第251話「双子の姉妹①」
どむ!
「ぐあ!」
どむ!
「ぐあ!」
どむ!
「ぐあ!」
敢えて、何度も言おう。
歴史は繰り返される……モノなのだと。
どむ!
「ぐあ!」
どむ!
「ぐあ!」
一度ある事は二度あり、三度ある……という。
そしてまた4度目もあった。
今後も数限りなくあるだろう。
さてさて!
ここはロドニア王都ロフスキを出て、馬車で西へ10日ほどかかるアラウダ村。
その村の宿屋『狐亭』
ディーノが夕食を食べ終わり、紅茶を飲んでいたら……
見知らぬ冒険者3人組に声をかけられた。
だが、物騒な展開にはならなかった。
ひと勝負『銀貨1枚』にて腕相撲を挑まれただけである。
ディーノを出迎えた際、宿屋の少女ヨハンナは大騒ぎしてしまった。
見た目と中身がまるっきり違うディーノのギャップに驚いてしまい、必要以上に大騒ぎしてしまったのだ。
その為、ディーノの素性は、ほぼ宿の者全員へバレてしまった。
結果、興味を持ったこの3人組が……
若干15歳でランクAだという信じられぬ現実を、
ほんの少し試してやろうという悪戯心が起こったのだ。
しかし現実はやはり真実。
且つ非情であった。
大の大人の男3人が挑んでも挑んでも……
ディーノには勝てないのだ。
最後には全員が本気以上の力を出し、むきになって挑んだが、
結果は、やはり変わらなかった。
ひとりが10戦行い、結局3人で30戦0勝に終わってしまったのだ。
ここでゲットした銀貨30枚を「そのまま頂きぃ!」などと、
けち臭い事をディーノはしなかった。
15歳にして叩き上げの風格を持つディーノは、世の道理を心得ていたのである。
「あの~」
「何だ? 少年はまだやるの?」
「ランクAが、まだ俺達ランクCに鞭打つのか? 少年が強いのは充分分かった」
「勘弁してくれ。もう出せる金はないよ。宿代までなくなる」
「いえ、違いますよ。頂いたこのお金で皆さんへ、ごちそうします。残ったらお戻ししますよ」
「は?」
「何だと?」
「冗談じゃないよな?」
「いえいえ、好きなものを飲んで食べてください」
「うそ!」
「ほんとか!」
「マジでいいのかよぉ!」
「はい、マジです。足りなくなったら、俺が出します。その代わりいろいろ話を聞かせてください」
「おお!」
「ラッキー!」
「最高! さすがランクA! 太っ腹!」
こうして……
ディーノと冒険者達は、『二次会』へと突入したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ディーノは満腹だったし、酒を飲まなかった。
ヴァレンタイン王国では16歳以上でないと飲酒不可なのである。
しかしディーノのおごりとあって、冒険者3人組は良く食べ、良く飲んだ。
酒が回ると口も回って来た。
頃合いと見て、ディーノは知りたい事を投げかけてみる。
この後、行く予定の迷宮都市についてである。
「皆さん、俺、迷宮都市フォルミーカへ行こうと思ってるんです? 行った事あります?」
ディーノが尋ねれば3人はフォルミーカヘ行った事があるとは答えた。
答えたが、全員思い出したくもないというように首を振る。
「あ~、だめだめ」
「少年は確かに強い。だがあそこはヤバイ」
「やめといた方が良いよ」
「どうしてですか?」
「あそこは悪党の巣窟さ」
「不合法な商売が横行してる。奴隷の商いとかな」
「そう! いくら少年が強くても一度に数十人に取り囲まれたら敵わないよ」
「成る程。で、肝心の迷宮はどうなんですか? 街から直接迷宮へ降りられるって聞いたんですが。ゲット出来るお宝はどうですか? 難度は?」
「おお、さすがに名前に迷宮を謳っているだけあって、結構良いお宝がゲット出来る」
「大型の迷宮で階層は100階まであるが、当然、下層へ行くほど難度が増す。出現する敵も強い」
「後は……良い迷宮だけど、ルーキーキラーには要注意だな。ま、ランクAの少年には関係ないか」
「ルーキーキラーって、確か冒険初心者目当ての強盗ですよね? 同じ冒険者の?」
「ああ、そうだ」
「最低の野郎達だ」
「ずるがしこくて、弱い奴しか襲わず、証拠をつかませないんだ」
「成る程 注意します」
聞きたい事が「そこそこ」聞けた。
満足したディーノであったが、冒険者達が逆に尋ねて来る。
「それより少年」
「お前さんに聞きたい」
「ぜひ教えて欲しい」
「ええっと、何でしょう?」
「少年、女は好きか?」
「そうそう、彼女は?」
「デートした事あるのか?」
いきなり話題が「ガラリ」と変わった。
まあ、男子ならありがちな話題である。
「うわ……ええっと、ダメですね。中々上手くいかないんですよ」
ディーノは……
嘘をついた。
婚約者も含め、好きな女子が数多居ます。
などと正直に言えば、この場の雰囲気をぶち壊してしまうと、
本能的に悟ったのだ。
冒険者達は、平凡な顔立ちで地味な雰囲気のディーノに同情した。
ディーノに対し、優越感を覚えているのが何となく分かる。
「だろうな! 少年は地味過ぎる」
「ランクとモテは比例しないな」
「もっとお洒落せんと、ダメだろ」
「はあ、頑張ります」
「思い切って、ナンパしたらどうだ。このままじゃ一生女に縁がないぞ」
「そうそう、俺達もナンパしたぜ。当たって砕けろだ、少年」
「成功率は低い。俺達もさっき冒険者の双子をナンパしたけど上手く行かなかった」
「え? 冒険者の双子?」
ディーノが聞き直した瞬間。
「何、こそこそ話してんだ! ぶっ殺されっぞ!」
「お前達、私達にふられだけじゃ、満足しないのか?」
ドスの利いた声、氷のように冷たい声2種類が、
ディーノ達のテーブルへ降って来た。
そっくりの声だが、話し方、口調は全然違う。
ディーノが見やると……
お揃いのデザインで緑色と茶色。
色違いの革鎧を着込んだ冒険者の女子がふたり、
腕組みをして、こちらを凄い目付きで睨んでいた。
背はそこそこ高い。
170㎝に少し届かないくらい。
髪はふたりとも短髪のレディッシュ。
顔がそっくりである。
唯一違うのは瞳の色だ。
ひとりはグリーン、もうひとりはブラウンであった。
年齢はディーノより少し上、多分17歳か、18歳だろう。
どうやら冒険者達がナンパした双子らしい。
「うわ! じゃ、じゃあ少年、俺達これで!」
「ご、ごちそ~さん」
「ま、また、どこかでな!」
脅された冒険者3人組は勢いよく立ち上がると、脱兎の如く逃げてしまった。
……空いた席には、どっか!と、
声の主、冒険者の双子女子が座り、
再び「ぎろり!」とディーノを睨みつけたのである。
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