第294話「取っておけ」
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引き続き、フォルミーカ迷宮地下50階層……
合成魔獣どもが支配するフロアである。
ディーノがキメラを倒してまもなく……
もう一種の合成魔獣マンティコア3体が出現した。
事前に敵の接近を察知したディーノはジャンを手元に残し、再びファイ、ケルベロス、そしてオルトロスを突出させた。
マンティコアはキメラより、倍近くも、移動速度が速く、身のこなしもずっと素早かった。
そして鋼のような体毛を逆立てて体当たりしたり、放つ特殊攻撃を行う。
人間離れした動きをするディーノにとって、俊敏さはともかく、マンティコアの特殊攻撃には注意が必要である。
しかし、ファイ達とマンティコアの戦いぶりを、ディーノが良く観察していたら、特殊攻撃も予測可能だと判明する。
ファイが彼の最大攻撃技たる《炎の嵐》発動の前触れとなる予備動作を起こしたのと同じく、マンティコアの特殊攻撃にも癖……つまり発動前の予備動作がある事を見抜いたのだ。
ここにもディーノの優れた才能が現れていた。
はっきりした予備動作であれば、常人にも簡単に見抜ける。
だが、マンティコアの予備動作は、体毛をほんの少し動かす僅かなものであった。
ディーノの類稀な視力、抜群の注意力がその僅かな癖を捉えたのである。
更にディーノはマンティコアが発する魔力のわずかな動きにも気が付いた。
二段構えで特殊攻撃の予兆を掴んでいたのだ。
戦友達は先ほど同様、難なくマンティコアを倒した。
するとまたまた!
援軍の如く、新手のマンティコア3体が出現した。
ディーノはファイ達3人を下がらせると……
充分に注意しながら、一見、無防備に近付いて行く。
やがてマンティコアが現れる。
接近するディーノにすぐ気付き、唸り、牙をむきだし威嚇する。
いきなり一体が予備動作を見せる。
これは『鋼鉄毛』を逆立てるだけではない「飛ばす」特殊攻撃だ。
瞬間!
ディーノの身体がぶれたようになり、消えた。
放たれた鋼鉄毛はディーノが居た背後の迷宮の壁に突き刺さる。
当然ながら、ディーノは楽々避け、かすり傷ひとつない。
ぶしゅ!
風の魔法剣発動。
放たれた硬い大気の塊が、マンティコアの頭部をあっさり破壊した。
しゅぱっ!
次は神速で繰り出された剣撃!
一刀両断!
今度はマンティコアの頭部が綺麗に切り離された。
ぐちゃ!
そして、ディーノは右手に剣を持ったまま、残った一体のマンティコアへ超接近。
左の拳でマンティコアの脳天を思い切り打ち砕いたのである。
ディーノがマンティコアを倒した後も……
合成魔獣どもはまんべんなく、出現した。
戦友達は勿論、ウッラ、パウラも「身体がなまる」と言い出し、戦いに参加した。
キメラ、マンティコアとも、双子姉妹ふたりきりでは、そこそこ手間がかかる相手ではあるが……
戦友達の露払いに加え、遠距離砲ともいえる、ディーノの風の魔法剣がバックアップ。
思う存分に無双する事が出来たのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
この地下50階層で、全100階層だと言われるフォルミーカ迷宮の半ばへ到達した事になる。
ウッラの宣言通り、このフロアから、宝箱を開錠し、開ける事となる。
まもなく小ホールという場所で、ディーノ達は宝箱を発見した。
ディーノは施錠された宝箱を見るのは初めてである。
これまで、オークやゴブリンの巣で見かけた宝箱は全てふたが開けられ、物入れとして使われていたからだ。
ようやくシーフとして、もうひとつの本領発揮。
それが宝箱開錠。
当然、仕掛けられた罠を外さなくてはならない。
ウッラは張り切って、腕をまくった。
「よし、これを開けて、中身をゲットしたら、先の小ホールでキャンプの準備! その後はメシだ!」
「うふふ、良い考えね、姉さん」
「賛成です。中身が気になりますね。あ、メシは俺が作りますよ」
パウラとディーノは、地下50階層でキャンプを張る事に文句なく賛成した。
まだ先は長い。
地下迷宮で昼夜が分かりにくいが、懐中型魔導時計の針は、午後6時を回っている。
更にパウラがひと言。
「姉さん、しくじらないでね、慎重に慎重に……ドジ踏んだら、ごはんが食べられないわ」
「うっさい、パウラ! 気が散る!」
……静寂の中、かちゃかちゃと、ウッラがピックを使い宝箱を開錠する音が響いた。
やがて……
カチャンという乾いた音が響いた。
「よし、上手く行った」
ウッラの発した開錠成功のコメントと共に、パカンと蓋が開いた。
果たして中身は……
回復効果のある魔法指輪であった。
身につけていると、少々防御効果をあげ、疲労も癒され、生命力が少しずつ満ちて来る。
迷宮探索では基本装備のひとつだ。
「幸いこれは呪われてはいない……そして、まあまあの品物だけど……私達が既に所持しているモノね」
「うむ、そうだな、パウラ」
「じゃあ、構わないわね、姉さん」
「うむ、OKだ、パウラ」
ウッラとパウラは宝箱に仕舞われた魔法の回復指輪を見て、相談し、即決した。
「と、いう事で、この指輪はディーノ君へ差し上げるわ」
「え? 良いんですか?」
「うむ! 良いからとっておけ」
「ええ、そうよ。エメラルドタブレットを譲ってくれるんだもの。これくらい、お安い御用よ」
パウラは、宝箱から魔法指輪を取り出すと、笑顔でディーノへ渡したのである。
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最後に、連載中である
「帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者」《連載再開!》
「【改訂版】辺境へ追放された勇者は、銀髪美少女と新たな国を創る。気が付いたら魔王と呼ばれていた?」
も宜しくお願い致します。




