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第257話「火界王パイモン②」

 これ以上接近を許すと、相手の……パイモンの『間』に入られてしまう、

 そう内なる声が告げて来た。

 

 しかし、敢えてディーノはOKする事にした。

 放つ波動からパイモンは嘘を告げていない事が分かるし、殺意も感じないからだ。


『……分かりました。パイモン様を信じます』


『ははははは、私が誠を見せているのを見抜いておるか』


『はい』


『ふむ、それにお前と仲間を騙し討ちになどしたら、ヴィヴィとアマイモン、そしてオリエンスに半殺しにされるわ』


『了解です』


 ディーノが答えると、パイモンは地上にゆっくりと、音もなく降り立った。


 ずっし~~~~んんん!!!

 と地響きを立て、ファイアドレイクも続いた。

 パイモンの背後に控える。

 やはり双方とも、ディーノに対する殺意は感じられない。 


『ふむ、ディーノよ。実はお前に我が火の眷属たる使い魔を授けようと思ってな』


『火の眷属たる使い魔?』


『ああ、コイツだ』


 パイモンはそう言うと、背後のファイアドレイクを指さした。


 そう言えば、様々な資料で読んだ。

 聞いた事もある。

 火界王パイモンは、召喚した術者に良き使い魔を与えてくれるという。

 

 ディーノはパイモンを召喚したわけではない。

 しかし、その事例の範疇内という事であろう。


 そして、ふと気づいた。

 ディーノが先ほど付けた、ファイアドレイクの数多の傷がみるみるうちに修復して行くのだ。

 強大な火の魔力を有するパイモンの影響かもしれない。


 がうう!


 ファイアドレイクが短く吠えた。

 パイモンに己の意思を伝えたらしい。


『私から話したが、使い魔になる事を受け入れると言っている。何故なら私の言葉を受け入れ、ディーノ、お前がほこを収めたのが分かっておるからだ』


『そうですか』


『ふむ、コイツはお前の力を認めるそうだ。お前の性根も気に入ったそうだ』


『はあ、それはどうも』


 ファイアドレイクが使い魔。

 結構。

 味方になれば心強い。

 しかし、これからも旅を続ける事を考えると、そのガタイが問題である。


『でも、ちょっと大きすぎるかと……』


 ディーノが懸念を示すと、パイモンは二ッと笑う。


『ふっ、ノープロブレム、問題ない』


 パイモンは「ぱちん」と指を鳴らした。


 すると!

 ファイアドレイクはみるみるうちに、小さくなった。

 巨大なドラゴンから、火をまとう手のひら大の、

 小トカゲになってしまったのである。


 「ぶんぶん」と音を立て、小トカゲが飛んだ。

 可愛いと言えなくもない。


『これで問題ないだろう』


『はあ……確かに』


『コイツを火蜥蜴サラマンダーに擬態させた。お前の命令でいかようにも。元の姿になるのも大きさも自由に変えられる。どうするのかは随時指示を出せば良い』


『はあ……それは便利ですね』


『コイツはお前の魔法指輪に収納出来る、呼ぶ時、または還す時は、ケルベロス、オルトロスと同じ方法を行使すれば良い』


 ディーノに使い魔が増える。

 今後の事を考えれば、仲間はいくら居てもOK。

 改めて考えた。

 ファイアドレイクならば文句はない。

 否、充分過ぎる。

 

 だがディーノはうかつにOKしない。


『でも……』


『どうした?』


『使い魔を頂戴出来るのは嬉しいのですが、この展開では、話がうますぎると思いまして』


『ほう! なにゆえ疑う』


『ええ、申しわけありませんが、パイモン様は元悪魔だと聞いております。もしも魂等の代償が必要なら、折角ですがお断り致します』


 ディーノの脳裏には悪魔メフィストフェレスの姿が浮かんでいた。

 ファイアドレイクを貰っても、己の魂を取られてはたまらない。


『はははははは! 私をあの外道と一緒にするな』


 まるでディーノの心を読んだかの如く、パイモンは高らかに笑った。


『私はヴィヴィやオリエンス同様、お前の行く末を見守りたいのだ』


『俺の行く末を……』


『うむ、お前はかつての……我があるじの遺品を受け継ぐ者でもある』


『かつての我が主って、魔法王の事ですか?』


 ディーノは思わずふたつの至宝……

 『ペンタグラム』を触り、そして『指輪』をした手を「ぎゅっ」と握った。


『そうだ! 人の子の革新を目指したルイ・サレオン様は我が主だった。お前と同じ人の子、限りある生命いのち……つまり有機体モータルゆえ、遥か昔に世を去ってしまったがな』


『……………』


 パイモンがいにしえの魔法王ルイ・サレオンに仕えていた。

 そのルイ・サレオンの至宝の魔道具をディーノは受け継いでいる。


『ディーノ・ジェラルディ、英雄への道を歩む者よ。お前はいずれ全属性の魔法を使いこなす、全属性魔法使用者オールラウンダーとなる』


全属性魔法使用者(オールラウンダー)……』


『いずれ、お前の下に水界王アリトンも現れるだろう』


『アリトン様が?』


『ああ、ヴィヴィ、オリエンス、そして私がお前に会い、3属性の最上級精霊が加護を与えたのだからな』


『じゃあ私も、とか、そういうものですか』


『そういうものだ。精霊は己こそが唯一無二、至高の存在だと自負している。常に他の精霊より抜きん出たいと考えておる。著しく出遅れるなどもっての外だ』


『成る程……勉強になります』


 ディーノはパイモンの言葉通りだと理解をする。

 今後、ヴィヴィやオリエンス、

 そしていずれ現れるアリトンとのやりとりをする上で役に立つはずだ。 


『という事で、代償など無用だ。遠慮なく私から使い魔を受け取るが良い』


『あの仔細な事ですが……』


『何だ?』


『ファイアドレイクは使い魔ではなく、戦友でも宜しいですか? これも縁なので共に支え合い、旅をしたいのです』


『……良いだろう、お前のその気持ち、コイツも尚更喜ぶ』


 パイモンは再び指を鳴らした。

 すると火蜥蜴は消え失せ、ディーノの指輪が眩く煌いた。

 ファイアドレイクは、新たな『戦友』として指輪に収納されたのである。


『では、そろそろ失礼する! また会おう、ディーノ!』


 すっと手を挙げたパイモンの姿がいきなり消えた。

 現れた時と同様、忽然と消え失せたのであった。

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