第227話「自警団の少女戦士②」
東導 号 書籍化作品⛤『魔法女子学園の助っ人教師』
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リーリウム村自警団所属の少女、少年に先導、案内されたのはやはり空き家だった。
多分、ヴィオラ村同様に、この空き家がディーノ達の宿舎なのだろう。
ディーノは馬車を停め、手際よく馬をハーネスから外した。
馬を傍に生えていた木につなぎ、労わると飼い葉と水をやった。
そして、さっさと荷物を下ろし、少女に了解を貰ってから空き家の中へ運んだ。
その様子をグレーヴは感心して眺めていた。
ハッとして我に返ったのはエレオノーラである。
父とシグネをつつき、慌ててディーノを手伝った。
その様子を自警団の少女と少年は小馬鹿にしたように見つめていた。
荷物を運び終わったディーノが改めて挨拶しても視線を外していた。
「村長の家へ案内して貰えませんか?」
「はあ? どうして俺がお前達を案内しなくちゃいけね~んだよ」
視線を外したまま話す少女の言葉遣いは相変わらず荒っぽかった。
対して、ディーノは素直に且つ淡々と答える。
「村長へは挨拶するのと、状況をいろいろ聞きたいからです」
「そんな暇があったら、さっさとオークどもをぶっ殺して来いよ。お前等冒険者はその為に来たんだろ?」
「確かにそうです。だから、お願いしているんです。とっとと案内してくださいよ」
「何ぃ!」
「貴女がお忙しいのなら、他の村民に聞きますよ」
ディーノがそう言うと、少年ふたりは少女の言う通りだとの如く、
そっぽを向いた。
「この村の誰も、お前等冒険者に協力なんかしねぇよ」
「……分かりました。では勝手に探しましょう」
ディーノがそう言うと、少女はふんと鼻を鳴らした。
「勝手にしろ」という意味らしい。
「ありがとうございます。ちなみに、あの青い屋根で白い壁の大きい家ですね」
いきなり、ディーノは村内にある大きな家を指さした。
ビンゴ!
だったらしく、少女は大いに驚く。
「な、何で分かった!」
「村長のお宅はと聞いた時に、貴女の視線がちらと、あの家へ向けられたからですよ」
「な、何! くっそ! 待て、こら! 伯父の家へ勝手に行くんじゃねぇ!」
「成る程、貴女は村長の姪御さんなんですね。良く分かりました」
ディーノはそう言うと、
「じゃあ、行きましょう、みんな」
とクランのメンバーを促し、歩き出した。
しかし少女はディーノの行動が悔しかったらしい。
大声を上げて制止する。
「待てや! ごらぁ!」
背へ大声をかけられたディーノは足を止めた。
ゆっくりと少女へ振り返る。
「貴女へ、ひとつ聞いて良いですか」
「何じゃ、こらぁ!」
「貴女の敵はオークどもですか? それとも俺達なんですか?」
「ぐっ!」
相変わらず淡々としたディーノの物言いに、
少女は反論の余地がなく、言葉に詰まったようだ。
そんなふたりのやりとりをクランメンバーの3人は興味深そうに眺めていた。
ディーノは柔らかく微笑む。
「まあ、良いです。エレオノーラ、行きましょう」
「お、おう!」
『想い人』から声をかけられ、エレオノーラは喜んだ。
だが、収まらないのは少女である。
いたくプライドを傷つけられたようだ。
「よし! お前等は持ち場へ戻れ! お前等は俺が案内する。ついて来いっ!」
少女は、付き従う少年達に指示し、ディーノ達へ顎をしゃくった。
彼女は相当な負けず嫌いらしい。
自分がやり込められた事を絶対に認めない!
そう宣言するかのように叫んだのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「遠路はるばる良くいらっしゃいました。私がリーリウム村、村長のカスパル・ブラードです」
少女の伯父……
リーリウム村の村長カスパルは、白髪が混じった短髪。
がっちりした体格の50代男性であった。
ディーノは深く頭を下げ挨拶する。
「宜しくお願い致します。俺がクランのリーダー、ディーノ・ジェラルディです」
子供じゃないか?
というカスパルの視線。
続いてグレーヴ達3人は、軽く会釈という感じで頭を下げる。
「グレーヴだ」
「エレオノーラだ」
「シグネでっす」
しかし相変わらず少女は名乗らない。
挨拶もしない。
兜さえ脱がないで、そっぽを向いていた。
「…………」
「こら、ちゃんと挨拶しろ、ヒルデガルド」
カスパルが少女を叱った。
ディーノは微笑みながら小さく頷く。
「成る程、彼女はヒルデガルドさんというのですね」
「ふん! そうだよ! 俺はヒルデガルドだ!」
少女……ヒルデガルドはつんと脇を向いたまま名乗った。
カスパルが苦笑し、ディーノ達へ謝罪する。
「申しわけない。礼儀知らずな奴で……はい、コイツは私の姪のヒルデガルドです」
「伯父さん! くそ冒険者なんかにそんなに礼を尽くす事なんかないんだよ!」
「ヒルデガルド!」
「ぜってぇ、俺は協力しないからな! 自警団の皆も俺と同じだよ!」
ヒルデガルドは大声で叫び、立ち上がった。
扉へ突進し、荒々しく開けると、そのまま戸外へ出て行ってしまった。
しかしディーノは表情を変えなかった。
相変わらず淡々と言う。
「村長」
「も、申しわけない。重ね重ねの失礼を!」
「いや、大丈夫です。ヒルデガルドさんは俺達が村へ来た時から、ずっとあんな感じなのですが、何かあったのですか?」
「ま、まあ……」
「冒険者をだいぶ憎んでいるようですが……」
「は、はい……実は」
カスパルは困惑した表情で、口ごもりながら話し始めたのである。
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