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第304話「すげぇ面白いっす!」

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「ええ、おふたりの情報と魔物攻略法が、この迷宮初体験の俺と戦友達にはありがたいです。凄く役に立っていますから」


 ディーノからそう言われ、ウッラとパウラは一気に機嫌が良くなった。

 下層の説明を始める。


「うむ、地下70階層から80階層は、ゴブリン、オークの上位種だ」

「確か、ディーノ君はゴブリン、オークの上位種と戦った経験があるのよね」


「はい、ゴブリンシャーマン、ゴブリンオフィサー、そしてオークカーネルとは戦いました」


「うむ、その3種の他にいくつかの上位種が、更に普通種も混在し、出現する」

「まあ、殆どが脳筋。武器も多少使う場合もあるけど、ゴブリンシャーマンの魔法に注意すれば、特に難敵ではないわね」


「成る程……ちなみにゴブリンシャーマンは魔法障壁を使いませんか?」


「いや、ゴブリンシャーマンがそこまでの高位魔法を使うなど見た事も聞いた事もない」

「ええ、少なくとも私達の経験にはないわ」


「う~ん」


「おい、ディーノ。どうかしたのか?」

「何か気になるの? ディーノ君は」


「ええ、俺が以前倒したゴブリンシャーマンは、強力な魔法障壁を使いました。ゴーレムや魂を斬る必殺剣を駆使して、何とか倒しましたけど」


「何だと!」

「それ、凄い強敵じゃない!」


「ええ、そいつは出会った上級悪魔の配下でした。多分その悪魔により相当ビルドアップされていたと思います」


「むむむ……」

「慎重に慎重を期した方が賢明。蛮勇は禁物ね」


「はい、パウラさんの言う通りです。基本方針を言いますので、宜しいですか? 基本的には俺の指示に従ってください」


「うむ、頼む。とりあえず聞こう」

「言って頂戴!」


「まず敵の情報の早期察知。そして詳しい情報の確認、早めの対策実施が必要です。索敵機能を強化します。具体的には俺も加わります。……ウッラさん、了解してください」


「うむむ……」

「姉さん! OKして!」


「分かった!」


「ありがとうございます! 感謝します。隊列も変更します。ゴレ吉、ファイ、ケル、俺、ウッラさん、ジャン、パウラさん、オル、そしてオルの後に、万全を期して、ゴレ吉2号を配置します」


「うむ、何と言うか万全の態勢だな」

「うふふ、頼もしいわね。私達姉妹ふたりで攻略していた時は、ヒットアンドアウェイもしくはアヴァートゥアクラァィシィスだったから」


 ウッラとパウラは気持ちに余裕が出て来たようだ。

 パウラが告げたヒットアンドアウェイとは、一撃離脱。

 アヴァートゥアクラァィシィスとは危機回避という意味である。


 つまり姉妹は俊敏且つ必殺の間合いで敵を倒し、無益な戦いは避け、

 迷宮の下層へ進んで行ったのであろう。


 今や魔人と化し、頑健さが売りのひとつとなったディーノだが……

 双子姉妹の戦法はそもそもの基本であり、大いに参考となる。

 今回の探索は特別である。

 自分の限界を試し、計っていた。

 普段のディーノなら、わざとゴーレムに殴られたりしないからだ。


「ウッラさん、パウラさん。念の為、これから出て来る強敵どもも教えて頂いて宜しいですか?」


「うむ! 上位種どもの領域を過ぎた地下階層80階は、半人半獣の人喰い巨人どもの領域だ」

「ええ、山羊や馬、牛などの頭を持った巨人フォモール族よ」


「半人半獣の人喰い巨人フォモール族ですか」


「ああ、しかし大丈夫。奴らも基本は脳筋。その上、パワーはもの凄いが動きが鈍い」

「ええ、私達姉妹のスピードなら、奴らにはほぼ捉えられない。そして得るモノはあまりない。だから今まではアヴァートゥアクラァィシィスだったわ」


「了解。脳筋どもとは散々戦いました。あまり益がなさそうならスルーしても良いっすね」


「ああ、そして90階層は、ディーノが熱望のメタルゴーレムどもが居る領域だ」

「ええ、鉄、銅、銀、金、ミスリル銀、そしてダイヤモンド。いろいろなメタルゴーレムが存在するわ」


 パウラの言葉を聞き、思わずディーノはのけぞった。

 銀以上のメタルゴーレムを倒せば、大儲けだ。


「うっわ! ダイヤモンド!? それ下手なお宝より凄いじゃないっすか!」


「と、思うのが素人の浅はかさ。まあ、ディーノは素人ではないがな」 

「最初は私達もディーノ君と同じ事を考えた。まるごとは無理でも、欠片でも持ち帰れば一獲千金だとね。ダイヤモンドとか、相当なお宝になるわ」


「確かにダイヤなら相当でしょうね」


「だが、すっぱり諦めた」

「ええ、結局アヴァートゥアクラァィシィスになった」


 双子姉妹が簡単に諦めた?

 何故?

 

 ディーノは理由が知りたかった。


「え? どうしてです?」


「理由は簡単だ。私達の攻撃が通じないのだ」

「ええ、まず普通の金属よりとんでもなく硬い。防御の魔法がかかっているらしく、下手をすれば神銀の剣が刃こぼれするから物理攻撃が不可能。そして魔法も効かない。奴らには私の水属性魔法が殆ど通じないのよ」


「成る程……でも、俺燃えて来ました。奴らへ挑みます。ゴーレム一体倒して大儲け、一獲千金……冒険者らしいじゃないっすか」


「おお、気合が入ってるな」

「まあ、ほぼ魔人のディーノ君なら不思議ではないわね」


「となれば、後はいよいよ最下層ですね」


「うむ、95階層以降こそアヴァートアクラァィシィスだ」

「ええ、危険だと思ったら、すぐに撤退していた。実のところ私達は最下層100階には一回しか足を踏み入れた事はないわ」


「ウッラさん、パウラさんでも最下層へ行ったのは一回だけっすか」


「うむ、残念ながらそうだ」

「ええ、命あっての物種。安全が全てに優先する。生きて帰る事が第一だもの」


「そうですか……フォルミーカ迷宮の最下層。そこにエメラルドタブレットを守るヴァンパイアの王が居る。そしてこのフォルミーカ迷宮の王……悪魔も居るというわけですね」


「そうだ!」

「ええ、多分そうよ」


「すげぇ面白いっす! 燃えますよっ!」


「え?」

「ディーノ君……」


 不敵に笑うディーノを……

 ウッラとパウラは驚いたように見つめていたのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

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