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第217話「ディーノ荒ぶる!」

スクウェア・エニックスの月刊雑誌Gファンタジー10月号が大好評発売中です!

⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎コミカライズ版、最新話が掲載されております。

ぜひ読んでみてください!


⛤特報! 

『重版』決定!!

⛤『魔法女子学園の助っ人教師』◎コミカライズ版コミックス第3巻

《スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス》


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 ディーノは駆ける!

 弾むように大地を駆ける!!


 駆ける速度はぐんぐん増して行く。

 まるで楓村の再現である。


 と、その時。

 ゴブリンどもの咆哮が響き渡った。


 あぎゃあああああああああああ!

 ぎゃひゃああああああああああ!


 戦友達に追われ、

 やや怯えたような咆哮である。


 どうやら……

 戦友達は勢子役を上手くやってくれたようだ。

 

 ディーノが進む先に「わらわらわら」とゴブリンの群れが現れた。

 細かく数えてはいられない。

 だがざっと見て、40、いや50は居るだろう。


 ふっ!

 楽勝!


 軽く息を吐いた、ディーノは剣を抜き放った。

 速射砲の如く風の魔法剣を連射する。


 どしゅ!

 どしゅ!

 どしゅ!

 どしゅ!


 向かって来るゴブリンの群れは、硬い風の塊でバタバタとなぎ倒された。


 更にディーノは駆けながら、風の魔法剣を連射。

 倒れ伏すゴブリンどもの中へ突っ込んだ。


 がああああああああああああああ~~っ!!


 ケルベロス顔負け!

 荒ぶる野獣の如く咆哮したディーノは猛然と剣を振るい、

 ゴブリンどもを殺戮して行く。


 高貴なる地界王の愛娘、精霊ヴィヴィの奥義により、ビルドアップされたディーノの剣。

 地の至宝オリハルコンの剣と融合したその破壊力は凄まじく、

 刀身がほんの少し触れるだけで、柔いゴブリンの身体は単なる肉片と化して行く。


 戦うディーノの速度が更に著しく上がった。

 姿が「ぶれた」ように揺れ、掻き消える。

 ……ようにエレオノーラ達には見えただろう。


 剣だけではない。

 こちらもヴィヴィ直伝!

 魔法剣士たる究極の戦法。

 それもほんの一部。


 ディーノは至近距離で鋭く、拳、蹴りを繰り出し、

 ゴブリンどもの肉体を打ち砕いて行く。

 そして更に、風の魔法剣も至近距離から連発し、

 ゴブリンどもを粉々に破砕した。


 そう!

 ディーノはヴィヴィの教授通り、魔法剣と格闘術を織り交ぜ、

 変幻自在に戦い続ける。


 但し、まだまだ余裕。

 ディーノは切り札を全く使っていなかった。

 ゼロ迫撃どころか、転移魔法、飛翔魔法さえも。

 また体力、魔力とも全く減ってはいない。


 ふと、ディーノが見やれば、ゴブリンの群れは僅か残り数体となっていた。

 多分、次の群れもすぐ来る!

 とりあえず仕上げだ。


 どしゅ!

 どしゅ!

 どしゅ!

 どしゅ!


 最後は再び風の魔法剣連射!

 こうしてゴブリンの群れ第一陣は、殲滅されたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 そんなディーノの戦いぶりを……

 遥か後方で、エレオノーラ達4人は声が出ず、無言となって見つめていた。

 全員驚愕と感嘆、そして畏れの感情が吹き上がっている。


 やがて、何とか声を発したのが、グレーヴである。


「な、な、なんちゅう奴だ!」


「ち、ち、父上!」


「見ろ、エレオノーラ! あの身体能力、剣さばき、魔法、全てが凄すぎる! ウチでやった訓練や模擬試合なんかとは全く違うぜ!」 


「う、うううう……父上」


「おいおい! 勇者なんてもんじゃないぞ、ありゃ怒れる鬼神だ!! それも全然本気出してねぇ!!」


 父の大声を聞き、心身の縛めを解かれたかのように、エレオノーラも絶叫する。


「何だぁ! 何なんだぁ~~!! わ、わ、私との試合などっ! ほ、ほんのお遊び程度だったのかぁ~~!!」


「わぁおっ!! さ、さ、さいっこうぉ~!! やっぱディーノちゃん!! すっご~いいっ!!」


 シグネも興奮で、震えが止まらない。

 拳を握りしめ、目をギラギラさせ、ディーノの戦いぶりを見守っている。


 彼女は今まで、父から散々見合いを強いられ、貴族の俺様男子に幻滅していた。

 しかし普段はひょひょうとして誰にでも優しいのに、

 一転、戦う時は容赦なく肉食獣のように荒ぶる。

 こんなにギャップのある魅力的な男子は見た事がなかったのだ。


「おうわ……おおおおおおお……」


 グスタフなど、感極まってまともな声すら出せない。

 メンバーの盾となり、剣となり……

 たったひとりで戦い続けるディーノを見て、胸がいっぱいになっていた。


 一方、「ぶん!」と剣を振り、刀身に残った血のりを払ったディーノ。

 念話で戦友達へ呼びかける。


 先ほどの荒ぶる咆哮とは全く違う。

 凄まじい戦いの後なのに、声は落着き淡々としている。

 心に秘めた気合だけ高値安定と言って良いかもしれない。


『皆、ノープロブレム! こっちは来た奴全てを片付けた。残りはあとどれくらいだ?』


『おう、あともうちょっとだ。50少しってとこだな』と、ケルベロス。

『こっちも3人で100ばかし片付けた』と、オルトロス。

『ふん! 楓村同様、申告よりも数が多いぜ。巣穴にはまだ300ほど残ってるにゃ!』と、ジャン。


 作戦は今のところ順調。

 けして油断はしないが、さえぎるものはない。


 ディーノは頷くと、てきぱきと指示を出す。


『よし! 状況は把握出来た。俺は一旦後退し、待機組4人と合流。全員でゴブリンと戦う。5分後に、残りのうち、20ほど追い立ててくれ。残りの30は殲滅して構わない。その後はお前達と合流し、ジャンが突き止めた巣穴へゴー、ジエンドだ!』


 対して打てば響けと戦友達も応える。


『了解! 5分経った20追ってやる! さっさと片付けよう!』

『兄貴と猫、3人で各10体ずつ遊んで良いって事だな、ディーノ!』

『お前と同じで、俺様はまだまだ余裕! 今回は巣穴にゴブリンシャーマンは居ない! 裏で糸退く悪魔も居ないにゃ!』


『よっし! 3人とも頼むぞ!』


 ディーノは念話を発したと同時に、飛翔魔法で飛び、後退した。

 

 だが一気に数十m空を飛ぶと、更に驚かれてしまう。

 なので、地面からあまり離れず、小刻みに5mずつ小ジャンプし、

 跳んだように見せて行く。

 

 それでもあっという間にエレオノーラ達の下へ戻る事が出来た。


「お、おい、ディーノ! すげぇぞ、お前!」

「ディーノ!」

「ディーノ!」

「ディーノさん!」


 グレーヴを始めとして、感嘆の声をかけて来る4人。

 対して、手を挙げ制し、ディーノは言う。


「話は後で。奴らの残りはわずかです。戦友が追い立て20来ますから、15は俺が殺ります。5は公爵とエレオノーラに任せます。シグネさんはグスタフさんを守ってください」


「よっしゃ、ディーノ。5と言わず10でも全部でも任せろ! 俺とエレオノーラで、ぶち殺してやる!」


 さすが生粋の武人。

 ずっと驚き、畏怖していたが……

 グレーヴはディーノの凄まじい戦いを見て、己の闘争心に火が点いたらしい。


 エレオノーラもグレーヴの子。

 負けてはいない。


「ディーノ! お前の妻たる私が無様な戦いなど、見せられはしないぞぉ!」


 更にシグネもエレオノーラに続いた。


「私もエレオノーラ様に負けてらんないっ! 治癒回復は任せてディーノちゃん!」


 そしてグスタフまでが、決意を露わにする。


「ディーノさん! 俺だって戦います! 村長として、殺された村民の為、

一太刀たりと浴びせたい!」 


 一方……

 村内からは、果断なく、大きなときの声が聞こえて来る。

 物見やぐらで一部始終を見ていた自警団員数人が、他の村民達へ報せたようだ。


 ゴブリンの大群に、

 蹂躙じゅうりんされっ放しだったヴィオラ村ではあったが……

 

 今こそ!

 迫り来る敵を打ち倒し、全員で生き抜く。


 これまで怯え、無抵抗だった村民は……

 はっきりと気持ちをひとつにしていたのである。

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