表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/337

第30話「和解と事前打ち合わせ」

 この日……

 またも居酒屋ビストロ英雄亭に泊まったディーノ。

 当然、泊まったのはダレンの私室だ。

 これまた前の晩のように深夜半ばまで、いろいろ話してしまった。

 ちなみに大泣きしたマドレーヌはニーナの部屋に泊まったらしい。


 閑話休題。


 ディーノはふたりだけになってから、改めて紹介状の礼をダレンへ伝えた。

 対して、ダレンはディーノの報告を聞き、とても驚いてしまった。


 登録の試験官を直接ミンミがやった異例の対応は勿論、

 ディーノがそのミンミと実技試験で引き分け、結果ランクCに、

 それも限りなくBに近いスペシャルな認定をされた事に驚きを隠さなかった。


「おいおいディーノ。お前……ホントに凄い奴だなぁ」


「いえいえ、そんな……全然大した事ないです。ミンミさんの攻撃を避けるだけで精一杯、全然打ち込めませんでしたから」


「う~ん、だがほぼ素人のお前がランクSのミンミと引き分けたんだろ? そこまで謙遜けんそんすると逆に嫌味に聞こえるぞ、充分注意した方が良い」


「わ、分かりました」


 ディーノは素直に返事をした。

 正直、今迄の実績は殆ど他力本願的である。

 己の実力以外の要素が大きすぎるから、けして威張れるモノではない。

 謙遜するのが当たり前なのだが、ダレンには嫌味に聞こえたようだ。


 しかし尊大にならず謙遜し、控えめにするのは大事だと、

 亡き父から教えられていたし、考えを変える気は全くない。

 だがダレンの言う事も一理ある。

 とても勉強になったと思う。


 そんなこんなで……

 ダレンからは冒険者としての『うんちく』等を改めて教えて貰い、とても為になったのだ。


 翌朝早く……

 昨日同様、ディーノはダレンと市場へ行き、仕入れを含めた買い出しを行った。

 そしてニーナ達スタッフ女子軍団と朝食を摂った。

 唯一違っていたのは、マドレーヌが加わっていた事である。


 同性同士なのは勿論、大泣きした事で、同情され見直された事も大きかったようであるが……

 マドレーヌは英雄亭に勤める女子達と完全に打ち解けていた。

 部屋に泊めてくれた関係から、ニーナとは特に仲が良くなったようだ。


 なんやかんやでにぎやかな食事も半ばを過ぎ、良いタイミングと見たのか……

 マドレーヌは席を移り、ディーノの傍へ来た。

 そしてふたりは今後の打合せをしたのである。


 マドレーヌは改めてディーノにとって貴重な情報を提供してくれた。


「ディーノへは、鋼鉄の処女団(アイアンメイデン)について、いくつか教えておくね」


「おう! 頼むよ、助かる」


「鋼鉄の処女団のメンバーは昨夜話したけど、全員女性。私以外のメンバーは、あと3人居るの」


「3人?」


「ええ、シーフの私以外には盾役タンク攻撃役(アタッカー)であるカルメンの姉御あねご、そして回復役ヒーラーである元聖女のジョルジェット、そして後方支援役(バファー)攻撃役(アタッカー)である魔法使いのタバサよ」


「成る程、その4人にステファニー様が加わった計5名が新生『鋼鉄の処女団』ってわけだな」


「その通りね。ディーノの話を聞く限りステファニー様って、凄いし、強そうだわ」


「ああ、凄いし、強いと思うよ」


「まあ、ステファニー様は貴族だから身分の関係はあるんでしょうけど……」


 と、マドレーヌは言い、軽くため息をついた。


「カルメンの姉御に代わってクランリーダーになるくらいだから、相当な器だと予想はしていた。けれど、想像以上ね」


「まあな……想像以上とか、想定外って言葉が巷にはあふれてる。用心し過ぎるくらいで丁度良い」


「納得! じゃあ、改めて確認。私と貴方はギルドでも、道で会っても、全く知らんふりをする。で、連絡方法は?」


「とても良い方法がある。口を押えてくれないか?」


「え? 口を?」


「俺の話にお前が驚いて、大声が出るのを防ぐ為だ」


「何が何だか、わけ分からないけど、良いわ、押さえたよ」


「よし、行くぞ。もう一度念を押す、口をしっかり押えておけ。けして大声を上げるなよ」


「???」


『マドレーヌ』


「え! きゃ!」


『これが念話だ、声を使わず、話す魔法だ。心を使って俺へ話しかけてみろ』


『ね、ね、念話ぁ!! 心を使ってって、ま、まさか上級魔法使いの中でも一部の人しか使えないって奴? あ、あんた! ま、魔法使いだったのぉ!?』


『まあ、はっきり言えばそんなもんだ』


『まあ、はっきり言えばそんなもんだって……凄くあっさり言うわね』


『はは、軽いかな、俺』


『もう! 呆れたわ……で、でも聞こえる? 私の声?』


『聞こえる! 大丈夫だ』


『よ、良かったぁ!』


『俺の方で、お前の心の波動に合わせたからしっかり聞こえるよ、今後は内緒で連絡を取り合う時は念話で行こう』


『りょ、了解! ……念話って、凄く役に立ちそうね』


『多分、遠距離通話は大丈夫だけど、俺からの一方通行になる可能性が大かもしれないな』


 念話を交わすのは傍から見れば、ただ黙って見つめ合っているだけだから、会話しない第三者には怪しまれてしまう。

 ニーナあたりにチェックされ、怒られたら敵わない。


 愚図愚図してはいられない。

 ディーノは手短にと頼み……

 マドレーヌから様々な基本情報に加え、『鋼鉄の処女団』の新たな本拠となる、

 貴族街に手配された新たな屋敷の場所も教えて貰った。


 これで主な情報は得る事が出来た。

 後は、己の心身を鍛えながらステファニー襲来を待つだけ……

 悪鬼のようなステファニーが脳裏にはっきりと浮かぶが、

 逃げるつもりは全くない。


『じゃあ、今後は宜しく頼むぞ、マドレーヌ』


 ディーノはそう言うと、ゆっくり拳を突き出した。


『了解!』


 マドレーヌも同様に拳を突き出す。

 最近、冒険者達の間で流行っている、フィストバンプという行為だ。


 マドレーヌの拳が触れた瞬間。

 ディーノは相手の拳の感触とぬくもりから、

 新たな仲間を得た事をしっかり実感していたのだった。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。


東導号の各作品を宜しくお願い致します。


⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎小説版第1巻~7巻

(ホビージャパン様HJノベルス)

大好評発売中!

◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)

第1巻~2巻も大好評発売中!

※月刊Gファンタジー大好評連載中《作画;藤本桜先生》

☆3月18日に発売されましたGファンタジー4月号に最新話が掲載されています。

また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。

コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。

WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。


マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が好評連載中です。

毎週月曜日更新予定です。

お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。


最後に、連載中である

「帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者」

も宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ