第222話「最後に勝てばOK!」
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「もう! ズルイじゃないか、父上! 最後に出張って、美味しい部分だけ持ってくなんて!」
「そうです! 完全にいいとこどりでっすよ、ガイダルパパぁ!」
猛獣女子?と小悪魔女子が逞しき戦士へ、ずいっと迫る。
対して、戦士は……防戦一方である。
「スマン、スマン、ホントにスマン」
一体、何が起こっているのかといえば……
ディーノとグレーヴがグスタフ宅へ来てから、きっちり1時間後……
グレーヴの指示通り、戦友達のケアを終えた、
エレオノーラ、シグネ、女子ふたりもやって来た。
ふたりはノックに応え、扉を開けたグスタフの表情を見た途端、
大いにびっくりしてしまった。
グスタフは快晴の空のように、明るく笑っていたからだ。
驚いたまま部屋へ入った女子ふたりへ、
「実は……」
と、グスタフから改めて、『懺悔に近い告白』という語りで、
全ての顛末が話された。
ところどころを、グレーヴが補足する形で……
確かにとても良い話だ。
素直に喜びたい。
グスタフの話を聞き、エレオノーラとシグネはそう受け止める。
反面、残念な気持ちでいっぱいにもなる。
何故ならば、グスタフの人生の転機ともいえる『名シーン』に立ち会えなかったからだ。
その上、
「俺が領主のエーギルに言っとく」
「しれっ」と、グレーヴが最終クロージングしたとも伝えられた。
これで、
残念感に満ちあふれていただけではなく、
女子ふたりの怒りに火が「ぼおおっ」と点いた。
いや、点火したという生易しいものではない。
激しく燃え上がったのである。
だってだって!
散々苦労して、居丈高だったグスタフを説得したのに!
戦場へ無理やり引っ張り出したのに!
その上、一生懸命戦ったのに!!
悔しい!
悔しいっ!!
女子ふたりの怒りは収まらない。
それで冒頭の抗議となったのである。
まだディーノは許せる。
というか最大の功労者だ。
しょっぱな単身でゴブリンと戦った上……
最後も巣穴の掃討で、見事に依頼を完結させたのだから。
だが……
最後の最後に出た、グレーヴの大人の対応は『漁夫の利』感が否めなかった。
まあ立場上、仕方がないのではあるが……
と、言う事で、女子ふたりの抗議は、
グレーヴのみに対し、熱く執拗に続いた。
だがグレーヴは百戦錬磨。
けして逆切れしたりはしない。
怒った女子への対応も慣れていた。
イケメンで強く、器が大きい。
その上、とても優しい。
若い頃のグレーヴは、否! 現在も、女子には相当モテるに違いない。
まあ、実際のグレーヴは亡き妻ひと筋の一途な男ではあるのだが……
「本当にスマン! だがこうなる可能性を、俺は心配していたからな」
「こうなる可能性? 心配していた?」
一体、この父は何を言っているのだろうか?
怪訝そうな表情で、尋ねるエレオノーラ。
対して、グレーヴはにっこり笑う。
「おう! もしもこうやってグスタフが、お前等にガンガン糾弾されたら」
「私とシグネに糾弾されたら?」
「ずうずうしい俺と違ってよ、コイツはこう見えて結構デリケート。青菜に塩の如く、萎えちまう。更生するってせっかくの決意が鈍るんじゃねぇのか」
おっと!
的を射た、グレーヴの指摘。
まさに深謀遠慮である。
やはりエレオノーラは、尊敬する父には敵わない。
「う、そ、それは」
「男抜きの女子会って、同性同士で話しやすいだろ? 良くお前達がやるじゃねぇか。それの男子版だ、男子版! 男のみの話合いだ! がはははははっ!」
思わずエレオノーラが口ごもる。
豪快に笑う父の言葉にも一理あるからだ。
と、ここでグレーヴに同意したのが『盟友』であったはずのシグネである。
「あはは、確かにそうかも! さっすがガイダルパパ」
背後から撃たれるような激しい衝撃。
火に油を注ぐが如く、怒りでエレオノーラの美しい眉が吊り上がる。
「ああっ、シグネ! 貴様、裏切ったなぁ!」
だが、シグネは全く動じない。
しれっと言い訳する。
「だってだって、ガイダルパパの深謀遠慮、さすがって思ったんだも~ん!」
ここで、いさかいの張本人? グスタフが深く頭を下げ、
エレオノーラと、シグネを執り成す。
「申しわけありません。おふたりにもご迷惑をおかけしました」
「おお、村長、潔いな」
「あは、自分が悪かったらぁ、ちゃんと謝る事が出来る男子はカッコい~。まあ、ディーノちゃんとガイダルパパには負けるけどぉ!」
「ええ、俺も公爵様やディーノさんを目指して、頑張ります」
機嫌の直ったエレオノーラとシグネを見て、笑顔となったグスタフ。
彼は何かを思いついたらしい。
ポンと手を叩く。
「そうだ! 明日の晩は、村をあげて祝勝の宴を催しましょう! ぜひ主役のあなた方には参加して頂きたいです」
グスタフはグレーヴではなく、エレオノーラとシグネへ告げた。
ここが肝心である。
つまり、女子ふたりに対して、クラン全員参加の可否を求めたのである。
「うむ、私達は参加してやっても良い! 当然、父上もディーノも参加させる!」
「はいはい~、全員参加オッケ~で~す!」
最後に勝利した!!
遂に「仕切る」事が叶い……
女子ふたりは、満足そうに笑顔で頷いたのである。
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