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第228話「冒険者などクズ……ではない」

東導 号 書籍化作品⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

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 リーリウム村、村長のカスパルは口ごもりながら話し始めた。


「……こ、これまで、我が村の依頼でいろいろな冒険者がやって来ました。オークどもを倒しに……しかし誰も成功しなかったのです」


 やって来た冒険者が依頼を完遂出来なかった。

 冒険者はランクに見合う依頼を受ける。

 しかしたまに高額の報奨金に目がくらみ、無理をする場合も多い。


 これまでリーリウム村へやって来た冒険者はそのような輩が多かった。

 そうディーノは思った。


「それは……仕方がないというか、同じ冒険者の俺が言うのは何ですが、実力が伴わなかったのでしょう」


「ええ、ろくな奴が来ませんでした。……残念ですよ、時間の無駄でした」


 カスパルの気持ちは良く分かるが……

 バッサリという感じで、言い方が相当きつい。


「だいぶ……とげがある言い方ですね。村長といい、ヒルデガルドさんと言い……」


「はい……ヒルデガルドは彼女の両親……私の弟夫婦をオークどもに殺されておりまして、奴らを蛇蝎だかつの如く憎んでおります」


「それは……お気の毒です」


「だが、私達の無念を他所に、今まで来た冒険者達はオークどもで満ちる城を見て臆し、怯え、急用が出来たとか、報酬が安いとか、終いには無理だと言って逃げ去りました。ヒルデガルドがああ言うのも無理はないのです」


「…………」


「村では遠方から来た冒険者を歓迎し、手厚くもてなしたのに……その間もずっと犠牲者が出ているのです。冒険者のあなた方を前にして申しわけありませんが……私達を見捨てて逃げたあいつらはろくでなしのクズです」


「成る程……そういう事でしたか」


 カスパルから話を聞いて、ディーノは頷くしかない。

 どちらの気持ちも分かるからだ。


 亡き父クレメンテからは冒険者の悲哀を散々聞かされた。

 裕福な冒険者など滅多に居ないと。

 

 超が付く上級ランカーで実入りが多い者。

 または金持ちが片手間にやっている者など……

 生活に余裕がある者は、ほんの少数である。


 大抵の冒険者がその日暮らしの貧乏人。

 無理をして実力以上の依頼を受ける者が殆どだ。

 

 しかし、依頼を受けておいてあっさり逃げ出すなど、

 藁をもすがる気持ちの村民からすれば、たまったものではない。


「はい、それで私も村長という立場上、来る冒険者を毎回毎回、ず~っと庇っていたのですが、そろそろ精神的に限界なんです」


 ディーノは既に決めていた。

 この依頼をしっかり完遂すると。


 まずは、いろいろ情報が欲しい。


「成る程……分かりました。お嫌かもしれませんが、改めて状況、奴らの城の話などいろいろお聞かせ頂けますか?」


 ディーノの丁寧な頼み方に、カスパルもやむなしと思ったようだ。


「はい、分かりました。冒険者達が臆するというのは理由があるのです」


「理由がある? どういう事ですか?」


「はい、普通のオークならば、まだ良いのですが……」


「というと……奴らは上位種か何かですか?」


「はい、普通のオークでも戦士ふたり分の戦闘能力があるのですが、城に巣食っているのは全てオークサージェントという上位種で並のオークの3倍は強い。ガタイも力も桁違いなのです」


「オークサージェントですか」


「はい、そして奴らのボスはオークカーネル。物理的な攻撃を弾く強靭な肉体は勿論、魔法への耐久力もあり、オークサージェントの更に10倍以上の強さを誇る上位種です」


「オークカーネル……」


「ええ、オークカーネルの強さは単純計算で人間の30倍。オーガよりも遥かに凄まじい能力です」


「オークカーネル……オークサージェントの10倍以上の強さを誇るのですか?」


「はい、それに奴らは知能もあり、人間の軍隊並みに統制が取れ、武器も達人並みに使うのです」 


「……分かりました」


 冒険者達が臆した理由が分かった。


 依頼書には記載がなかったが……

 リーリウム村に害為すオークは全てが上位種だったのだ。

 騎士で軍人のグレーヴさえ、真剣に話を聞き、気合を入れ直すのが波動で伝わって来る。


 ここで、おずおずという感じで……

 ガスパルがディーノへ話しかけて来る。


「あの……」


「何でしょう?」


「もし討伐が無理なら、夜明け前に正門を開けますから、村民が寝ているうちに、こっそり撤収してください。さすがに全額は払えませんが、手間賃くらいなら……」


「はは、何言ってるんですか、村長」


「え?」


「こっそり撤収など絶対にしません、必ず倒します」


 ディーノはきっぱりと言い切った。

 ガスパルをしっかりと正面から見据えて。

 若干15歳の少年が威風堂々とする様を見て、ガスパルは気圧される。


「な!?」


「オークカーネルと、配下のオークサージェント100体なら、敵として不足はありません」


 しれっと言う、ディーノの言葉にガスパルは仰天するしかない。


「なあっ!」


「で、村長。古城の構造をお聞きしてからでないと確約は出来ません。だけど、数日以内には奴らを全滅させられると思います」


「そ、そんなっ! 数日内!? う、うそでしょぉ~~!」


 絶叫し取り乱すガスパルに対し、ディーノは到って冷静である。


「いや、超マジです。では奴らがこもる古城の構造を、村長の分かる範囲で教えてください」


「は、はいいいっ!!」


 再び絶叫するガスパルに、嬉しそうなグレーヴが噛みながらもフォロー。


「い、い、いや、村長。ディーノの言ってる事は満更嘘じゃねぇ」


「なななな、ま、満更嘘じゃないって……」


「以前こいつは数人でゴブリン一万頭倒してるし、その次は単独でオーク千頭、そして俺はこの目ではっきりと見た! ヴィオラ村でもゴブリンがわんさか居る巣穴へ突っ込んで、ぎたぎたの大掃除をしたぞ」


「あわわわわわわ……」


「見ていてください、村長。クズではない、まっとうな冒険者も居るって事をお見せしますから」


 ディーノはそう言うと、にやっと不敵に笑ったのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

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