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第268話「冒険者ギルド フォルミーカ支部②」

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 サブマスターは、カールと名乗った。


 さすがにサブマスター。

 腐っても何とやら。

 

 ディーノを子ども扱いした事で、暗に抗議された事を気付いたらしい。

 少し話してみれば、悪い人ではないようだ。


 階上へ通じる魔導昇降機へ誘われ、4人は5階へ向かう。

 ギルドマスターの多くは、最上階へ執務室を構える事が多いようだ。


 しばらくはここを拠点にする。

 なのに、サブマスターと険悪では話にならない。

 ディーノは、先に謝罪する事にした。


「すみません、少し強く言い過ぎました」


「い、いや、構わない。こちらの方こそ失礼した。まさか今噂のディーノ・ジェラルディ君がここまで若いとは思わなかった」


「一応、15歳です」


「15歳か、う~む。本当に失礼した。……だが、どうしてウッラさんとパウラさんがディーノ君とクランを組んだんだね?」


 ここで、すかさず答えたのは、ウッラである。


「こいつが、私達とぜひ組みたいと、泣いて土下座したのだ」


 さもありなんと、頷くカール。


「へぇ、ウッラさん、そうなんだ」


 しかしディーノが「さっ」と割って入る。


「カールさん、それ、フェイクニュースですから。……パウラさん、いつもの通り、フォローお願いします」


「了解! サブマスター、がさつで嘘付きの姉に代って申し上げますと、私達がディーノ君の実力を見込んで、クラン結成を打診したんです」


「おお、そうなのか」


「はい、それが真実です。ディーノ君……これで良いかな?」


「まあ、そんなところでOKです」


 見事なパウラのフォロー。

 何とか真実は守られた!


 という事で、立場がないのはウッラである。


「何だよぉ! パウラもディーノも! まるで私が大嘘付きみたいじゃないかぁ!」


 猛抗議するすウッラ。

 しかし彼女の味方は、この場に皆無であった。


「その通りじゃないっすか」

「いくら肉親の妹とはいえ、ここはディーノ君を支持せざるを得ない」


「こらあ!」


 カールは双子姉妹の性格を熟知しているらしい。

 笑いながら、「うんうん」と頷いている。


「はははは、クランを組んだばかりなのに息がぴったりじゃないか。これなら大いに期待出来そうだ」


「どこがじゃ! 私ひとり、ぼっち感が半端ないわ!」


 そんなこんなで、魔導昇降機は5階へ到着した。


 開いた扉から出て突き当りの部屋がギルドマスターの執務室である。

 ラディムさんが『変人』と言っていたけど……

 一体どのようなひとなのだろう?


 カールが名乗りノックすると、入室OKの返事があった。

 

 扉を開けたカールに促され、ディーノ達は執務室へ入ったのである。 


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ディーノの想像とは違い……

 マスターは偉丈夫ではなく、すらりとした長身痩躯の魔法使いである。


 声がやたら大きく、良く通る。

 歌手になればと良いのに、と言いたいくらいな声量である。


「おお! よくぞ来た! ランクAの精鋭達よ! ようこそ! 我がフォルミーカ支部へ! さあ、ご唱和! 素晴らしきかなぁ! 迷宮都市フォルミーカぁ!!」


 『つわもの』と言って良い、ウッラとパウラの腰が引いていた。

 特にウッラは完全にドン引きしていた。

 彼女が苦手なタイプなのかもしれない。


「す、素晴らしきかな、め、迷宮都市、フォ、フォルミーカ。ご、ごぶさた……マスター」

「す、素晴らしきかな、迷宮都市フォルミーカ。お、お久しぶりです」


 顔見知りのウッラとパウラが挨拶を返すと、カールが3人を紹介する。


「マスターが良くご存じのリュリュ姉妹、そして今噂のディーノ・ジェラルディ君です。3人でクランを組むそうですよ」


「おお、君がディーノ君かぁ! 私がこのフォルミーカ支部のギルドマスター、マクシミリアン・エドフェルトだっ! 宜しくなぁっ!」


「す、素晴らしきかな、迷宮都市フォルミーカ。俺ディーノです。よ、宜しくお願いします」


「はははははははははぁ! 凄いな、君はぁ! 私は既にヴァレンタイン王国での君の戦歴、そして我がロドニアでの戦歴にも目を通してある!」


「そ、それは……どうも。これ、ラディムさんから預かりました」


 マクシミリアンはディーノから『紹介状』を受け取りさっと目を通した。

 「うんうん」と頷く。


「うむう! ラディムは結構慎重な男だ。その彼が手放しで認めた君は間違いなく大物だぁ!」


「はあ、俺そんなに大層な者じゃないっすけど……」


「いやいや! ディーノ君は逸材だよぉ! 類稀たぐいまれな大器だよぉ! 双子ちゃんと勝るとも劣らな~い! それとねぇ!」


「そ、それと?」


「うん! そのラディムからさっき緊急の魔法鳩便が届いたぞぉ!」


「緊急の魔法鳩便……ですか?」


「ああ、君がアラウダ村でテイムしたファイアドレイクの件だぁ! 脅威さえなくなれば依頼完遂として認めるとはっきり記してあったぞぉ!」


「あ、助かります、それ」


「うむ! 凶暴なドラゴンをテイムなんて、凄いぞぉ、ディーノ君はぁ! 私も全く同意見だぁ! ははははははははは! 報奨金は既に手配し、振り込んだぞぉ!」


「あ、ありがとうございます」 


 マクシミリアンは凄く調子が良い。

 やたらに相手を持ちあげる。


 こういう人は……何か含む場合が多い。

 悪く言えば、裏がある。


 案の定、『それ』はやって来た。


「で、さ! 大器のディーノ君と女傑の双子ちゃん達に、たってのお願いがあるんだけどさぁ!」


「何ですか? たってのお願いって……」


「なあに! 簡単な仕事さぁ! 超が付く実力者の君達なら! ちょちょいのちょいだぁ!!」


 マクシミリアンは更に「うんうん」と頷き、「にたり」と笑ったのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

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『辺境へ追放された勇者は、銀髪美少女と新たな国を創る。気が付いたら魔王と呼ばれていた?』

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