表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

284/337

第284話「どのような事があっても!」

 ディーノは心に浮かんだ推測に危惧きぐの念を抱き……

 ウッラとパウラへ地上への帰還を勧めた。


 しかし、当然ながら姉妹は激しく反発する。

 突如且つさしたる理由もなしに帰還せよとは、ランクAの冒険者には、

到底受け入れられるものではない。


「おい、ディーノ! いきなりどころか、そんなイミフの説明で、はい、わかりましたと、叱られた子供のように帰れるわけがないだろが!」

「姉の言う通りよ。君の話は曖昧あいまい過ぎてわけがわからない」


「…………」


 ディーノは迷っていた。

 ふと心に浮かんだのは推測というか、予感に近いものだ。

 ウッラとパウラへ、具体的に告げるべきなのか、悩みどころだ。


「推測でも構わん! ちゃんと説明しろ!」

「ええ、仮定の話でもちゃんと聞いてあげるから」


 姉妹は引き下がりそうにはない。

 ふたりの言う事も尤もである。


 仕方なく、ディーノは正直に告げる事とした。


「……分かりました。じゃあ話します」


「…………」

「…………」


「ウッラさん、パウラさん、以前、俺が悪魔に遭遇した話をしましたよね?」


「それがどうした!」

「あ、まさか、ディーノ君!」


 勘の良いパウラは、すぐに気が付いたらしい。

 さすが!

 と、ディーノは苦笑した。


「パウラさん、分かりますか?」


 また置いてけぼりのウッラがディーノと妹パウラを交互に見る。


「何だ、何だ?」


 しかし、ここは話を進めた方が良いだろう。

 ウッラもすぐ、話へ追いついてくるはずである。


「人狼どもが言っていた王とは、俺が出会った悪魔ではないかと思ったのです」


「な!? あ、悪魔! このフォルミーカ迷宮の王が悪魔だと!」

「やっぱり! だから私達姉妹の身を案じて、退けと言ったのね」


 驚くウッラ。

 しかし、パウラは「うんうん」と頷いていた。

 完全にディーノの意図を察したようだ。


「ええ、俺が会った時、人をたくさん殺して魂集めをしていた奴は、邪魔をする俺に対し、ひどく怒っていました、それで命を取ると脅されたのです」 


「成る程……この迷宮は、生と死の狭間に在る場所、人間どころか様々な生き物が大量に死ぬ……悪魔の魂集めにはもってこいだものね」


 パウラの言葉を聞き、ディーノは記憶を手繰った。


 悪魔……

 メフィストフェレスは魂を集めていると言っていた。

 ディーノが所持するルイ・サレオンの至宝を欲したのと同様、魔界の王となるのに、大量の魂が必要なのに違いない。


「そうです。だから、使い魔等に一見見返りがないのも納得がいく。悪魔が無報酬で、尽くすというケースは、自身の弱みでも握られない限り、考えづらいですから」


 ディーノの言葉を注目して聞いていたウッラが、大きく頷いた。

 ようやく「話へ追いついた」ようである。


「おお、今の話で、私にも全て理解出来たぞ。ようはこの迷宮を魂収集装置にする為、悪魔が降臨し、一見無償で褒美を与えるふりして、迷宮で死んだ冒険者の魂を回収している……そうだな? ディーノ」


 ウッラもランクAの冒険者……

 今のコメントが、ディーノの推測をズバリ告げていた。


「はい、さすがです。ウッラさんの言う通りです」


 一方、パウラは腕組みをしていた。

 腕組みは拒否を表す仕草だと、ディーノは亡き父から聞いている。

 

 案の定、パウラの答えは「NO!」である。


「ディーノ君の話は、ようく理解したわ。そして私達を危険にさらしたくないという気持ちも良く分かった。良くあるセリフだけど、だが断る!……って感じかしら」


「何故です?」


「そんな怖ろしい悪魔が、もしこのフォルミーカ迷宮に居るのなら、必ず倒さなきゃいけない。そして絶対に逃せない相手も居るのよ。ねぇ、姉さん」


 まとも意味ありげなコメントを告げるパウラ。

 姉ウッラへ同意を求める。


 当然!

 という感じで、ウッラは頷く。


「ああ、そうだ、パウラ。絶対に許せない、私達姉妹が何を置いても、この世から根絶すべき敵が居る!」


「ええ、そうよ、姉さん!」


 ウッラとパウラが、ここまでこだわる相手とは……

 多分、吸血鬼の王であろう。

 吸血鬼の王は、彼女達が倒した始祖の上を行くと情報屋のメリッサは言っていた。

 であれば、この王はノーライフキングと並ぶ、不死者の頂点に位置していると言えよう。

 

 吸血鬼の王を倒そうとしているのは、単にエメラルドタブレット奪取の為ではない。

 姉妹の目的は金品ではない。

 そうディーノは確信していた。


「……分かりました。そこまで言われたら、もう帰れとは言えません。その代わり、俺の指示を守り、無茶はしないと誓って貰えますか」


「一応、約束しよう」

「分かったわ、無茶はしない。ディーノ君の気遣いは嬉しいし、私達も命は惜しいから」


「俺の指示に従って貰う代わりに、おふたりの命は俺が守ります。どのような事があっても!」


「ディーノ……」

「ディーノ君……」


 きっぱりと言い放ったディーノの視線は……

 まっすぐにウッラとパウラへ向けられていたのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。


東導号の各作品を宜しくお願い致します。

⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎小説版第1巻~7巻

(ホビージャパン様HJノベルス)

大好評発売中!


◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)

☆第4巻の発売が決定致しました。2021年1月27日発売予定! 予約受付中です!

既刊第1巻~3巻も大好評発売中!

※第1巻に続き、第3巻も『重版』致しました!

書店様で、ぜひお手に取ってご覧ください。


※月刊Gファンタジー大好評連載中《作画;藤本桜先生》

☆今週金曜日『12月18日発売』の月刊Gファンタジー1月号に最新話が掲載されます。

一見超ドライでも、本当は優しい主人公の魔法使いルウ、

可憐なヒロイン達の新たな魅力をお楽しみください。


また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。

コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。

WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。


マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が好評連載中です。

毎週月曜日更新予定です。

お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。


最後に、連載中である

「帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者」《連載再開!》

「【改訂版】辺境へ追放された勇者は、銀髪美少女と新たな国を創る。気が付いたら魔王と呼ばれていた?」

も宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ