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第270話「ま、いいでしょ」

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 ディーノはフォルミーカ支部のギルドマスター、

 マクシミリアンの依頼を上手く断った。


 迷宮に潜るのは、自分を鍛える為だ。

 ルーキーキラーは、未熟な同胞を狙い撃ちし、

 餌食にする不届き千万せんばんやからではある。

 しかし自衛の為以外、ディーノは人間を狩る意思はない。


 残念そうな表情のマクシミリアンだが、すぐに気持ちを切り替えたようだ。

 つまりディーノ達を特別に指名というのではなく、上級ランカーには片端から声をかけているに違いなかった。


 マクシミリアンは、またも意味ありげにニヤリと笑う。


「ま、いいでしょ。無理に頼むわけにもいかないですから。じゃあ、私の個人的なお願いをしちゃいますね」


「個人的な……お願いですか?」


「はい、個人的なお願いです。あれを見て下さい」


 マクシミリアンが指さしたのは、執務室の一画である。


 そこには魔法使いが使う長いスタッグが数本立てかけてあった。

 どれも重厚な趣きがあり、凝った細工が為されていた。

 強い魔力も放っている。

 きっと高価な品物に違いない。


 ディーノが改めて見れば、執務用の机の上にも短めのバトンとワンドが1本ずつ置いてある。


「杖……ですか?」


「ええ、凄く美しいでしょう! すらっとした直線! 持ちての曲線! まさに芸術! 最高の職人達が作ったものですよぉ!!」


「は、はあ……」


「魔法使いのさがでしょうかあ! 私はね、杖が大好きなんですよ! ディーノ君! 貴方も魔法使いなら分かるでしょう?」


「え、ええ、何となく……でも俺、基本は剣士なんで杖は使いません」


「ふっ、愚かな! 杖は魔法を効果的に行使する発動体として非常に優れたアイテムなのです」


「は、はあ……」


「それに! 杖を持たない魔法使いなど、さまにならない! 邪道のやからとしか言いようがないっ!!」


 ディーノも、ウッラもパウラも魔法は使う。

 しかし剣士なので杖は持たない。

 

 そもそも各自には得手不得手、特性もある。

 第一、どのようなものを使おうと個人の自由だ。


 しかしマクシミリアンには、魔法使いに関する独自の概念や自論があるようだった。

 そこを突っ込むと、更に不毛な長話になる危険性があった。

 なのでディーノは会話をクロージングへと持って行く。


「それで、マスター。お願いというのは何でしょう?」


「は~いっ! この部屋にある杖は、私のコレクションのほんの一部で~す。ほとんどは自宅にありますからねっ!」


「はあ……そうなんですか。杖、たくさんお持ちなんですね?」


「いえ~す! 倉庫にいっぱいいっぱいっ! でもでも! まだまだ! ぜんぜん! 足りな~いっ!!」


「……………」


「私はもっともっと杖が欲しいので~すっ!! 美しいデザイン! そして底知れぬ機能! 共に備わった、この世に存在する優れた杖がぁ! 出来る限り欲しいので~すっ!!」


「……………」


 熱く語るマクシミリアンにドン引き……

 否、黙って見守るしかないディーノ達。


 マクシミリアンはまたもニヤリ。


「……という事でっ! お三方ぁ! これぞ逸品! と見込んだ杖があればぁ! ぜひ私の下へお持ちくださ~いっ! ウチの支部の魔法鑑定士が付けた評価額の倍で買わせて頂きますよぉ!!」


「な、成る程」


 マクシミリアンのお願いは……

 本当に個人的なものだった。

 趣味の杖コレクションのサポートという趣旨だ。


「しかあし! ここでひとつ注意ぃ! 私が認めない杖は一切却下で~す! 購入などけして致しませんっ! それどころか、あなた方の審美眼を疑い、思い切り軽蔑致しますからね!!」


「……わ、分かりました。もしも、これはという素晴らしい杖を見つけたら、マスターの下へお持ちすれば良いのですね?」


「いえ~すっ!! 迷宮は勿論、市場でも古道具でもフリーマーケットでも構いませんよぉ! 盗品以外なら、呪われた品でも大歓迎で受け付けまあす! よっろしくう!!」


 結局……

 ディーノとフォルミーカ支部のマスター、マクシミリアンとの会見は、

 個人的な要件を頼まれるという、表向きは顔見世程度に終わったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 マクシミリアンからはルーキーキラー討伐という、微妙な案件しか依頼はなかった。


 ロフスキのマスター、ラディムから紹介状を預かったディーノだが、

 最初から大きな期待をしていないので落胆はない。


 3人は一応、業務カウンターで依頼案件の照会をしたが……

 やはり大した依頼はなかった。

 殆どが、迷宮に出現する魔物の部位収集であったからだ。


 これなら、慌てて飛びつく事はない。

 ディーノは、ヴィオラ村にて村長のグスタフから託された収納の腕輪を所持している。

 時間が経過しない特殊な異界へつながる腕輪に部位を入れておき、

 後ほど取り出し、まとめて換金すれば良い。


 もしも依頼を受けた場合、経過の報告義務が生じる。

 未報告、もしくは未納品の場合、ギルドから問い合わせが起こる可能性があるから、ディーノは敢えて依頼を受けない事を決めた。

 ウッラ、パウラも腕輪の存在に驚いた上で、納得してくれた。


 3人が宿へ戻る帰り道の主な話題は、やはりマクシミリアンのキャラである。


「やっぱり変わった人ですね」


「ああ、変わってる! 大が付く変人だ」


 ウッラはすぐ同意したが、パウラは意味ありげな視線を送って来る。


「しかし……油断ならぬ相手だ。ディーノ君はどう思う?」


「ええ、彼が最優先するのは、冒険者の安否よりこのフォルミーカの評判と利益です。ルーキーキラー討伐の件で改めて認識しました。さすが市長の弟です」


 ディーノがそう言うと、パウラの表情が引き締まる。

 ウッラも真剣な顔付きだ。


「ふむ……ディーノ君はその事を知っていたのか」


「はい、パウラさん。俺このフォルミーカへ来る前にいろいろと調べましたから」


「……………」


「話を戻せば、ルーキーキラーの討伐は現場を押さえるか、囮捜査が必要で、えらく手間がかかります」


「ええ、証拠が掴みにくいわ。何せ迷宮の中だから。被害者が死んでいても魔物に襲われたのを発見したとか、惚けられたり、逆に正当防衛を主張する場合もあるわ」


「はい、本当に冤罪の場合もあります。だから、この街の兵士や衛兵にはやらせたくない。マスターは尤もらしい大義名分を付けて、俺達冒険者にやらせる腹づもりなのでしょう」


「ああ、私も姉さんもそう思って断った」


「さらにもうひとつ。そんな事に絡んだら、俺達が消される口実にもなります」


 ディーノがそう言うと、今度はウッラが顔をしかめる。


「うむ……ディーノの言う通りだ。上手く折り合っている時は問題ない。だが彼の機嫌を損ねたり、意に沿わなくなった冒険者は、ルーキーキラーの汚名を着せられ、迷宮内で文字通り闇に葬られる……とかな」


「その通りです。おふたりは俺なんかより認識されていると思いますが、充分注意しましょう」


「うむ! 念には念を入れよという事だな!」

「万全を期しましょう!」


「じゃあ、迷宮探索に備えて、買い物して帰りましょうか。不足しているものを補充しましょう」


「「了解!」」


 いつの間にか……

 ディーノが双子姉妹を引っ張る形となっていた。

 それが導き継ぐ者のスキルの一端だと、まだ3人の誰も気付いてはいなかったのだ。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

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