第176話「ステファニーの追憶」
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「はっ!」
ステファニーは目が覚めた。
気が付くと……
野外で寝かされていた。
草の香りが微かにしている。
見上げると……
雲ひとつない、青い空が広がっていた。
今は……朝らしい。
いつの間にか、眠ってしまったようだ……
何やら、夢を見ていた気がする……
ぼんやりとする中、記憶を手繰った……
確か、夢の中の風景は4年前の王都だった……
まだステファニーも12歳の少女である。
傍らには……
従者として付けられたばかり、11歳の子供子供しているディーノが居た。
幼い頃から……
ステファニーは男子が苦手だった。
というか男が大嫌いだった。
父クロード以外の男性では、話せるのはたったひとり。
王都に居る頃……
しょっちゅう遊びに来ていた、父の親しい友、キャルヴィン・ライアン伯爵のみ。
このふたり以外は、顔を突き合わせる事さえ苦痛だった。
そんなステファニーに、侍女以外、初めてつけられた男子の従者が、
平民の子ディーノ・ジェラルディだった。
最初は凄く嫌だった。
平民など卑しいし、男などもっての外。
すぐクビにしようと思っていた。
だけど……
不思議だった。
何故なのか、理由は良く分からない。
ディーノとは最初から全然普通に話せたのだ。
というか、エモシオンへ移ってからは、彼が特になくてはならない存在となった。
一緒に居ると、気持ちが落ち着く。
のびのびと振る舞える。
その気持ちが実は恋心とは……
少し前まで気付かなかった。
ステファニーは自覚した。
初恋の相手は……ディーノだったのだと。
誰にも言えない。
だが……正直、ディーノが愛しい。
少しでも離れるのが辛いのだ。
でも素直になれない。
大事な『想い人』というより、つい傍若無人な『暴君』のように振る舞ってしまう。
そんな己の言動を後悔して、後悔して、後悔して……反省する毎日……
勇気を奮い、思いきって告白した事もある。
だがディーノには……告白と受け取って貰えなかった。
そうこうしていうるち……ディーノは遂にエモシオンを旅立ってしまった……
ディーノを追い出した父と、ステファニーは激論を交わした、
そして強引に説得した。
この家を継ぐ。
オベール辺境伯家の女性当主となり、ディーノとは絶対に結婚すると。
そう!!
ディーノと結婚したい……
絶対に結婚したい!
その為には何だってする!
ステファニーは王都に戻ったディーノを追い、王都まで来た。
ディーノに再会し、いろいろやりとりし、
心の距離は縮まったように思う。
楓村では、極限状態で共に戦った。
迫り来る死を一緒に潜り抜け、共に生き延びた。
もう一心同体ともいえる仲なのに……
でも結ばれる事が叶わない……
とても悲しくて涙が出て来た……
あれ?
でもさっきまで自分は……
とてもイライラして、とても怒っていた……気がする……
何故?
こんなに心が平穏なの?
ステファニーが、ぼ~っとして、考えていたら……
懐かしい声が降って来る。
「落ち着きましたか?」
あ?
優しく微笑むディーノが……
大好きなディーノが、覗き込んでいる。
ええっと……
王都の屋敷で、トイレに行こうと起きて……
気が付いたら、目の前にオークの大群が居て、
ディーノが王子様のように助けてくれて……
誰か知らない女と言い合いをして、カ~っとなって暴れて……
その後の記憶がない。
そもそもここはどこ?
絶対に王都じゃない。
どこかの森?
どうして、ここに居るのだろう?
「ええ、ディーノ……もう落ち着いたわ。……あれ? オークは?」
「俺とヴィヴィ様、戦友の3人で、完全に片づけました」
「そう……3人で」
ディーノはあっさり言う……
確か、オークは凄い大群だった気がする。
本当だったら、ここは驚くところ。
でも覚醒した今のディーノならばと納得する。
改めて感じるし、思う。
ディーノは凄く変わった。
もう昔のディーノではない。
遥かに「大きくなった」気がする……
変わらないのは……
ディーノは、いつでも私に優しい事。
何を言っても、笑顔で応えてくれる。
受け止めてくれる。
だから……大好き。
今だって大事にしてくれている。
……労わってくれている。
「良かった。ヴィヴィ様の魔法、鎮静が効いたみたいですね」
え?
ヴィヴィ?
それは誰?
先ほどはつい聞き流してしまったが、聞いた事のない名だ。
「ディーノ……ヴィヴィ様って誰? 楓村の時にも居た、あの犬は違うわよね?」
「はい、違います。犬は……戦友オルは先に帰しました」
そう……ヴィヴィの命令で、オルトロスは異界へ帰還させた。
何か、理由がありそうだったので、ディーノは素直に応じたのである。
「え? じゃあ、そのヴィヴィって誰なの?」
ステファニーが改めて聞いた。
すると!
「わったしで~す」
ひょこっと、ステファニーの知らない女子が顔を出した。
何故か、ディーノに馴れ馴れしくくっついてる!
何よ、それ?
気になったステファニーは、がばっと起き上がり、女子を見た。
小柄な子だ。
身長は130㎝前半といったところだろうか。
年齢は12,3歳?
褐色の肌をしたブラウン髪のショートカット。
複雑な刺繍ししゅうが施された、茶色の革鎧をまとう、愛くるしい顔立ちの子。
この子。本当に……誰だろう?
何だか、人間離れしていて、不思議な雰囲気を持った子だ……
「誰よ、あんた?」
と聞けば、
「私はヴィヴィ。ダーリンの本当の婚約者で~すっ!」
ふ~ん、元気だけは良いけど……
ディーノをダーリンって呼ぶとか、本当の婚約者って何なのそれ!
聞き捨てならない!
許せない!!
ステファニーが憤ると、ディーノがストップをかける。
「いえいえ、婚約者、違いますって! それにもう挑発しないで、普通に話すって、約束したじゃないですか」
「あははっ、そうだったわね、メンゴ~」
ここで、ディーノが再び、ステファニーへ呼びかける。
「……あの、ステファニー様」
「何?」
「簡単に紹介しますと、こちらはヴィヴィ様。上級精霊です」
「えええええっ!? せ、精霊!!」
さすがのステファニーも驚いた。
せ、精霊って!?
すぐには信じられない!!
と、今度はヴィヴィがストップをかける。
「ちょっと待って! ダーリン、違うわ! 最上級よ!」
「はあ、じゃあ訂正します。最上級たる地の精霊、ヴィヴィ様です」
「宜しい!」
えっへん!
と、大きく頷くヴィヴィ。
「……そ、その! 最上級精霊が何よ?」
ステファニーが尋ねると、ざっくりとディーノが起こった出来事を説明する。
「はい……実はここ、王都から少し離れた場所でして、ステファニー様はヴィヴィ様の転移魔法で運ばれて来ました」
「て、て、転移魔法!? な、な、何それぇ?」
と首を傾げたステファニーだったが……
ハタと手を叩く。
先日の記憶が甦ったのである。
「あ~! ディーノ、あんたこの前、私の屋敷に不法侵入した挙句、いきなり消えたでしょ?」
「まあ……そうですね。驚かせてばかりですみません」
否定せず、あっさり肯定し、謝罪するディーノ。
そしてヴィヴィが、にっこりVサイン。
「あはは、ステファニーちゃん! あれも私のしわざ~、最高にうけたでしょ?」
「な、何ですって!」
「もう、ダメですよ、また挑発して興奮させちゃ、……ヴィヴィ様。冷静に話すんでしょ?」
ディーノにたしなめられ、ヴィヴィはガラリと表情を変えた。
ひどく真剣となっており、いきなり直球を投げ込んで来た。
「うん、分かった。冷静に話すよ……というわけで、ステファニーちゃん、いいかげん素直になってくれる。そしてダーリンを! いえ、ディーノを、同じ人間として尊重するって約束して」
「な!? す、素直に?」
「そうよ! 好きなら態度を明確に! はっきり意思表示して! そしてディーノを大事にするって誓ったら、あんたをライバルとして認めてあげてもいいわっ!」
「ラ、ライバルって……」
「ステファニーちゃん! あんたは以前言ったわね。ほのかな想いとか、曖昧なのが大嫌いなんでしょ? じゃあ、はっきりして!」
「う、うう……」
まるで、心を読むかのように切り込むヴィヴィに、
ステファニーは気圧されたようになったのである。
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最後に、連載中である
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「幼馴染と永遠に別れた俺は、辺境小国の王子に転生! 戦い、開拓、恋愛、信長スキルで何でもござれ!」
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