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第274話「良い機会」

 襲いかかる敵の群れ、ルーキーキラーらしき冒険者等々……

 邪魔者どもを、蹴散らし……ディーノ達クランは地下10階層へ到達した。

 だが、最下層の地下100階はまだまだ先である。

 

 こんなところでゆっくりはしていられない。

 一行は更に進む。


 とりあえず、次の目的場所は、地下20階層に直行可能な魔導昇降機が設置された移動ポイントである。


 火蜥蜴と化したファイアドレイクのファイを先導させ、ゆっくりと歩んでいたウッラがハッとする。

 こちらへ迫る敵を察知したようである。

 鋭く、警戒の声を発する。


「うぬ! 敵だ! 戦闘用意! 多分、不死者アンデッドの小群だぞ」


 敵が不死者と聞いて、ディーノは「よっしゃ!」と上腕をポンと叩く。

 好機到来。

 試してみたい戦い方があるのだ。


「ちょうど良いっす。俺ひとりに任せてください」


「何を言うの、ディーノ君。不死者なら私達に任せて。戦い慣れてるから」


 パウラの言葉……

 「不死者なら任せろ」「戦い慣れてる」という言葉が気になった。

 だが、やはりディーノは詮索せんさくしない。


 それよりもさりげなく、双子姉妹の戦い方を尋ねてみる。


「では念の為、おふたりはどのように戦いますか?」


 徐々に気心が知れて来たのだろう。

 パウラはあっさりと答えてくれる。


「私パウラの葬送魔法で敵を弱らせた上、私達姉妹が愛用する神銀の剣でとどめを刺すわ」


「神銀の剣?」


 ディーノが聞いた事のない武器だ。

 おそらく特注品に違いない。


「これよ!」


 パウラが「すらり」と抜いた細身の剣は、眩く銀色に発光していた。

 清々しい美しさを感じる剣である。


「ディーノ君は、銀が破邪の効果を持つ事は知っているでしょう?」


 パウラの言う通り……

 銀は、穢れを払う金属として知られている。

 

「はい、知ってます。聞いたり、本で読みました」


「神銀の剣……私と姉が持つこの剣はドヴェルグの名工に鍛えて貰い、高名な魔法使いに極限のレベルまで破邪の効果をアップして貰ったの。不死者専用の剣と言って過言ではないわ」


「成る程……良い剣です」


 ディーノは素直にパウラの持つ剣を褒めた。

 再び誇らしげに刀身を眺めた後、パウラは神銀の剣を鞘に収めた。

 にこっと嬉しそうに笑う。


「剣技も鍛錬を重ね、これまで実戦で磨いて来たわ。吸血鬼の始祖を倒した事も、ロフスキ支部のギルドマスターから聞いたみたいだし……という事で私達に任せてくれる?」


 しかし、ディーノは首を横へ振る。


「いいえ、でもこの場は俺に任せてください。お願いしますよ」


「ど、どうして!」


「理由はふたつあります。ひとつは、先ほども言いましたがまだまだ目的地は遠い。おふたりの魔力を無駄遣いはしたくありません。もうひとつ、その上、葬送、回復魔法を、3人の中でパウラさん以外は使えませんから」


 ディーノは理由を述べた。

 至極当然の理由で正論である。


 しかし、パウラは納得しない。


「う~ん。じゃあ、言わせて貰うけれど……スケルトンやゾンビはともかく、ディーノ君に実体無き幽体の敵が倒せるの? このフロアにはウィルオウィスプやスペクターが出るわ。通常の物理攻撃は無駄だし、火属性は勿論、風属性の魔法でも僅かなダメージしか与えられない」


 ウィルオウィスプとは、迷宮内に現れる蒼き火の玉である。

 人魂とも呼ばれ、亡霊と同じく彷徨える死者の魂、その残滓だとされている。

 冒険者を迷わせ、死へ導くとされる不吉な存在である。

 

 スペクターは、同じく魂の残滓で亡霊の一種である。

 特に害を為す悪霊、怨霊をそう呼ぶのだ。

 生前とは全く違うおぞましい姿をしており、出会ったら、精神へダメージを与えて来る。

 恐怖から身体が硬直し、戦闘意欲を喪失した犠牲者は最後に、魂を喰われてしまう。

 

 両方とも、パウラの言う通り幽体……

 すなわち実体なき精神体なので通常の武器では倒せない。

 ディーノが行使可能と告げた火と風の魔法剣。

 それでも倒し難いと、パウラは断言したのだ。


「う~ん。仰る通りかもしれないんですが……試してみたいんですよ、俺」


「え? 試してみたい?」


「はい、不死者と戦う練習の良い機会です」


「練習……良い機会って……」


「ええ、俺、不死者はゴブリンゾンビとしか戦った事がないんです」


「ゴブリンゾンビ……」


「はい、以前戦った時、ゴブリンのボスがゴブリンシャーマンだったんですが、そいつが倒したゴブリンをやたら不死者アンデッド化して蘇らせ、少し難儀しました」


「な、成る程、そう……なんだ。そんな奴ともディーノ君は戦ったのね」


「はい、という事で俺にやらせてください」


「う~ん」


 しかしパウラは、まだ納得がいかないらしい。

 ディーノに戦う手段があるのか? と疑っているようだ。


 ここでディーノの戦いを許容したのはウッラである。


「パウラ! ディーノにやらせてみたら良い」


「姉さん……」


「ファイと渡り合ったディーノの姿を私達は見てはいない」


 ウッラの言う通り、姉妹はファイの最大の攻撃技《炎の嵐》が発動される寸前に、

 戦いの場を逃れている。

 ディーノが死んだと思い込んだ原因でもある。


「それに、先ほどのザコ冒険者だけでは、まだコイツの実力が分からん。不死者といってもこの10階層では大した奴は出ない。こちらこそいい機会だと思うぞ」


「姉さんの言う通りかも……分かった。じゃあ、とりあえずディーノ君に任せる。でもろくに戦えなかったら、私達が敵を倒す。それでいいかしら?」


「構いません、了解です!」


「おい、ディーノ。そろそろ来るぞ。やっぱり大した事はない。ウィルオウィスプ、スペクター、そしてスケルトンの混成部隊だ」


 敵を把握した。


 ここで、ディーノは念話で指示を飛ばす。

 双子姉妹へは聞こえない。


『ファイ! ケルベロス、下がってくれ。ジャン、オルトロス、今回の戦いは、手出し無用だ。俺が単独で行くから、女子達を守ってくれ』


『がお!』

『『『了解!』』』 


 即座にOKの意思が戻って来た。

 ディーノは大きく頷くと、自分の剣『ディーノの剣』を抜き放ったのである。

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