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第241話「ステファニーとエレオノーラ②」

 正体不明な女子ふたりがいきなり登場。

 転移魔法なんて思いもつかない。

 

 全くの想定外。

 完全にイレギュラー。


 最初は戸惑っていたエレオノーラとシグネだったが……

 まずはヴィヴィ、そしてステファニーが自己紹介し、

 ディーノがフォローの説明した。


 再度、ヴィヴィと話して行くうちに納得し、これは夢ではない、

 現実なのだと受け入れるようになった。


 こうなると、エレオノーラはディーノの元カノ?ステファニーに興味が湧く。

 ヴィヴィからの意味深な『ふり』もあり、ディーノを巡って、話し合いをする事となった。


 こうして、遂に2頭のメスライオンは激突したのだ。


 火花を散らすふたり。


 その傍らで地の精霊ヴィヴィが進行役、当該者であるはずのディーノはオブザーバーという形で世紀の対決を見守っていた。

 ちなみにシグネは、完全に高みの見物、傍観者という感である。


 司会役のヴィヴィが話し合いの開催を宣言する。


「では、ステファニー、エレオノーラの話し合いを始めます。進行役は私ヴィヴィ。改めて自己紹介してくれる? 最初はステファニーから、はいどうぞ」


「ヴィヴィ様、かしこまりました。ええっと、改めまして、私はステファニー・オベール16歳。ヴァレンタイン王国クロード・オベール辺境伯の一子です。ディーノ・ジェラルディよりひとつ年上の旧主です」


「じゃあ、続いてエレオノーラ、行ってくれる」


「うむ! 私はエレオノーラ・ガイダル18歳。ロドニア王国グレーヴ・ガイダル公爵の一子。ディーノより3つ年上だ」


 双方の自己紹介が終わった。

 ステファニーとエレオノーラはお互い値踏みをするように、見つめ合っている。


 ふたりのにらみ合いを見て、ヴィヴィはにっこりし、口を開く。

 

「じゃあ、ふたりとも良いかしら。ディーノと出会った時と、ここまでのおさらいをするわね。私が話して、それをふたりが確認する形よ。補足があるのならお願いね」


「こちらこそお願いします、ヴィヴィ様」

「問題ない、続けて欲しい」


「ええっと、じゃあ話すわ。ステファニーのお父上は、負傷したディーノのお父さんの面倒を見る為に引き取り、そのまま息子のディーノもステファニーの従者となった」


「…………」


「これがステファニーとディーノの出会い。ステファニー、貴女が12歳の時の事、その後4年間、ディーノは貴女の従者だった」


「は、はい! その通りです」


「さっきエレオノーラへは、私がディーノの基礎をとか、カッコよく言ってたけど、ここで全てを、真実を明かすわよ」


「……はい」


「貴女はディーノが優しく従順な事に付け込み、使いに使い倒した。結果、彼は心身共に疲弊したわ」


「とても申しわけなく思っております」


 何と!

 ステファニーが謝った!?

 本当に、ステファニーは変わった?

 

 以前ヴィヴィに諭され、止めを刺されて以来、

 高慢で強気な性格が全く変わってしまったのだろうか?

 何度もディーノに「ざまあ」されても挫けず諦めずだったのに……

 昔の彼女の言動を考えると、ディーノはすぐ信用するわけにはいかない……


 しかしヴィヴィは、項垂れるステファニーに対し、きっぱりと戒める。 


「ステファニーは今までの行為を大いに反省して」


「はい、ヴィヴィ様の仰る通りです。……大いに反省致します」


「そうよ! ディーノから思いっきり、ざまあで、永遠にバイバイされても仕方がないくらい、酷いいじめだったもの!」


「……………」


「ステファニー!」


「はい……」


「でも、貴女の超スパルタ教育があったから、ディーノの基礎が形成された。それは間違いない。まあ怪我の功名、雨降って地固まるね」


「……………」


「今後はディーノに優しくし、そして尽くすのよ。分かった?」


「はい! 地の精霊の名の下に誓います!」


「よし! 話を戻すわね! ……16歳になり、ステファニーはディーノに対する本気の恋心をお父上オベール辺境伯へ明かした。愛娘の深入りを怖れたお父上の判断で、ディーノはお父さんの死を口実にあっさり主家を追放され、生まれ故郷王都セントヘレナへの旅に出た」


「そうです。私の父は本当に余計な事をしました」


「うんうん! その後いろいろあって、セントヘレナで久々にディーノと再会した貴女は、彼の超が付く変貌にびっくり、再会が叶った嬉しさも加わり、益々好きになってしまった。更にヴァレンタイン王国の楓村で生死を共にし、ディーノと結婚したい気持ちはゆるぎないものとなった」


「はい、ヴィヴィ様の仰る通りです」


 ディーノとステファニーの関りが改めて分かった。

 そんな顔付きで、エレオノーラとシグネは無言で頷いていた。


 しかし!

 出演が交代。

 今度はエレオノーラの番となる。


「じゃあ、次はエレオノーラの経緯をいっくわよぉ」


「お、お手柔らかに頼む!」


「おっけ~! ええっと、お父上が決めたエレオノーラの見合いがあった日、貴女は相手に会うのが嫌で仮病を使い、しれっとキャンセル」


「…………」


「でも自宅にこもるのにも飽き、こっそり抜け出し、王都ロフスキ近郊で乗馬を楽しんでいた」


「…………」


「うふふ、まあ、仕方がないよね? 私も同情するわ。あのしょ~もない脳筋相手じゃ、真面目に見合いなんかやりたくないもの」


「……ああ、ヴィヴィ様の言う通りだ。あんな馬鹿と結婚するなど真っ平ごめんだ。人生の汚点に他ならない。見合いでさえ時間の無駄だ」


「という事で話を戻すわね……休憩を取ろうと、下馬した時、愛馬が放馬。難儀していたところを、馬車で旅行中のディーノが通りかかって助けた。そして何と、信じられない事に愛馬も捕まえて来た」


「ううう、は、はい! その通りだ」


「あはは、エレオノーラの本音ね」


「ああ、で、補足すると、人間が絶対に追いつけない馬を、ディーノはあっさり捕まえた。その上、私以外、言う事を聞かない気難しい牝馬なのに、凄くなついてしまったのだ」


「成る程、だから、エレオノーラはディーノにとても興味が湧いた。ロフスキに戻り、アホの見合い相手に絡まれた事件も結果的にディーノが解決。ますますディーノへ、はまって行き、遂には熱く恋するようになった」


「そ、その通りだ!」


「エレオノーラは生来の男子嫌い。お父上が理想の男子だったエレオノーラは、ディーノへ出会い、彼の抜きんでた実力に触れる度に惚れ込んで行った……」


「……………」


「そして先日完遂した冒険者ギルドの魔物討伐において、ディーノの底知れぬ実力と誠実な人柄に触れ、彼との結婚を最終決意した……というわけね」


「うぬぬ、ズバリだ! 恐れ入った!」


 今度はステファニーが無言で聞いていた。

 小さく頷いているところを見ると、「納得した」という事に違いない。


 ヴィヴィの悪戯っぽい笑みが消え、真面目な表情で、

 ステファニー、エレオノーラ、双方の顔を見た。

 対してふたりの顔付きも、より真剣になっている。


「じゃあ、お互いの経緯と本音が分かったという事で、ここからが本題よ」


 ここからが本題……

 ヴィヴィは一体、何を話すつもりなのだろう。


 完全に表情が引き締まったステファニー、エレオノーラとともに、

 ディーノも居住まいを正したのである。

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