第183話「燃えろ!!」
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オークジェネラルとオークの群れを殲滅したディーノは、
呼び戻したオルトロスとともにポミエ村の門前に立っていた。
当然、巣穴のあった森から、転移魔法で跳んだのである。
地界王の愛娘ヴィヴィは「忙しい」と言い残し、既に異界へ還っていた。
大きく息を吸ったディーノは、声を張り上げる。
「ただいま、戻りましたぁ!!」
「あ、ディーノさん! お帰りなさいっす!」
応える門番の少年ダヴィドは、定位置の見張り櫓から飛び降り、笑顔で門を開けてくれた。
ディーノは手を振り、礼を告げる。
「ありがとう!」
「お安い御用っす!!」
ダヴィドも笑顔で応えたが……
自分へ向かって歩いて来たディーノが提げた抜き身の剣……
その先っぽに、異様な物体――『生首』が突き刺さっているのを見て、
息を呑んだ。
「う、うぉ! な、なんすか? それぇ!?」
驚愕するダヴィドの問いかけに対し、ディーノは淡々と答える。
「ノエルさん達を襲ったオークどものボス、変異種オークジェネラルの首さ。討伐の証として、剣に突き刺し、持ち帰って来たんだ」
「気持ちわる!」
「あはは、だな……お前の言う通り醜悪な面構えだ」
ディーノは肯定すると、村の中央広場へ向かい、再び歩き始める。
取り残されたダヴィドは、元取り巻きの少年へ、門番を交代するように告げ、
ディーノの後を追った。
だが、ディーノは歩みを止めず歩き続けた。
走り寄ったダヴィドは、歩くディーノの真横に並び、大声で話しかけて来る。
「そ、そ、それにっ! ふ、ふ、普通のオークより! ぜ、全然デカくないっすかぁ!?」
「ああ、確かにでかいな、タッパも3m近かった」
「さ、3m!? でっけ!」
「ああ、こいつと群れは全て片付けた。戦友と一緒にな」
「む、群れ?」
「うん、少し離れた森の奥に洞窟があって、そこに巣食っていた。数百は居たけど、全滅させた」
「数百を全滅!? この黒い犬と? す、すげぇ! やっぱ、ディーノさんはすげぇ!!」
「ただ……また湧き出るやもしれんから注意する事だ」
「わ、湧き出る?」
「ああ、俺の父親が言っていた」
「ディーノさんのお父さんが言っていた? どういう事っすか?」
「ああ、俺の父親は冒険者だった。依頼を終えた後、良く言っていたものさ。魔物は……奴らは次元の狭間から湧いて来るとね」
「次元の狭間から湧いて来る? お、怖ろしいっすね……きりがないじゃないでっすか」
「ああ、きりがない。だけど奴らは捕食者……襲って来たら戦わないと、喰われるだけだ」
「捕食者か……ディーノさんが言ってた言葉が身にしみまっす。守るべき大事な人が……魔物に喰い殺される事を思い浮かべてみろって!」
「ああ、俺も魔物と正対し、怖くて足がすくむ時はそうしてる」
ディーノが本音を言うと、ダヴィドは同意とばかりに、
直立不動で敬礼する。
「うっす!」
ポミエ村は小さい村だ。
ふたりはもう中央広場に到着していた。
「ダヴィド……」
「はいっす!」
「使い立てして悪いが……村長さんを、マチューさんを呼んで来て貰えるか?」
「了解っす!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
村の中央広場は村民達であふれていた。
誰もがディーノが持ち返った生首を見て、驚き眉をひそめていた。
そんな中、村長のマチューは晴れやかな笑顔。
機嫌はとても良い。
「おおお! ディーノ君! 村の期待に応え、良くぞ、奴らを倒してくれた! これは約束通り礼金の金貨20枚だ」
「はい、ありがとうございます。遠慮なく頂戴します。ですが、村長。油断はけしてしない方が良いのかと」
「何? どういう意味だ?」
ディーノは、ダヴィドへ話した事を繰り返した。
父親からの受け売りだと、断りながら……
「成る程……それは難儀だな」
「はい、どこかに次元の裂け目があるかもしれません。普段から気を付けるのは勿論、領主さんと良く相談して、パトロールを頻繁にした方が良いと思います」
「うむ……分かった」
「あとは不死化には充分気を付けてください」
「え? 不死化?」
「はい、倒したら死体処理をきちんとしてください。不十分だと死霊と化します。こいつは頭だけなんで多分、不死化はしませんが」
「ふむふむ」
「じゃあ、村民の方々が充分に見たら、こいつ燃やしちゃいますね」
「燃やす?」
「はい、、魔法で……燃やして塵にすれば、もう二度と不死化しません」
「そうか……いわゆるとどめを刺すって事だな」
「はい、そう受け取って貰って結構です」
「うむ!」
マチューは大きく頷くと、声を張り上げる。
「皆の衆! ディーノさんがノエル達を襲ったオークどもを全滅させたぞ!」
「「「「おおおおおおおおおおっ!!!」」」」
「見よ! ディーノさんが剣に突き刺しているのが、オークの親玉だ!!」
「「「「おおおおおおおおおおっ!!!」」」」
「今からディーノさんがオークの頭を燃やす! 不死化しない為、とどめを刺す為だ!!」
「「「「おおおおおおおおおおっ!!!」」」」
「で、では……ディーノさん、お願いします」
「……分かりました。皆さんに少しだけ下がるように指示して貰えますか? マチューさんも下がってください。ダヴィドも下がってくれ」
「分かった!」
「了解っす!」
ディーノは剣を持ち直し、オークの首を刺したまま、地面に突き立てた。
ヴィヴィの禁呪ともいえる魔法で超強化された剣は歯こぼれひとつしていなかった。
燃えろ!!!
ディーノが強く念じると、剣から凄まじい炎が噴き出し、
猛炎はあっという間に、オークジェネラルの首を塵にしていたのだった。
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