第262話「またも……」
ぱかぽこぱかぽこ……
がたがたがた。
馬のひづめ、そして馬車の車輪の音がのんびりと響いていた。
街道で襲って来た山賊達を退けたディーノ達は再び旅を続ける。
召喚したケルベロスとオルトロスもそのままジャンと共に荷台に乗っていた。
当然、山賊達へ見せた本体ではなく、子犬くらいのラブリーな?姿となっている。
『これで、ゆっくり旅が出来る。少なくとも迷宮都市までは。はあああ』
安堵したディーノが大きく息を吐いたが……
戦友3人は、意味ありげに笑う。
『ふふふ、果たしてそうかな?』
『俺は予感がする』
『俺様もにゃ!』
『何だよ、お前ら』
『ふふふふふ……そろそろ来るぜ、この気配』
『来た来た!』
『ジャストタイミングにゃ!』
戦友達が感じた気配をディーノも感じていた。
馬がこちらへ二騎走って来るのだ。
……やがて気配を感じた通り、馬が二頭現れた。
鞍上にそれぞれ革鎧姿の女子が乗っている。
ぱからっ! ぱからっ!
ぱからっ! ぱからっ!
ぱからっ! ぱからっ!
ぱからっ! ぱからっ!
駆け寄って来た二頭の馬は荷馬車の真横へ着いた。
乗り手の女子達を見たディーノは今度は大きなため息を吐く。
「はあ……」
「おい、私達を見てため息つくな! 置いて行くな!」
「そうよ! 何故私達を見捨てるの! 酷いじゃない!」
追っかけて来たのは……
ウッラとパウラの双子姉妹である。
何故か、ディーノを責めている。
全くイミフ。
わけが……分からない。
「あのぉ……置いて行くとか、見捨てるとか……わけわからないっす。俺、おふたりとは全く関係がないんですが」
「関係なくない!」
「そうだ、これを見なさい!」
パウラがポケットから取り出したのは一枚の紙片であった。
ウッラとパウラ、そしてディーノの名が署名してある。
「関係なくないって、何すか、これ? ギルドマスターへの討伐報告書を書く為にサインの練習をしたメモじゃないすか? 俺にもサイン書けって言ったから書きましたけど……」
「ふふふふ」
「あははは」
「なんすか、その不気味な笑いは?」
イミフな笑いに怪訝な表情のディーノであったが、ふたりはベタな擬音と共に、
紙片の記載をアピールする。
「じゃ~ん!!」
「ど~ん!!」
「あ~! 手で隠してたところに、何か書いてある!」
「良く読め!」
「しっかり読んでよ!」
ふたりに促され、ディーノが読んでみれば、とんでもない事が書いてあった。
「えー! 何じゃこりゃ! ……ディーノ・ジェラルディはウッラ、パウラの下僕となる事を誓い、これをけして破らない。特に食事の世話は必須とする。これ、後から勝手に書き加えたフェーク文書っすね!!」
「と、いう事だ!」
「そうそう!」
と、ここでディーノが意味深に大空を指さす。
「あー! あれは何だ?」
「何?」
「え?」
釣られたウッラとパウラが、ベタに引っかかった隙に、ディーノは紙片を取り上げる。
「ゲット!」
「あ~盗人!」
「どろぼ~!」
「誰が盗人でどろぼ~じゃ! 立派な公文書偽造罪じゃないっすか! 消去!」
ぼっ!
ディーノが速攻で発動した火の魔法により……
ウッラとパウラの作ったニセの拘束書は一瞬のうちに燃え尽きていたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ぱかぽこぱかぽこ……
がたがたがた。
ぱかぽこぱかぽこ……
ぱかぽこぱかぽこ……
ぱかぽこぱかぽこ……
がたがたがた。
偽造の拘束書を取り上げられ、燃やされ……
ぶ~ぶ~言いながらも……
結局ウッラとパウラの騎乗した馬は、かつてのエレオノーラのように、
ディーノの馬車の真横にぴたりと着いて歩いていた。
「ディーノ、盗むのひでぇ!」
「ディーノ君、燃やすの酷いわ」
「どこがじゃ! 酷いと言うその言葉、そのままブーメランにして返しちゃる!」
「まあ、怒るな」
「うん、そう興奮しないで」
「怒るし、興奮もしますって! 証人のサインを頼んだだけで、どうして縁もゆかりもない無関係の俺が、おふたりの下僕になるんすか! それもあんなニセ文書まで作って!」
「答えは簡単! お前みたいな使い勝手の良い男はおらん」
「そうそう、明瞭簡潔よ。ディーノ君は強くて従順で、料理も上手い! 最高のメイド男子だもの!」
「もう! そんなんニセ文書作成の理由になってないっす!」
「無視!」
「華麗にスルー!」
「はあ? 何が使い勝手ですか? 何が最高のメイド男子ですか?」
「その通りだろう?」
「その点に関して、嘘は言っていない」
「そもそも! おふたりはロフスキへ行くんでしょ? そう言ってたし、フォルミーカじゃ、方向が全然違うじゃないっすか」
「うん、気が変わった」
「そうそう、ディーノ君とつるんで、フォルミーカ行った方が面白そう!」
「はあ~」
ひと際大きくため息を吐くディーノを見て……
やはり荷台に鎮座した戦友3人は、「またも女難だ」と大笑いするのをこらえていたのである。
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