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第254話「あいつはアホだ!」

 ディーノが躊躇ちゅうちょなく、一直線にファイアドレイクへ向かって行くのを見たのだろう。


 多分ディーノが気付いている事を知らないに違いない。

 物陰に潜む後方のウッラとパウラから、驚きの感情が波動としてはっきり伝わって来る。

 馬鹿な! とか 無謀だ! という呆れた感情も混在していた。


 苦笑したディーノは「じぐざぐ」に走り出す。

 ファイアドレイクの視線を惑わせ、吐き出す猛炎をまともに浴びない為だ。


 冒険者なら常識だが……

 竜の一族が火の息(ブレス)を吐き出す時は、

 『癖』とタイムラグ的な『溜め』がある。

 ディーノは、まずそのふたつを探り出そうとしていた。


 しかし、凄まじい速度である。

 ヴィヴィが魔人だと告げたのはけして誇張ではない。

 本気を出したディーノの動きは人間では捉えきれないほど速かった。


 さすがのファイアドレイクも戸惑っているようだ。

 何度も火の息(ブレス)を吐くのだが、その火炎が届く頃、ディーノはその地点に居ない。

 

 しかし火炎を避けるだけでは、ファイアドレイクを倒す事は出来ない。

 こちらからも攻撃し、ダメージを与えなければ倒せない。

 まずは、こちらの攻撃がどれくらい通用するのか、試してみる必要がある。


 ディーノは『風の魔法剣』を撃つ態勢に入った。

 威力の最高を『10』としたら、ほんの小手調べ『2』あたりで試してみる。


 当然ながら相変わらず「じぐざぐ」に走り、側面へ回り込む。

 

 巨大な尾で薙ぎ払われないよう注意し、接近。

 至近距離から5発の魔法剣『風』を撃ち込んだ。


 どし!

 どし!

 どし!

 どし!

 どし!


 すかさずディーノは飛翔魔法を発動、後方へ大きく飛び退った。

 いつも心がける戦法、ヒットアンドアウェイである。

 

 やはりというか、すかさずファイアドレイクの巨大な尾が、

 ディーノをぎ払おうとしたが、全くの空振りに終わった。


 しかし、肝心の魔法剣は全然効いていないようだ。

 火の属性ゆえ、表現が微妙だが、ファイアドレイクは『涼しい顔』をしていた。


 唸りもしないから、痛みも感じていないらしい。

 鋼の如き固いうろこに覆われた表皮が、生半可な攻撃など受け付けないのだ。


『むう、やっぱ、2じゃダメかよ』


 苦笑したディーノだったが、既にファイアドレイクから100m離れた位置、

 『安全圏』に立っていた。


『よし、今度は《炎の嵐》を発動させるよう仕向けるか。発動前の癖、それとタイムラグを知りたい』


 ディーノは再びダッシュ。

 あっという間に、ファイアドレイクの至近距離へ。


 今度は倍以上、『5』の威力で風の魔王剣を撃ち込む。

 同じく5発だ。


 ぎゃうっ!!


 ファイアドレイクが短く悲鳴をあげた。


 今度は何とか効いたらしい。

 それでも表皮がわずかに破れ血がにじんでいる程度ではあるが……

 さすがに竜族。

 とんでもない『装甲』だ。


 だがファイアドレイクは相当頭に来たようだ。

 凄まじい怒りと憎悪の波動がディーノへ向けられる。


 ばさばっさ!!


 ファイアドレイクの巨大な翼が雄々しく、動かされた。

 全身から異音が生じ、激しい炎が噴き出した。


 間違いない!

 これは《炎の嵐》発動の前触れとなる、ファイアドレイクの予備動作である。

 それが確実なのは、ウッラ、パウラの姉妹が転がるように遁走したからだ。


 一方、ディーノは《炎の嵐》の攻撃が及ぶギリギリの範囲にとどまっていた。

 しっかりとファイアドレイクの『癖』を見抜こうという意図である。

 

『成る程、まず翼をあのように動かすのか、それから5秒後に奴の全身から炎が噴出すると……よし確認OK、撤退だ!』


 その瞬間!

 ファイアドレイクが巨大な口を開け、強烈な火の息がディーノへ向かい、

 吐き散らかされた。

 そして、全身からも凄まじい猛炎が吹き荒れ、辺り一切を焼き尽くしたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ディーノが《炎の嵐》に包まれた?頃……


 双子姉妹の冒険者、ウッラとパウラはいち早く、現場を脱出していた。

 ふたりの意見は「ぴたり」と一致していた。


 あのランクAのおとなしそうな少年ディーノはとんでもない愚か者だと。

 間違いなく、《炎の嵐》の猛炎に呑まれたと……


 ウッラとパウラは走りながら、話している。


「パウラ! マジ、ヤバイと思ったから、早めに逃げて良かった! グズグズしていたらやられてたぜ」

「ああ、《炎の嵐》発動の癖を憶えていて良かった」


「それにしても、ディーノめ! ホントあいつはアホだ! 実力もない癖に、下手にドラゴンを挑発しおって」

「確かに……死人をおとしめたくはないが、彼はどうしようもない、バカというか、ボンクラだった」


「だろ! パウラの目は節穴だぞ。完全に見込み違いだ。あんな愚か者とクランを組んだら、とばっちりを喰らう。こっちの命がいくつあっても足らん!」

「姉さん、何度も言わないでくれ。自分の至らなさを反省しているから」


「もう! 巷の噂もあてにならん。話半分以下だ!」

「う~ん、ギルドの誰もが、ディーノは凄いと言っていたのに。残念だが若さゆえの過ちで死んでしまったか……」


 ボロクソにディーノをけなすウッラとパウラだが……

 ディーノが『ただもの』ではないと見抜いた、ふたりの脚力は底知れない。

 

 先ほどのディーノの走力に勝るとも劣らないのだ。


 そして思い出して欲しい。

 ロフスキのマスターによれば、このふたりだけで、

 古城に巣食っていた吸血鬼の始祖とその軍団を見事に屠っているのだ。

 まさにランクAに相応しい、抜きんでた実力者のふたりである。


「まあ、私達は、吸血鬼や不死者アンデッド討伐こそがライフワークだ。ドラゴンなど二の次だ」

「だな、姉さん。幸いこの依頼は未遂でもペナルティはナシ。だから、ノープロブレムさ」


 ウッラとパウラは頷き合い、二ッと笑うと、森の中へ消えて行ったのである。

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