノ達は先へ進む。
混沌のフロアは文字通り敵の出現パターンにセオリーがない。
しかし、宝箱の位置だけは変わっていないようだ。
ほぼウッラの記憶通りに配置されていた。
但し、宝箱に近付けば守護者のように必ず敵が出現した。
メタルゴーレムかと思えば、中型のドラゴン、巨人族、
そうした難敵どもと戦い、退けたディーノ達ではあったが……
遂に!
もっとヤバイ敵が現れた。
不死者の中でも、
ヴァンパイアの始祖と並ぶべき強者が現れたのである。
「おい! ヤバイぞ! 急いで一時撤退だ」
「ウッラさん、急いで一時撤退って、そこまでヤバイっすか? 俺もデカい魔力の気配を感じます。何か不死者のようですね」
「姉さん、どうしたの?」
「うむ! 私は特に不死者の気配察知は得意なのだ。間違いない! コイツは不死者の眷属どもを連れたノーライフキングだぞ」
「え? ノーライフキングっすか?」
「うそ? 姉さん、ホント? マジ? そんな奴、混沌のフロアといえど滅多に現れないじゃない」
「いや、パウラ。ホントにホントでマジだ。こんなヤバイ事ふざけるわけがない!」
ノーライフキング……
別の名を不死王ともいう。
ある学者の説では、ヴァンパイアの始祖以上に不死者の中で最強の存在だと言われている。
高レベルの術者が、自ら望んで不死者になったという説もある。
人間が干からびた幽鬼のような、もしくは死神を思わせる出で立ちをしており、魔法に対し強力な耐性を誇る。
数多の不死者を配下としており、ノーライフキングが率いる不死者の軍団は、怖れを知らぬ死の軍団として恐れられている。
「ノーライフキングめ、ほとんど気配を消していやがる。私かディーノじゃなければ、存在を察知出来ぬところだ」
「まあ、普通の人ならば感知は無理かもね」
「でも、ウッラさんとパウラさんは不死者を好んで狩るのでは?」
「ああ、私達は不死者を狩る事を特に得意としている。但し! 全く勝ち目の戦いは、例外を除いては行わんのだ」
「ええ、例外以外はね」
「例外?」
「……今は言えん。それよりもノーライフキングとの戦いは避ける」
「ええ、まずは撤退しましょう」
「じゃあ、ウッラさん、パウラさん。これ置いて行くんすか?」
ディーノが指示したのは、先ほどウッラが見つけた宝箱である。
96階層へ降りて、初めて見つけた宝箱であり、守護者がノーライフキングであれば相当のレアお宝が期待出来る。
いつもは異様にお宝に執着するウッラではあったが、
あっさりと首を横へ振った。
「馬鹿者! 命あっての物種だ。奴は殆どの魔法を無効化し、逆に高位の冷気魔法を使う。パウラの水属性魔法が全く通じず、物理攻撃にも強い。弱点が明確なヴァンパイアより厄介だ」
「ええ、姉さんが言う通り、私の使う水属性魔法は通じないし、葬送魔法や神銀の剣でも少しのダメージしか与えられない。その間に奴から強力な冷気魔法を喰らってジ・エンドよ」
しかし、ウッラとパウラの説明が聞こえなかったかの如く、ディーノはしれっと言う。
「じゃあ、まずはこちらも、弱点が少ないゴレ吉ネオ軍団で迎撃しましょうか?」
さすがに、ウッラの口調がきつくなる。
「ごら! ディーノ!」
「はあ?」
「お前は! 私達の話を聞いていなかったのか?」
「そうよ、ディーノ君。一時撤退が懸命だわ」
「ウッラさん、パウラさん、大丈夫っす。俺にとってはちょうど良い腕試しっす。ノーライフキング如きでガタガタ言ってたら、迷宮の王――上位悪魔とは戦えないっすよ」
ディーノはそう言うと、不敵に、ニヤリと笑ったのである。
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