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第180話「優しき精霊」

⛤特報! 『重版』決定!!


『魔法女子学園の助っ人教師』

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 ここはポミエ村から少し離れた森の中……

 オークの巣であった《過去形》洞窟前……


 転移魔法を発動。

 一瞬で姿を消したディーノは、10分ほど経ってから戻って来た。

  

『お待たせしました、ヴィヴィ様。ステファニー様をヴァレンタイン王国の王都セントヘレナへ送って来ました』


『お疲れぃ!』


 とヴィヴィはディーノを労わるが……

 何故か、ディーノの表情はさえない。


『はあ……でも』


『でもって、どうしたの?』


 気になったヴィヴィが尋ねれば……

 ディーノは「失敗した!」というように頭を掻いた。


『いやあ、参りました。飛翔魔法の着地同様、転移魔法の制御コントロールが今いちで……』


『へぇ、《今いち》だったんだ? だったら、もっともっと練習しなくちゃね!』


 ディーノが再びやらかしても……

 ヴィヴィは怒らなかった。

 否、怒るどころか、優しく労わってくれた。

 

 だが優しくされ、逆にディーノは闘志が湧いて来る。

 拳をぎゅっと握りしめる。


『はい! 俺ホントに不器用ですから、死ぬ気で頑張らないとヴィヴィ様に申しわけない。恥ずかしくて地の使徒を名乗れません』


『うふふ、貴方は相変わらず謙虚、そして諦めず挫けずの努力家ね。ありがとう、ダーリン』


 恥ずかしくて、地の使徒を名乗れません……

 

 ヴィヴィは……

 ディーノの言葉がとても嬉しかったようだ。


 更に、ディーノの話は続いている。


『ありがとうなんて、そんな! 全然ダメダメでした。……転移先予定は、目立たない庭のすみっこのはずなのが、何とステファニー様の部下カルメンの、部屋の中でしたから』


 ディーノは先日同様、ステファニーの屋敷の庭の端っこをイメージし、

 転移魔法を発動した。

 だが、上手く行かなかったようなのだ。


 先日の記憶が甦ったのか、ヴィヴィがいかにも面白そうに笑う。


『あははははっ、最高、それ! カルメンって、あの時の悪鬼のもうひとりね。ガタイのでっかい、たくましい子よね?』


『はあ、そうです』


『うふふ、今度は、てめぇが主君を拉致したのか~!! って殺されなかった?』


『はあ……お察しの通りっす。やっぱステファニー様が行方不明だと、大騒ぎになってまして、カルメンの奴、この前以上に悪鬼の形相で大剣抜いて襲いかかって来ました! ぶっ殺すぞ~って』


『それでそれで! それからどうしたの?』


『はあ……さすがに、ステファニー様が間に入って止めました』


 その時のシーンを思い出したのか、ディーノは大きく息を吐いた。


 対して、ヴィヴィは満足そうに頷いている。


『お~、良かったね~。やっぱ、あの子、愛の目覚めは本当だったんだ』


『ステファニー様が? 愛の目覚めですか?』


『うふふ、そうよ! わがままなお子ちゃまから、大人の女への第一歩って感じかしら。で、その先はどうなったの?』


『ステファニー様は大丈夫、大丈夫って、俺に向かって大声で叫びながら、グーパンでカルメンをぶっ飛ばしてました』


『あは! カルメンちゃんをぶっ飛ばしたの?』


『ええ、一応手加減はしてました。カルメンは一発で気絶してましたけど……』


『あは、さっすが、凶暴なメスライオン! でもでも! 本当に良かったじゃん! あの子、ダーリンをかばってくれたんだよ!』


『はい、少し嬉しかったです』


『うふふ、だけどぉ、転移魔法の事はさ、そのカルメンちゃんにもバレちゃったわね?』


『ええ、見事にバレました。しかし、ステファニー様が口止めしとくわ~って、叫んでたんで……多分、大丈夫、秘密は守られると思います』


『よっし! OK!』


 とヴィヴィが叫んだ瞬間。


 ごあああああああああああっ!

 がおおおおおおおおおおおっ!

 ぐあああああああああああっ!


 凄まじい咆哮が、ふたりを包んだ。

 だがふたりは、ちらっと見ただけで、動じたところが全く無い。

 倒したはずのオークが100頭を超える大群で取り囲んでいる。


 しかし、ヴィヴィは勿論、ディーノも臆さない。

 「ふう」と息を吐き、ぽつりと、


『ところで、ヴィヴィ様は何故、この岩の上にいらっしゃるのですかね?』


 そう……

 ディーノとヴィヴィは巨大な岩の上に居た。

 

 ヴィヴィが、地の魔法で異界から呼び出し、オークどもを押しつぶした、

 高さが10mもあろう大岩の上である。


『うん! ここでダーリンを待ってたのよ~ん』


『え? 俺を待ってたんですか? こっちに着いたら、ヴィヴィ様が岩の上に居たんで飛んで来たのですが』


 そう、ディーノが転移魔法で戻った時、別部隊らしき、

 このオークどもは居なかった。

 

 少し離れた場所に居て、オークどもの気配はつかんではいたが……

 ヴィヴィも同様だったらしい。


『うん! 巣に戻るこいつらが近寄って来るのが分かったから、この岩の上で、ダーリンを待ってたのよ~ん』


『成る程……じゃあオルトロスを残しておけば良かったですね』


 ディーノはさりげなくオルトロスの件を聞いてみた。

 どうして異界へ帰還させたのか?

 味方は多い方が、絶対有利なのにと不思議に思っていたからだ。


 しかし、ヴィヴィはしっかり計算をしていた。

 彼女の『深謀遠慮』と言い換えても良かったのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

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