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第221話「導く者」

スクウェア・エニックスの月刊雑誌Gファンタジー10月号が大好評発売中です!

⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎コミカライズ版、最新話が掲載されております。

ぜひ読んでみてください!


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『重版』決定!!

⛤『魔法女子学園の助っ人教師』◎コミカライズ版コミックス第3巻

《スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス》


皆様のご愛読と応援により

『重版』が決定致しました!

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 グレーヴから俺の正体は上級貴族たる「公爵だ」とカミングアウトされ、

 大いに驚愕したグスタフであったが……

 覚悟を決めたのか、身の上を聞いて欲しいと言い、

 ふたりに対し頭を深く下げた。

 

 ディーノが無言で頷いたので、グレーヴは項垂れるグスタフの肩をポンと叩いた。


「おお、良いぞ。話してみろよ」


「あ、ありがとうございます。……俺、ひたすら滅私奉公みたいなオヤジの生き方が嫌で、16歳の時、家出したんですわ」


 グスタフの父デニスは先代村長だった。

 元々、ヴィオラ村の生まれではなく、違う町から来た商人だったという。

 村の為にいろいろ貢献したので、「ぜひ村長になって欲しい」と言われ、

 熟考の末に受け、妻を伴い移り住んだらしい。

 

 デニスの妻……グスタフの母は、彼が幼い頃死に、

 父は幼いグスタフの世話よりも村の為、ひたすら尽くし、働いていた。


 そんな父親に反発し、グスタフは家出したのだ。


「あてもなくロフスキへ行って、何とか仕事を見つけ、新しい生活を始めました。懸命に働いて……何とか慣れた都会暮らしが天国だと思いました。メシは美味いし、可愛い女はいっぱい居るし、あんな田舎の村なんか二度と帰るかと思ったんです。所在だけはオヤジへ報せてましたけど」


 ロフスキに出た若きグスタフは、都会に魅了され、青春を謳歌した。

 結婚する気はなく、ずっと独身だった。

 しかし、いきなり転機が訪れた。


「30になった時、魔法鳩便でオヤジが危篤きとくだって旧知の村民から知らされてびっくりし、さすがに速攻で里帰りしたんです。……だけどオヤジの死に目には会えなかった」


 ひたすら村の為に尽くした父の死。

 そんな父に対する信望は絶大だった。

 息子も同様に村の為に尽くしてくれる『人格者』だと村民達は信じ込んでいた。


「帰ったら、いきなりオヤジの葬式。なり手が居ないから、息子のお前が跡を継げって、わけわからん事をいきなり言われて、村長に祭り上げられ、早や5年……ガキの頃と同じで仕事はきつくて暮らしは貧しいし、雑用はやたら多いし、挙句の果てにおぞましい魔物は出るし……だけど今更、村長やめるわけにもいかんし……」


 「人喰いの魔物――ゴブリンが出て難儀している」と、領主のエーギル・アルヴェーン騎士爵へ陳情した。

 するとエーギルは騎士団を派遣する代わりに、

 「冒険者を雇用し、討伐せよ」と結構な金を送って来たという。


「どうせ、荒くれの冒険者に払う金なんて、本当はいくらか分かりゃしないって、少し、ちょろまかしたんです」


 しかし悪事が露見し、グスタフは、いやいやディーノ達に従った。

 

 ろくに武器を持った事もないグスタフにとって、

 前面に立ち、ゴブリンと戦うなど真っ平ごめん。

 本当に嫌だったらしい。

 「ばっくれて逃げたかった」というのが本音だった。


「でも……ディーノさんの戦いぶりを見て驚きました……単身でゴブリンの大群と戦う姿を目の当たりにして、気持ちが変わって来ました。そして疑問がわきました。どうしてあんな少年が強いのか、だから帰還を待つ間、公爵様から、ディーノさんの生い立ちを聞かせて貰いました」


 ディーノは自分の夢、希望をグレーヴと話した時、ざっくりと生い立ちも話していた。

 

 自分と同様、ディーノも幼い頃に母と死に別れた。

 滅私奉公する父と、ふたりきりで暮らしていた事もほぼ同じである。


 グスタフはディーノの生き方に共感するモノがあったようだ。


「ディーノさんは、俺よりずっと年下だけど、いろいろな経験をして、心と身体を鍛えて来た。自分の人生を投げやりにせず、正面から向き合ってる。身体を張って、命を懸けて戦ってる! それに引き換え、俺は良い年して、何やってんだ! ……そう思いました」


 椅子に座って話していたグスタフはいきなり立ち上がり、深く礼をすると、膝をついた。

 そして、再び土下座をしたのである。


「お、お願いします! 俺にもう一度だけチャンスを! このままじゃ、生まれて来た意味がねぇ! 死んだオヤジの為に、いや! 俺を頼りにしてくれてるヴィオラ村の村民の為に働きたい! 尽くしたいんです! ど、どうか!!」


 床に顔をすりつけ懇願するグスタフ。

 ディーノの心にグスタフの真摯な波動が伝わって来る。


「公爵……村長は……グスタフさんの言ってる事は嘘偽りのない、心からの本音だと思います」


「だな! 俺もそう思う。よいっと!」


 グレーヴはあっさり同意し、土下座するグスタフをたくましい腕で抱え、そっと椅子に座らせてやった。


「よっし! 今回だけは見逃す。グスタフ、お前のマジな覚悟を聞いたからな」


「あ、ありがとうございます!」


 ディーノとグレーヴ。

 ふたりのさりげない気遣いに感極まったのか、グスタフは涙目になっていた。


「うん、エーギルには俺から良く言っとく。ヴィオラ村の村長グスタフ・ビルトは村民の為に気合を入れて頑張ってるから、お前も目をかけてやり、全面協力しろってな」


「ああ、公爵様! ありがとうございます! 俺、頑張ります! 頑張りますからぁ!!」


 ディーノが有する特別なスキル『導き継ぐ者』……

 不可思議な夢の中で最初に邂逅したロランを始め、

 今まで何人もの遺志を受け継いで来た。


 ディーノ自身は全く気付いていないし、意識もしていない。

 だが彼は、受け継ぐだけではなかった。

 既に何人も「導いていた」のだ。


 誰にでも優しく接する。

 何かをして貰ったら「ありがとう」とはっきり告げる。

 他者へ大きな思い遣りと、支えてくれる感謝の気持ちを常に持つ。

 真摯に人生と向き合い、懸命に生きる。

 

 全てをなぞらえる事は難しい。

 だけど……

 出来る事から、ほんの少しずつでも始めてみよう。

 

 ディーノの言動や生きざまに、己を省みる者は多かった。


 そう、ここにもひとり……

 ディーノに「人生を導かれた男」グスタフが新たに誕生したのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。


東導号の各作品を宜しくお願い致します。

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毎週月曜日更新予定です。

お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。


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「幼馴染と永遠に別れた俺は、辺境小国の王子に転生! 戦い、開拓、恋愛、信長スキルで何でもござれ!」

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も宜しくお願い致します。

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